2018年6月28日8:00
資金を地域で循環させ、ボランティア活動などでポイントも付与
木更津市と、君津信用組合、木更津商工会議所は、電子地域通貨「アクアコイン」の実証実験を2018年3月28日から6月24日までの3カ月間にわたり実施した。3者では、同実験の成果を踏まえ、秋からの本格展開を予定している。
木更津市、君津信用組合、木更津商工会議所がタッグ
地域の人々の利用、域外からの消費を呼び込む効果も期待
電子地域通貨「アクアコイン」の実証実験では、君津信用組合の役職員、木更津商工会議所職員、木更津市職員など約1,200名が、市内の加盟店で決済システムの稼動状況、操作性、利便性など、運用上の課題について検証している。
木更津市では、2017年10月に電子地域通貨のプロジェクトチームを設置。飛騨信用組合(岐阜県高山市)の「さるぼぼコイン」など、他の地域の事例も踏まえながら、木更津市内の中小規模店舗を中心に、地域でお金が循環できないかと考えたのがきっかけだった。
木更津市 経済部産業振興課 主幹 鈴木昭宣氏は、「木更津にお越しになられる方は、アウトレットを含めて増えていますが、電子地域通貨を活用して、商店街など、地域店舗における循環をより促進させていきたいです。また、観光客など、域外からの消費を呼び込む効果もあります」と説明する。
木更津市では、君津信用組合、木更津商工会議所の賛同を得て、連携して事業を行っている。各者の役割として、木更津市は市民に対する情報発信、行政ポイントの付与、行政分野での利用拡大など、市域の発展を目指す。君津信用組合は、コインの発行や送金、換金といった電子地域通貨のシステム整備などを実施する。君津信用組合 総合企画部 地域通貨課 課長 守政広氏は、「新たなビジネスモデルとして、これまで取引のない先がアクアコインを通じて手前どもとの取引関係がつながっていくと期待しています」と話す。木更津商工会議所は、会員に対しての加盟の呼びかけ、事業者間取引の普及などを行う。
店舗の設備投資は不要で、投資コストを削減
手数料は商工会会員等が1.5%、それ以外は1.8%に設定
アクアコインは、木更津市内の店舗で1コイン=1円として利用することが可能だ。利用者は、スマートフォンの専用アプリを立ち上げ、加盟店に設置してある二次元コードを読み取り、利用代金を入力して店員に確認してもらい、決済が完了する。
決済フローは、さるぼぼコインで採用されたアイリッジの仕組みを参考にした。その理由として、店頭に二次元コードを印刷したプレートを設置するだけで済むため、決済端末などの設置など、店舗の投資コストを削減できることが大きい。また、現金授受やお釣りの受け渡しがないため、店員のレジ負担が軽減される。
加盟店が支払う決済手数料は、木更津商工会議所、木更津市富来田商工会、市内の商店会の会員および君津信用組合組合員については1.5%、それ以外の店舗は1.8%となっており、手数料の負担がそれほど大きくない利点もある。
アクアコインへのチャージは、1,000円単位、10万円以内で可能だ。実証実験では、タブレット端末を君津信用組合職員が木更津市役所、商工会議所等に持参するか、君津信用組合の本支店の窓口で対応していたが、本格展開に向けての検討課題となっている。君津信用組合プロジェクトチームの笈川雄一氏は、「週1回程度、各所に伺ってチャージを行っています。口座振替チャージやチャージ機の設置などさまざまな方法を検討しています」と口にする。
300店舗での本格稼働に向け成果
アクアコインで税金の支払いなどを目指す
アクアコインには、6月11日時点で202店舗が参加。木更津商工会議所では実証実験開始前、会員に向け2度の説明会を開催した。また、市役所でも取引先にPRしており、参加申し込みは日増しに増えているそうだ。当初、実証実験には100店舗の参加を見込んでいたため、その倍の店舗数達成には成果を感じているが、「300店舗での本格稼働に向け、早期にある程度の数を確保していきたいです」と鈴木氏は意気込む。
現在、実証実験には地元のスーパーが1店舗加盟しており、一番利用件数が多い。また、パン屋、お弁当など、日常的に利用される店舗での利用が多くなっている。守氏は、「参加店舗へのアンケートでは、約3割の店舗から集客が見込まれるという回答がありました。また、約3割が地域貢献のためだとしています」と説明する。木更津市には、大手ショッピングモールやアウトレットなどもあるが、まずは地域の個店から加盟を促していきたいとした。なお、本格展開の際は、店舗での決済に加え、BtoBの送金も行う予定だ。
また、利用活性化に向けたポイントなどのインセンティブ付与については未定だが、「拡販のためには利用者にお得感を与えることは必要だと感じています」とした。
今後の予定として、アプリの登録は2018年9月にスタート。本格稼動は10月21日の「ちばアクアラインマラソン2018」の開催前を予定している。鈴木氏は、「市民へのPRはもちろん、1万7,000名が参加されるちばアクアラインマラソンのランナーにご案内をお入れして、木更津市で食事やお買い物をされる仕掛けをしていきたいですね」と構想を口にする。市では、来年度をめどに、ボランティア活動等に対し、アクアコインを通じてポイント提供を開始する予定だ。将来的には、税金の支払いなどができる形を目指す。