2018年6月11日8:10
「I LOVE 下北沢アプリ」との連携で、コインをイベントなどでも活用へ
パイプドHDの子会社であるエルコインは、下北沢で地域通貨事業を行うシモキタコインを設立し、2018年6月下旬から独自地域通貨「シモキタコイン」の発行を開始する。シモキタコインでは、「I LOVE 下北沢アプリ」などとの連携により、下北沢を盛り上げ、より魅力溢れる楽しい街にしていく方針だ。
※シモキタコインでは、「シモキタコイン」のリリース時期が2018年内をめどに変更したと発表(6月18日リリース)
ブロックチェーン技術を活用して、地域通貨を発行
チャージと店舗での決済でそれぞれポイントを付与
エルコインは、2017年12月より電子地域通貨プラットフォーム事業を開始。2018年3月26日には、シモキタコインを設立し、下北沢エリアでの電子地域通貨発行に向け準備してきた。エルコインおよびシモキタコインが発行する電子地域通貨は、クレジットカードや非接触電子マネーなど、他の電子決済に比べて導入に必要な初期費用や決済手数料を抑えられることを目指している。
「現在、下北沢エリアでの年間販売額は637億円と言われており、クレジットカードによる年間販売額は23.8億円ですが、店舗が負担しているクレジットカードの決済手数料は年間1億円という推計もあるため、それを抑え、下北沢の中でお金が循環させることで、地域経済が活性化していくと考えています」(シモキタコイン 代表取締役社長 鎌形渉氏〈エルコイン 代表取締役社長〉)
シモキタコインは、消費者がスマホアプリに金額を入金(チャージ)して利用する。前払式の支払い手段(プリペイド方式)となる。現在、関東財務局に第三者型前払式支払手段発行者の登録申請中だ。また、エルコインでは、ブロックチェーン技術を活用して、地域通貨を発行するという。
加盟店では、消費者の「I LOVE 下北沢アプリ」からシモキタコインを選択し、店舗にあるQRコードを読み取って支払う流れとなる。店舗にとっては、POPまたはステッカーでQRコードを掲示するだけで済むため、決済端末やタブレットといった設備投資は不要だ。また、店舗での売上金は、1万コイン以上の場合に1週間に1回振込申請が可能で、3営業日以内に加盟店指定の金融機関口座に振り込まれる。
利用者のスマホアプリへの入金については、下北沢にあるチャージスポット、クレジットカードからチャージする方法を用意する。アプリへのコインの入金は1,000コインから可能で、有効期限は、サービス提供開始時点では発行から6カ月間であり、今後有効期限を延ばす計画である。
加盟店では、飲食や買い物での決済をスムーズにすることはもちろん、ポイントシステムの利用による再来店の促進が期待できる。利用者は、スマホアプリへの入金時に、入金額の1%のポイントが付与される。これに加え、店舗で支払った金額の1%のポイントが貯まるそうだ。なお、店舗で貯まったポイントについては3カ月と有効期間を短くすることで、再来店を促していきたいとした。決済手数料は3.5%となり、2%を利用者に還元する仕組みだ。さらに、加盟店が原資を出すことで、キャンペーンなどを行うことも可能なポイント機能も開発予定だ。
「下北沢カレーフェスティバル®」等のイベントでシモキタコインを訴求
路上ライブでの投げ銭などへの展開を視野に
具体的な消費者への告知については、パイプドHDの子会社であるアイラブが運営するWebサイト・アプリ「I LOVE 下北沢」を活用する。アイラブでは、カレー店が集う「下北沢カレーフェスティバル」、はしご酒イベント「ばるばる下北沢」をはじめ、下北沢でのイベントを年に数回開催している。例えば、2017年の「下北沢カレーフェスティバル」では、過去最多の149店舗が参加し、10日間で約12万人を動員した。イベントでは「I LOVE 下北沢アプリ」でスタンプラリーを行うなど、下北沢に訪れる人のアプリ利用も高まっている。
現在、下北沢エリアには約1,100店舗があるが、「I LOVE 下北沢アプリ」では約6割の店舗と関わりがあるように、同エリア屈指の地域情報アプリとなるため、シモキタコインの加盟店開拓にも活用可能だ。今後は、各イベントでシモキタコインによる決済の場を提供することで、消費者へのサービスの魅力を訴求する方針だ。
鎌形氏は、「加盟店となる対象は、お店を構えている人だけではなく、いろいろな人が下北沢で経済活動をして、対価としてコインが使われるようになれば、プラスアルファで経済が動きます。店舗での決済に加え、路上ライブでの投げ銭、オンラインでの決済も検討していきたいです。また、今後の企画次第となりますが、コインだけでしか買えないグッズ等も提供することで、下北沢が好きな方にどんどん使っていただきたいです」と構想を口にする。
さらに、スマホアプリから料理の注文や決済をして、店舗で商品を受け取ったり、配達してもらう仕組みも提供できればと考えているそうだ。「I LOVE 下北沢アプリ」の機能を拡張することで、隙間時間を利用して下北沢でのアルバイトなどの情報を提供することも視野に入れる。
年内に数千人の利用者、150加盟店が当面の目標
エルコインは3年以内に4地域での電子地域通貨事業の開始を目指す
シモキタコインでは、年内に数千人の利用者、150店舗の加盟を目標にしている。数年後には万単位の利用者に広げることで、コインによる決済額を高めていきたいとしている。前述のように、下北沢の年間販売額は637億円だが、そのうちの5%がシモキタコインで決済されるようになれば、手数料を抑えることが可能となり、地域経済をより活性化できるとした。
また、エルコインでは、下北沢を皮切りに、各地域の事業者と連携して電子地域通貨を普及させていく。3年以内に4地域での電子地域通貨事業の開始を目指す。