2019年6月10日8:00
大日本印刷(DNP)は、2019年5月22日に「DNPリテールテック フォローアップセミナー」を開催した。当日は、集客・販促・決済データの活用について、KDDIやJALペイメントポート、セールスフォース・ドットコムの担当が講演した。また、それを支援するDNPのソリューションも紹介した。
決済における5つの潮流
KDDIが「au PAY」の取り組みを紹介
セミナーではまず、大日本印刷 情報イノベーション事業部 C&I センター マーケティング・決済プラットフォーム本部 本部長 土屋輝直氏が登壇し、5つのキャッシュレス社会の潮流を紹介した。土屋氏によると、①決済手段の多様化、②キャッシュレスでお得に決済、③店舗の省人化、無人化、④インバウンド/アウトバウンド、⑤決済データの利活用、の5つが捉えるべき潮流として挙げられるとした。
最初のゲスト講演では、KDDIのスマートマネー構想について、KDDI ライフデザイン事業本部 新規ビジネス推進本部 金融決済ビジネス推進部長 長野 敦史氏が説明した。KDDIでは、通信とライフスタイルの融合を目指しているが、2014年に決済事業として「au WALLET」をスタートしている。2018年に「au WALLET」の会員は2,000万強となり、1,000億円超の残高を有するまでとなった。また、au WALLETアプリを中心に、貯める・支払う・殖やす・借りる・備えるなど、スマホでさまざまな決済・金融サービスが完結する世界を目指している。
同社では4月9日から新たに「au PAY」を開始。同サービスは、au WALLETの1,000億円の残高がそのまま使用可能であり、チャージ方法も従来通り利用できる。今後は、セブン銀行からのATMチャージに加え、auかんたん決済のチャージでのリアルタイムチャージを追加する方針だ。
DNPは「キャッシュレスプラットフォーム」でワンストップサービス提供
「DNPマルチペイメントサービス」で地域での展開も強化
続いて、大日本印刷 情報イノベーション事業部 C&Iセンター マーケティング・決済プラットフォーム本部 マルチペイメント企画開発部 部長 西田真氏が登壇し、同社の“キャッシュレスプラットフォーム”について紹介した。DNPでは、フロントサービスから、決済端末、決済ゲートウェイ、代行サービス(アクワイアラ)、発行・認証、代行サービス(イシュア)までワンストップで提供可能なキャッシュレスプラットフォームを展開している。西田氏は、キャッシュレス推進のニーズとして、①プロセッシング/アプリ化、②クレジット・電子マネー決済対応、③決済データの利活用、④QR決済の活用、の4つがあるとした。
DNPでは、「DNPマルチペイメントサービス」により、地域マネーやポイントを連携し、地域での利用を促している。また、決済に必要な決済端末や、決済ゲートウェイネットワーク、精算システムを提供している。国際ブランドプリペイドは、au WALLETをはじめ、数多くの事業者を支援しているが、ゆうちょ銀行の「mijica(ミヂカ)」では残高不足分を銀行口座からチャージする「口座振替決済機能」を提供しており、「今後は地銀などが、地方の電子マネーを開発するうえではニーズが高くなります」と西田氏は話す。また、モバイル決済の推進では、みずほ銀行の「みずほWallet」、JCBとの連携による新QRコード決済基盤の構築、キャナルペイメントサービスと連携したQR/バーコード決済などを提供している。
セールスフォースと連携してマーケティングを支援
「DNPパーソナライズドオファーサービス」でDMを自動送付
続いて、大日本印刷 情報イノベーション事業部 C&Iセンター デジタルマーケティング本部 副本部長 岩本 純一氏、セールスフォース・ドットコム アライアンス本部 ストラテジックアライアンス第一営業部 B2C CRM推進担当 鈴木 康雄氏が登壇し、両社の連携について紹介した。
岩本氏は、個客の状況に応じた情報をタイミングよく配信することが、カスタマーエクスペリエンスを最大化することにつながるとした。DNPでは、データマネジメント~アウトプットまで一貫したサービスを提供し、パーソナライズされたアクションを行うことで、ROI(Return On Investment)を最大化できるとしている。
DNPが連携するセールスフォースは、CRM、セールス、サービス、マーケティングの№1プラットフォームだ。両社の取り組みでは、Salesforce Marketing Cloud上で、DNPが開発したビジネスアプリ「DNPパーソナライズドオファーサービス」を提供しており、生活者にとって最適なタイミングや嗜好を見極めて、DM(ダイレクトメール)を自動的に送付できる。
1枚で同時に15通貨に対応した「JAL Global WALLET」
全フライヤーへのカードの配布も視野に
最後の講演では、日本航空による多通貨両替事業である「JAL Global WALLET」について、JALペイメント・ポート 代表取締役副社長 井上 史章氏が紹介した。JALペイメントポートは、JALとSBIホールディングスの共同持株会社であるJAL SBIフィンテックの事業会社として2017年9月に設立された。11月から発行を開始した「JALグローバルワレット」は、JALマイレージバンク(JMB)会員を対象としたサービスで、会員Webサイトや専用スマホアプリから両替が可能で、1枚で同時に15通貨を持つことができる。両替した通貨はATMからお金を引き出したり、Mastercardの加盟店で利用することが可能だ。同氏によると、空港の外貨両替窓口よりも有利なレートでサービスを提供できるという。
同氏は今後の展開として、カンタス航空やニュージーランド航空では、マイル会員証として同カードを配布しているため、さらなる浸透に向け「2~3年以内にはJMBの標準機能として配布したい」と語った。また、オーバーブッキング時のコンペンセーションの支払い手段としての展開も視野に入れているそうだ。