2018年5月29日8:00
Visa(ビザ)では、不正使用抑止に向けて、数多くの対策を行っています。今回は、カードの対面取引ならびに非対面取引における不正動向に対する国際的な取り組みと今後の方向性について紹介します。
ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社 チーフ・リスク・オフィサージョン・クロスリー氏
全世界の不正被害は右肩上がり
日本の不正は増加傾向に
まず、全世界の不正の統計データとして、過去3年の四半期ごとの数字を示していますが、全体的な傾向として、被害総額はゆっくりと右肩上がりとなっています。キャッシングを除く利用額に対しての不正比率をみると、2017年の第三四半期で10.2ベーシスポイントとなり、例えば1万円の取引で約10円の不正があります。偽造の不正は、2015年10、11、12月と徐々に少なくなっています。理由として、米国のEMV化・ライアビリティシフトがはじまったことが挙げられます。
その一方で、日本のイシュア(カード発行会社)で発生している不正比率をみると、グローバルレベルの10.2ベーシスポイントに対して、5.0ベーシスポイントと少ないです。ただ、2016年から2017年は急激な増加傾向となっています。2017年第3四半期は5.0ベーシスポイントでしたが、第4四半期はそれを超える数字になります。
世界の偽造被害については、2015年にフェードアウトしていますが、その後は時期によって増減があり、日本のイシュアでは減っていません。盗難紛失の比率は非常に多いですが、そのほとんどはなりすましです。また、非対面の不正は急激な増加傾向にあり、重要な課題となっています。
偽造被害は海外の不正が日本に移る
日本発行カードで不正が増加
同じように日本の加盟店での不正の傾向として、日本の発行と海外発行カードの不正を比較しています。日本のアクワイアラ(加盟店管理会社)の2017年第3四半期の不正比率は、海外の10.2ベーシスポイント、日本のイシュアの5.0ベーシスポイントと比較すると、2.8ベーシスポイントと少ないです。とはいえ、2015年から2016年、2017年に向かって増加傾向です。特に非対面のなりすましでは増えています。
日本において重要な部分は、偽造被害が2015年以降、グローバルで減りましたが、日本は増えています。つまり、海外の不正が日本に移っています。
2017 年の日本では、不正が非常に集中しています。2016年の7月~9月、2017年7月~9月の比較として、日本の加盟店で発生している不正のうち、国内発行カード、海外発行カードを比べていますが、2016年は海外発行カードが32%だったのが、去年の同時期で18%になりました。これはいろいろな要因がありますが、最終的に日本の発行カードで不正が行われています。これまでは非対面加盟店で不正が発生すると、対策を講じて違う国に不正が移りましたが、2017年の傾向として、不正犯はあきらめずに日本のカードで不正を行っています。日本の加盟店不正では、海外発行カードで不正が多いとより厳しいルールを設定しますが、正規利用か、不正利用かの識別が難しくなっています。
※本記事は2018年3月2日に開催された「ペイメントカード・セキュリティフォーラム2018」のビザ・ワールドワイド・ジャパンの講演をベースに加筆を加え、紹介しています。