2020年7月8日8:30
国内でも、Visaをはじめとした国際ブランドプリペイド、デビットのさらなる市場拡大が期待されている。プリペイドやデビットは個人に加え、法人での展開も進んでいる。特に、ビザ・ワールドワイド(Visa)では、ビジネスデビットの普及拡大の可能性を感じているそうだ。今回は、国内での展開に力を入れてきたVisaに現状の成果と今後の展開について説明してもらった。
プリペイドの3つのトレンドは? デビットは1,000万枚突破
――まずは国際ブランドプリペイド、デビットの現状の発行状況はいかがでしょうか?
Visa:
<プリペイド>
Visaのプリペイドは、その幅広いアクセプタンスと前払いという特徴を併せ持つプロダクトとして以前より多くのイシュア、消費者の皆さんにご発行、ご利用頂いておりますが、昨今は下記3つの新たな取り組み、トレンドにより更に拡大傾向にあります。
①この2~3年でペイメントビジネスへの参入を検討されるフィンテック企業様からの問い合わせが非常に増えております。実際にそういったフィンテック企業様から幅広い消費者に受け入れられるさまざまな商品が出てきています。
②国内消費者の皆様のキャッシュレスへの関心の高まりや、足元の新生活様式への関心もあり、世代を問わず安心してお使い頂ける前払いのプリペイドは、利用者の年齢が低くてもご利用いただける商品などもあり、個人利用は堅調に伸びております。
③また、個人だけでなく法人利用のプログラムにも注目が集まってきており、法人のニーズに見合った商品が開発されていることから、この分野も今後の伸びがさらに期待されております。
<デビット>
デビットは2019年に発行枚数1,000万枚を達成し、ATMに行かなくても口座のお金が使える、即時引き落としでお金の管理がしやすい支払手段として、日本での普及が進んでいます。メガバンクやネット銀行をはじめとして、口座開設と同時に、キャッシュカードの代わりに提供される商品として扱われるようになりました。メガバンクでは、三井住友銀行につづき、三菱UFJ銀行が、2020年7月1日より、条件に応じて2年目以降に必要とされていた1,100円(税込)の年会費を、すべて無料とすることを発表しています。消費者還元事業をはじめとする国内のキャッシュレス化への動きとともにVisaデビットの普及も進んでおります。
<ビジネスデビット>
今年4月に三菱UFJ銀行が発行を開始したことで、発行銀行は11行となりました。従来ネット銀行がリードしていたビジネスデビット市場ですが、メガバンク、地方銀行の追随が加速しています。全体の発行枚数ですが、与信審査のないデビットカードの発行は引き続き順調で、かなり堅調な伸びを示しており、法人のデジタル化・キャッシュレス化に伴う需要ならびに今後の可能性を感じております。
デビット・プリペイド共に日常使いで利用される
――国内での取り組みのこれまでの成果をお聞かせください。
Visa:
<プリペイド>
Visaプリペイドの発行会社様による幾つかの取り組みとして、利用者の利便性を高めるスマホアプリに連動した即時発行型のプログラムや、6歳以上のお子様を含む家族でご利用いただけるプログラムのご提供などがあり、より多くの消費者の皆さまにご利用頂けるようになっております。
また、発行会社様としても、これまでのカード会社様・銀行様だけではない新たなフィンテック企業様(Kyash、カンム、Pollet、クラウドキャスト、ULTRA、計5社)にもご発行いただいており、今後さらに増える予定です。Visaでは2018年から『Visaファストトラックプログラム』というフィンテック企業様のビジネスコンサルテーションを含めた多方面でのサポートサービスを始めました。これによって、スタートアップを含むフィンテック企業様とも協力しながら、より便利で安全な決済のエコシステムの発展を進めていきたいと考えています。
<デビット>
前述のとおり、より多くの発行銀行様が、自行が個人口座保有者にご提供される基本的なサービスとして位置づけられることなったことに加え、デビットの特長や使えるシーンなどを分かりやすく伝える広告宣伝やPR活動による認知度及び理解度の向上、実際に使ってみるきっかけを提供する消費者キャンペーンなどを通じて、国内におけるデビット取扱高が順調に伸びています。
<ビジネスデビット>
市場調査を使った企業ニーズデータの収集を行いつつ、ビジネスデビットに関し紹介ビデオなどのマーケティング素材の制作を行うことで、その商品性がより幅広い企業に理解してもらえるよう、ビジネスデビット自体の認知向上に努めてまいりました。ビジネスデビットは審査を待たずに決済ツールとしてすぐに企業にご利用いただけるという点で、例えば新規口座の開設にきたスタートアップ企業向けにも提供できるなど、発行銀行からも商品性を評価いただいております。
――単価や月の利用金額など、クレジットと比べてデビット、プリペイドの状況はいかがでしょうか?
