2018年9月7日8:00
硬貨や紙幣といった貨幣を用いずに決済する手段としてクレジットカード(Credit Card)とデビットカード(Debit Card)が発明された。今回は、「フューチャーペイメント要覧」から両カードの誕生について紹介する。
クレジットカードの歴史は“つけ払い”のシステムを高度化させる歩み
クレジットカードは、支払い時点で支払いが完了していないので、通貨(紙幣や硬貨といった現金通貨、預金通貨)には含められていない。
クレジットカードの歴史は、“つけ払い”のシステムをより安全に、よりスピーディに、よりスマートに高度化してきた歩みである。“つけ払い”は、世界中に過去も現在も広く存在している。クレジットカード(Credit Card)という言葉は、1887年にアメリカの作家であるエドワード・ベラミーが100年後の2000年を舞台にしたユートピア小説『顧みれば』の中で用いたのが最初であるといわれている。お客も、つけ払いは便利であった。お金の持ち合わせがなくても商品を買うことができた。支払いのタイミングは、お客の稼ぎによって異なっていた。農業や漁業に従事するお客の場合は、出来高払いが原則であった。月々の支払いは、毎月決まった日に賃金をもらう工場や鉱山労働者、それに企業のオフィスに勤めるサラリーマンが対象であった。
“つけ払い”は、当初いわゆる“顔パス”という認証が行われている。店は購入者の顔を見て馴染みの顧客であることを認識し、販売を行った。クレジットカードは、“つけ払い”の“顔パス”という認証方法に代わってカードの提示やサイン照合、PIN(暗証番号)照合などを採用し、発展を遂げてきた。
アメリカでは、19世紀後半にチャージコインが登場し、1928年にはチャージプレートが登場した。チャージコインとは、金属製のメダルに店のマークと顧客番号を刻んでいた本人認証のためのメダルのようなIDである。客が買い物の際に自分のチャージコインを提示すると、店では大福帳(顧客別の販売と代金回収の掛け売りの台帳)と照合し、新たな掛け売りを行った。チャージプレートは軍隊で兵隊が身に着けている認識票のようなもので、チャージコインと同様に店のマークと顧客番号が刻まれていた。
1920年代には、金属製のチャージコインやチャージプレートに代わって紙製のカードが石油会社やデパートなどで発行されるようになった。1934年にはアメリカン航空と航空輸送協会が航空チケットの購入ができるクレジットカードのAir Travel Cardを発行している。
第2次大戦後の1950年に、サードパーティのクレジットカードのパイオニアとして知られているダイナースクラブが事業を開始した。翌年の1951年には、ニューヨークのフランクリンナショナル銀行が銀行口座と連動した最初のバンククレジットカードを発行したが、いずれも紙製やセルロイド製のID媒体が採用されていた。
1958年にVisaの前身であるBank AmericardとT/Eカードのアメリカン・エキスプレスが発行された。3年後の1961年には、日本で最初のサードパーティ型のクレジットカードであるJCBカードが発行されている。マスターカードの前身であるInterbankは、1966年にアメリカのニューヨークで設立されている。
1980年代後半からオンラインデビットカードの普及が本格化
1967年にイギリスの大手商業銀行であるバークレイ銀行が、世界で最初のCD(キャッシュディスペンサー)を導入した。1970年代後半から、ATMとATMから現金を引き出すツールである磁気カードのATMカードの普及が始まった。ATMから預金を引き出す際の本人認証は磁気カードのATMカード(バンクカード)とあらかじめ登録されたPIN(暗証番号)の照合で行われた。ATMから預金を引き出すツールであったATMカードは、加盟店に設置されたPOSカード決済端末機を通じてPIN(暗証番号)による本人認証によりバンクPOSデビットというオンラインデビットを可能にした。
1980年代後半より、欧米を中心にオンラインデビットカードの普及が本格化し、1990年代に入ると、Visaやマスターカードのクレジットカードのネットワークを利用したオフラインデビットカードの発行が始まった。なお、磁気カードとPINによる本人認証は1980年代にクレジットカードにも採用され始めている。