2019年4月18日8:00
キャッシュレス化の推進で市税収納率向上を目指す
大阪市では、市税納付のキャッシュレスへの対応を進めている。2018 年、即時に口座から納付できるリアルタイム口座引落しサービス「Pay B(ペイビー)」や、コミュニケーションアプリ「LINE」上で展開する「LINE Pay 請求書支払い」への対応を開始した。さらに、2019 年2 月から、クレジットカード納付サイトからApple Pay での市税の収納を開始。市税納付時の利便性を高めることで、市税の収納率や納期内納付率を向上させる狙いだ。
キャッシュレス化で納付者の利便性向上
職員の負担軽減、コスト減にもつながる
大阪市の現年度の課税分と過年度の未収納残高を含めた市税の収納率は、年々向上しており、2013年度に96.8%だったが、2017年度には98.2%まで改善しており、未収金残高は2013年度の184億円から2017年度の約101億円まで減少している。
一方で、市税を納期までに収めた人の割合(納期内納付率)は、2013年度の79%から2017年度の81%まで緩やかに改善はしているものの、ほぼ横ばいで推移している。納期限を過ぎた人に対し、督促状を発送するほか、文書や電話などによる納税の催告を行っている。こうした手続きには多額の費用がかかり、市税から支出されることになる。
大阪市財務局 税務部 収税課 収納管理グループ 担当係長 出馬智文氏は、「納付時の利便性を向上させ、納付しやすい環境を整えることが、市税の納期内納付率の向上と滞納整理に要する職員の負担軽減やコスト削減につながると判断し、キャッシュレス化を進めています」と説明する。
収納方法の利便性を高めるため、大阪市はこれまで申し込み用紙で受け付けを行ってきた口座振替をインターネットで申し込みができる「Web口座振替受付サービス」を導入したほか、コンビニエンスストア収納や、ATM(現金自預け払い機)、インターネットバンキング、クレジットカード納付といったサービスを導入してきた。
スマホを活用した取り組みを強化
全国初「Apple Pay」で市税収納開始
さらに、キャッシュレス化の進展を視野に入れ、2018年1月から、スマートフォンでリアルタイムに銀行口座から引き落としができる「PayB」を政令市では初めて導入した。これは、スマートフォンやタブレット端末から、納付書に印字されている「コンビニ収納用バーコード」を読み取ることで、アプリに登録した金融機関口座から金融機関での手続きなしで即時に引き落とし、市税の納付ができるサービス。納付書1枚当たりの納付金額が30万円以下で、「コンビニ収納用バーコード」が印刷された納付書が必要だ。
続いて、大阪市は2018年12月14日から、コミュニケーションアプリ「LINE」上で展開する「LINE Pay請求書支払い」による市税の収納を開始した。この「LINE Pay 請求書支払い」で税金の支払いが可能になるのは全国初だった。「コンビニ収納用バーコード」が印刷された納付書が必要で、1枚あたりの金額は5万円未満まで。
コミュニケーションアプリ「LINE」内の「ウォレット」から「LINE Payをはじめる」を選択し、登録を行う。銀行口座やコンビニエンスストア、セブン銀行ATMなどからチャージする。スマートフォンの「LINE」アプリから「ウォレット」内の「請求書支払い」を選択。「請求書支払い」の画面が表示されるので、「次へ」をタップすると、「コードリーダー」が起動、納付書のバーコードをスキャンする。
新たな取り組みとして、大阪市は、クレジットカードによる市税の納付サービスを行っているが、大阪市税クレジットカード納付サイトから「Apple Pay」による市税の収納を2019年2月14日から開始。市税の収納方法としてのApple Payの導入も全国初で、Apple Payに紐付くクレジットカードで決済処理を行うため、カード番号などの情報入力なしで納付が可能になる。
大阪市税クレジットカード納付サイトからApple Payで納付できるクレジットカードは、Mastercard、JCB、American Expressの3ブランド。納付書1枚あたりの金額が30万円以下で、コンビニ収納用バーコードが印刷された納付書で納付する。Apple Pay対応のiPhone、iPad、Macのデバイスで、利用可能なブラウザはSafariのみ。
大阪市税クレジットカード納付サイトへアクセスし、納付サイト手順に従い、スマートフォンのカメラ機能を起動し、納付書に印刷されている「コンビニ収納用バーコード」を撮影し、納付情報を読み取る。納付情報照会結果が表示されるので、Apple Payボタンをタップ。納付手続完了メールを受け取る流れだ。
コンビニ収納代行の仕組みでコスト抑制
より納付しやすい環境づくりを整備
なお、大阪市では、クレジットカードの指定代理納付者を三井住友カードとジェーシービー、また、エフレジが納付サイト運営事業者、コンビニ収納代行事業者は電算システムとなっている。電算システムのコンビニ収納代行業務のデータ連携と資金の流れを活用して、LINE PayやPayBの支払いを提供。出馬氏は、「コンビニ収納の仕組みをそのまま活用することで、新たな予算化の必要がなく、収納チャネルを増やすことができました」と成果を口にする。最後に同氏は、「国内のキャッシュレス・ウォレットレス社会の普及が急速に進んでおり、納税者にとって、より納付しやすい環境づくりが求められています。今後も、引き続き納税者の利便性向上に結び付く取り組みを積極的に行っていきたいです」と語り、笑顔を見せた。