2019年4月25日7:00
横浜銀行とゆうちょ銀行、GMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)、東京急行電鉄(東急電鉄)は、東急線各線(世田谷線とこどもの国線を除く)の券売機で銀行預貯金の引き出しができるキャッシュアウトサービスを2019年5月8日から始める。人々が生活で利用することが多い駅の自動券売機の利便性を高める一方で、QRコードによる現金引き出しサービスに慣れてもらうことで、キャッシュレス普及を後押しする狙い。4社は他の鉄道事業者や金融機関にも参加を呼び掛けている。(ライター:小島清利)
券売機を使ったキャッシュ・アウトは日本初
このサービスは、横浜銀行とGMO-PGが開発した、銀行口座と連動したスマホ決済サービス「銀行Pay」の仕組みを活用する。駅の券売機を使ったキャッシュアウトサービスを実施するのは日本で初めて。
まずは、横浜銀行のスマホ決済サービス「はまPay」と、ゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」で5月8日からサービスを開始する。それぞれのスマートフォンのアプリを起動し、引き出す金額を指定する。表示されたQRコードを券売機の読み取り機にかざすと、預貯金の口座から指定の金額を引き出せる仕組み。
平日・土日祝日ともに午前5時30分から午後11時まで利用可能。1万円、2万円、3万円の3パターンで現金を引き出すことができる。一日当たりの引き出し限度額は3万円。手数料は横浜銀行で平日108円、土日祝216円(ゆうちょ銀行の手数料は2020年1月3日まで終日108円の予定)だが、サービス開始を記念して、6月30日までの利用手数料を無料にするキャンペーンを実施する。
東急電鉄 フューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当券売機新決済事業プロジェクトリーダー 八巻善行氏は、「日本のキャッシュレス化を推進するには、お客さまが安心して利用できる環境整備が不可欠だ。また、現金の流通がなくならない限り、現金は必要になるわけで、ATM(現金自動預け払い機)やコンビニエンスストアを探さすことなく、いつも使う駅に行けば現金を引き出せる安心感が求められる」と話す。
券売機に機能を付与し、新しいインフラを構築
同社によると、交通系ICカードの普及で、駅の自動券売機の利用はピーク時から半減しているという。しかし、八巻氏は「沿線の駅の中には、コンビニやATMが近くにない地域もあり、券売機を使ったキャッシュアウトは沿線住民の生活の利便性向上に貢献できるはず」という。
さらに、キャッシュアウトサービスでは、システムの構築の際、券売機の前で混雑になることがないように操作性を高める工夫をしているという。例えば、QRコードを出す際に、スマホ側での操作の必要はあるが、券売機では暗証番号を操作する必要はないうえ、シンプルな操作にしている。現金を引き出すためにかかる時間を短縮させるためだ。
まずは、東急線の6路線85駅でサービスの提供を開始する。八巻氏は、「ICカードの普及で鉄道事業者各社も、券売機の維持コストが課題になっているはず。キャッシュアウトができる端末として、券売機を活用することは社会インフラとしても価値があり、将来的には、日本のどこの駅でも、現金が引き出せるようになることが理想だ」と話す。
「急がば回れ」QRの体験でキャッシュレスを加速
一方、横浜銀行 デジタル戦略部決済ビジネス戦略室室長 島山幸晴氏は、「ある調査では、日本のキャッシュレス化を阻む要因として、『うまくできないと恥ずかしい』とか、『もたもたしていると、列の後ろからのプレッシャーを感じる』などという理由が案外多い。急がば回れと言うことわざもあるが、はまPayを使って、券売機でキャッシュアウトできる仕組みを体験してもらい、QR決済に慣れてもらうことが、キャッシュレス化を進める早道になるのではないか」という。
ゆうちょ銀行 経営企画部担当部長 表邦彦氏は、「券売機のキャッシュアウトサービスの開始に合わせて、ゆうちょPayを始める。ゆうちょ銀行はこれまで、安心と便利につながる取り組みをしてきたが、今後は安心と『新しい便利』を提供していく。ゆうちょPayを使った券売機でのキャッシュアウトはスマホを活用したサービスの第一弾。お客様の生活導線上にある駅の券売機と、スマートフォンを組み合わせるという画期的な取り組みで、金融サービスに触れる新しい機会を提供していく」と話す。
また、GMOペイメントゲートウェイ 執行役員イノベーション・パートナーズ本部戦略事業統括部スマートペイ事業部長 畑田泰紀氏は、「銀行Payは、銀行独自のスマホ決済サービスとして展開するだけでなく、導入銀行間の相互連携(マルチバンク)により、銀行や地域を超えて利用できるサービスとしても提供できる。今後は、参加銀行を増やしていく一方で、駅の券売機だけでなく、調剤薬局の決済端末など利用シーンの拡大にも力を入れていきたい」と話している。