Visa:デビット・プリペイド共に、より日常的にご利用頂いているという傾向及び特徴がございます。今後も、クレジットカードを保有していない方は勿論、お持ちの場合でも、銀行口座のお金をそのままご利用いただけるデビット、事前に予算を決めて使いすぎを心配せずに気軽に利用できるプリペイドカードをお使いいただき、それぞれの特徴に応じた利便性や安心感を享受いただけるように努力していきたいと思っております。
<ビジネスデビット>
ビジネスデビットは与信審査がなく、高額取引も可能なため、高い水準のご利用金額となっております。
給与支払いでも注目のプリペイド
――昨年はQR決済が注目され、デビット、プリペイドの話題性がいったん落ち着きましたが、Visa様の見解はいかがでしょうか?
Visa:日本の消費者の皆様にとってさまざまなキャッシュレスの手段が提供され、その選択肢が増えることで、より現金からキャッシュレスへの移行が促進されることは業界だけでなく社会全体にとって望ましいことかと思います。
Visaとしても、引き続き、デビット、プリペイドをより安心、より便利なキャッシュレス手段としてご利用頂ける環境を整えていきたいと考えています。特に、日常利用として受け入れられやすいデビット、プリペイドは、かざすだけで支払いが完了するタッチ決済との親和性も非常に高いと考えます。Visaのタッチ決済は、コンビニ全体の約7割*でご利用いただけますし、スーパー、飲食店や本屋、百貨店などの商業施設のほか、Visaのタッチ決済の利用できるところは急速に拡大しています。今後、日常利用のさまざまな場所でVisaのタッチ決済のご利用シーンが拡がっていく予定です。(*コンビニ各社発表資料(5月分)並びにJFAコンビニエンスストア統計調査月報2020年5月度による)
また、国内におけるVisaのタッチ決済対応カードの発行枚数は、昨年6月に1,000万枚を達成してから1年を経たずに、2020年3月末時点で約2,390万枚(取引先金融機関・発行会社からの報告による。)と急伸しております。スマートフォンやウエアラブルでもご利用いただくことができるなど利便性も高く、デビット、プリペイドとの組み合わせと共に、シンプルでスピーディかつ安心・安全な決済方法として、国内のキャッシュレス化に貢献できるものと考えております。
――プリペイドは給与など、新たな活用が広がっていますが、今後有望なアプリケーションについてはどのようにお考えでしょうか?
Visa:給与支払い用のプリペイドは米国では一般的になっており、国内でも法制度の観点より議論されていると理解しております。給与の支払いサイクルやそれに伴うコストを柔軟にすることができる可能性や、賃金支払い時の従来の方式に不便を感じている労働者に対して新たな選択肢を提供することにも期待されており、有望な市場だと考えます。
また、Visaのプリペイドは、海外やインターネットでも広く利用でき、与信や銀行口座も不要なため、中小企業様やスタートアップ企業様といった法人向けプログラムとしてもご利用いただけると思います。
さらに、企業における出張旅費、備品購買、謝礼等において、仮払いや立て替えを含む現金での運用が未だに残っているケースが見られます。このようなケースにおいてカード発券直前にまとめて有効化が可能な使い切り型のプリペイドもでてきており、企業におけるキャッシュレス化にも貢献できると考えております(関連記事)。
ビジネスデビットカードの発行・取扱額は堅調に推移
――デビット、プリペイドの2020年後半からの展望についてはいかがでしょうか?
