2018年12月5日8:00
PayPal Pte. Ltd.(ペイパル)は、2018年11月30日、「ペイパルのリスクマネージメント」メディアセミナーを開催した。当日は、米国・PayPal本社VP,Consumer Risk Services, Mike Vergara氏はPayPalが登壇。同氏は、PayPalにおいて世界規模でのセキュリティと不正防止に関する戦略および実行の責任者だ。
急増するモバイルからの支払いをキャッチアップ
ID情報をベースにリスクマネジメントを実施
PayPalは、200以上の国・地域でビジネスを展開。また、100通貨以上での支払いが可能で、56通貨で銀行口座への入金、25通貨(日本では22通貨)で支払いの受け取りができるサービスとなっている。現在、世界中で約2億5,000万人のアクティブユーザーを抱えている。
PayPalでは、売り手、買い手が安心・安全に取引を行えるように、リスクマネジメントを強化している。たとえば、近年はモバイル決済が広く浸透。PayPal Pte. Ltd.東京 カントリーマネージャ 瓶子昌泰氏によると、現在、PayPalの3分の1の取引がモバイルからの支払いであり、昨年同期比では45%の成長を記録したように、その比率は高まっているそうだ。Mike Vergara氏は、「この動きをキャッチアップすることにより、さらなる信頼を醸成できます」と説明する。
また、それぞれの個人を特定するID情報をベースに、真性な取引、悪意を持った取引を見極めている。PayPalでは、売り手と買い手を仲介する立ち位置として、ユーザーに優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するとともに、膨大な情報を管理することでユーザーをリスクから保護し、ビジネスの収益性を維持してもらうことに力を入れている。
買い手については、カード情報をPayPalが保持することで、マーチャントにカード情報がわたらないメリットがある。また、「商品が届かない」といった問題やトラブルがあった際、「買い手保護制度」を設けている。
売り手に関しては、24時間365日の監視システムを採用。不正、フィッシングメール、なりすましの被害を未然に防ぐ努力を行っている。さらに、未承認や未着のトラブルの場合、一定の適用条件を満たすと売り手が保護される「売り手保護制度」を提供している。
現在の不正動向として、たとえば、エレクトロニクス、ファッションアイテムなどの製品は、犯罪者が悪意を持って手に入れたい傾向があるため、しっかりとした調査が必要となる。その一方で、航空券は犯罪者にとって魅力的ではなくなってきているそうだ。
テクノロジや経験を駆使し、高度化する不正行為に対応
善意のある取引を見極めることが重要
PayPal独自のアプローチでは、アカウントなりすまし(ATO)に関して、プロダクトやこれまでの経験、テクノロジを駆使することで未然に防止している。また、仮に不正が発生しても最小限の被害にとどめているとした。また、特定の企業、個人を特定する認証情報を盗み出し悪用するリスクに関しても、アカウントレベルでの評価を行っている。さらに、決済の遅延、虚偽申告などのリスク管理も実施している。
これに加え、①新規登録/ログイン~②取引の開始~③承認~④資金を利用可能にする~⑤取引後の処理まで、ミリ秒単位での意思決定が必要であるとした。取引を行う特定のIDに加え、関連性のあるアカウントの動きも考慮して、不正対策を行っている。
リスクの判断には、最前線のデータサイエンス、ビッグデータの解析、AIを活用した手法など、さまざまな技術を駆使している。一方で、不正行為は高度化し、真性な取引との判別がつきにくくなっているため、売り手のビジネスの機会を逃さぬように、善意のある取引を見極めることが重要だとした。