楽天と釜石市、スマホ決済「楽天ペイ」導入で店舗やタクシーのキャッシュレス化を促進へ

2018年4月5日9:15

楽天は、2018年4月4日、岩手県釜石市と地域活性化と住民サービス向上を目的に、楽天グループのサービスを活用した包括連携協定を締結した。同日には記者会見が行われたが、釜石市の事業者にクレジットカードやスマートフォンでの決済ができる楽天グループの決済サービス「楽天ペイ」を導入し、地域のキャッシュレス化を進めていくそうだ。

左からVoyagin 代表取締役 高橋 理志氏、岩手県釜石市 市長 野田 武則氏、楽天株式会社 上級執行役員 カード&ペイメントカンパニー シニアヴァイスプレジデント 中村 晃一氏、楽天LIFULL STAY 代表取締役 太田 宗克氏

釜石市に決済およびインバウンドソリューションを包括的に提供

楽天、釜石市、LIFULL、LIFULL STAYが参加した記者説明会では、楽天グループのさまざまなサービスを活用することで、同市におけるさらなる地域経済の活性化に寄与することを目指すことが紹介された。包括連携協定の主な内容は、①市内事業者のキャッシュレス決済の利活用促進に関する事項、②外国人観光客への体験型アクティビティに関する事項、③ふるさと納税の推進に関する事項、④市内事業者のIT利活用促進に関する事項、⑤国内外に向けた市内特産品の販路拡大に関する事項、⑥その他、市内の経済活性化および、住民の利便性向上に関する事項――となる。

東日本大震災から7年が経過したが、釜石市での住まいの再建は2018年にほぼ完了するという。今後は、“オープンシティ釜石”を掲げ、地域活性化など、「余り手がけてこなかったところに力点を置いていきたい」と、岩手県釜石市 市長 野田武則氏は話す。

2019年には、釜石市内のスタジアムでラグビー・ワールドカップの試合が開催される予定だ。また、橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界遺産に登録されている。

一方、楽天は現在、70以上のサービスと9,500万の会員基盤を有する楽天経済圏を形成しており、全国の28の自治体と包括連携協定を締結している。今回の釜石市との取り組みでは、決済およびインバウンドソリューションを包括的に提供する初のケースとなった。また、決済にかかわる包括提携として、岐阜県飛騨市に次ぎ、2例目となる。

楽天ペイで地域に根差した決済インフラを整備

楽天では釜石市と協力し、楽天グループの決済サービス「楽天ペイ」の導入を促す。釜石市では、クレジットカード決済を提供していない事業者が多い。そのため、日本の観光客に加え、急増するインバウンド旅行者が決済する機会を逃し、地域にお金が落ちにくい状況となっている。楽天ペイの導入により、インバウンド需要の取り込むとともに、地域に根差した決済インフラを整備し、釜石市の人々に最先端の決済サービスを利用してもらう方針だ。

楽天ペイは、「簡単に、より便利に、よりお得にご利用いただける」点が特徴であると、楽天上級執行役員 カード&ペイメントカンパニーシニアヴァイスプレジデント 中村晃一氏は説明する。楽天ペイは、店舗が保有するスマートフォンと専用のカードリーダとの接続でクレジットカードの利用が可能だ。カード業界のスマートフォン決済のカードリーダとしていち早くEMV ICカード対応を行った。また、楽天Edyなどの電子マネーにも対応。利用者は、クレジットカードや電子マネーでの支払いに加え、スマートフォンアプリを利用した「楽天ペイ(アプリ決済)」も可能だ。

まずはタクシー約60台などで導入へ、利活用に向けたサポートも

楽天では、釜石市でキャッシュレス環境のセミナーを開催して、楽天ペイの導入を促すとともに、導入支援や利活用の促進などのサポートを行う。具体的な導入としては、釜石市の商工会に加入しているタクシー約60台、および市内の200事業者が予定されている。

また、釜石市では、訪日外国人向けに体験型の旅行ツアー、チケット、レストランを提供する「Voyagin」とも連携。外国人目線で釜石市の魅力を再定義し、欧州、米国、オーストラリアの個人観光客に対し、体験を切り口に魅力をPRしていく予定だ。これにより、釜石市への訪問意欲を促進させ、滞在時間をアップさせていきたいとしている。

さらに、楽天LIFULL STAYでは、空き家を活用した民泊施設、モデルケースを開発していく方針だ。そのほか、ふるさと納税を通して、市内の名産品をアピールしていく。

楽天ペイの実店舗決済、アプリ決済の状況は?

現状、楽天ペイの実店舗決済、およびアプリ決済のシェアや取扱額は非公表だが、「ものすごい勢いで本当に伸びています」と中村氏は成果を口にする。実店舗決済のmPOSは、国内で圧倒的なシェアを占めていると言われており、また、アプリ決済はQRコード決済(コード決済)のインターネット調査において、「利用者数」「総合満足度」「ポイントが使いやすく貯まりやすい決済アプリ」でNo1になったとした(インテージ調査)。

アプリ決済は、ローソンを始め、大型加盟店での導入も進んでおり、チキンをプレゼントするキャンペーンを実施したところ、一気に利用者が増えたという。また、3月1日~5月31日まで、ローソンで楽天カード、楽天Edy、楽天ペイで決済すると楽天スーパーポイントが最大2.5倍になるキャンペーンを展開。世の中でモバイルバーコード支払いが広がる流れがある中、楽天ならではの強みとして、楽天スーパーポイントをフックに利用を後押しできる点があるとした。

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