Visa:
<プリペイド>
前述させて頂いた通り、今後もさまざまなタイプの発行会社様やプログラムが発表される予定です。Visaのプリペイドとして、今後も国内の消費者の皆様により利便性の高い安全・安心にご利用いただける商品をご提供することを目指していきます。
<デビット>
引き続き、今後もVisaデビットをご発行いただく金融機関様が増える予定です。また、先日、セブンイレブンにてVisaのタッチ決済が利用できるようになりましたが、今後もVisaのタッチ決済が使える場所が拡大する予定であり、特に日常での支払いとの親和性が高いデビットは、タッチ決済の広がりと共に、よりご利用いただき易い環境が広がると考えます。さらにモバイル決済や、個人間送金などの付加価値サービスのローンチに向けても準備をすすめています。
<ビジネスデビット>
ビジネスデビットはeコマースでの利用比率が高くなっております。今後は、従来対面で現金で購買していた商材やサービスもオンラインでの購買に移行が進むと想定され、ビジネスデビットカードの発行・取扱額は堅調に推移するものと予想しています。
VisaデビットはGoogle Payへの対応を開始
――デビット、プリペイドの国内特有のインフラの課題は解決されてきましたでしょうか?
Visa:アクワイアラさま、イシュアさまとともに、利用者の皆さまがより使いやすくなるよう、取り組みを続けております。
――特にプリペイドはEMVコンタクト、およびコンタクトレスが搭載されていないケースも目立ちますが、今後は搭載が進むと思われますか?
Visa:消費者の皆さまに日常的にご利用頂く観点で、タッチ決済は大事な要素であると考えております。スマートフォンなどでのタッチ決済への対応も検討中です。
――デビット、プリペイドのGoogle Pay、Apple Payといったモバイル決済への対応についてお聞かせください。
Visa:昨年の秋より、VisaのデビットはGoogle Payへの対応を開始し、Visaのタッチ決済が使えるお店でモバイル決済が利用できるようになりました。
Apple Payにつきましては、日本の消費者の皆さまに、より多くの決済の選択肢をご提供するべく、現在さまざまな取り組みを行っております。発表できるタイミングでご案内をさせていただく予定です。
今後のデビット、プリペイドの目標は?
――今後のデビット、プリペイドの目標についてはいかがでしょうか?
Visa:
<プリペイド>
Visaのプリペイドは全ての消費者、法人の皆様にお使い頂ける商品だと考えますが、特に、前払い形式にメリットを感じる消費者及び法人の方々、また、年齢的にクレジットカードをお持ちいただけない消費者の皆様には、どこでも手軽にご利用いただける安全・便利なキャッシュレス決済手段として広くご利用頂きたいと考えております。
<デビット>
これまでキャッシュカードを使って銀行口座から現金を引き出すことが主流であった日本において、Visaデビットをより多くの消費者の方にお持ちいただき、口座からお買い物のたびに引き落としがされるためお金の管理がしやすいという特徴や、タッチ決済でスマートにかつスピーディに支払えるという利便性を感じていただきたいと考えております。さらに、モバイル決済や個人間送金などの付加価値サービスを追加していくことで、これまで以上に、現金に勝る価値をご提供していきたいと考えます。
<ビジネスデビット>
今後も発行銀行との連携を一層強め、企業におけるB2B取引のデジタル化、省力化を支援する活動の一環として、より幅広い企業にビジネスデビットの利便性が理解され、普及が加速するように努めてまいります。