2020年7月13日8:15
フライトシステムコンサルティングは、2016年から提供してきたマルチ決済端末「Incredist Premium」の後継機種、「Incredist PremiumⅡ」の販売を今秋から開始する。新たにマイナンバーカード読み取り機能を搭載したことで、各種決済に加えて本人確認も1台で行うことが可能になる。政府は今年9月から、マイナンバーカード所持者を対象にキャッシュレス決済でマイナポイントを25%、最大5,000円分還元する事業を実施すると発表しており、これを機にマイナンバーカードの普及が一気に進む可能性がある。そのような中、マイナンバーカード読み取り機能を備えた「Incredist PremiumⅡ」は小売業・サービス業の店頭でどのような活躍が期待されるのか――。フライトシステムコンサルティング 代表取締役社長 片山圭一朗氏に話を聞いた。
マルチ決済端末に本人確認機能を搭載
マイナンバーカード読み取り機としていちはやく認定を取得
6月末で終了したキャッシュレス5%還元事業に続き、政府は9月から、マイナンバーカード所持者を対象にキャッシュレス決済で25%、最大5,000円相当のマイナポイントを還元する事業をスタートさせる。日本の喫緊の課題であるキャッシュレス化とマイナンバーカードの普及を、同時に推進する狙いだ。マイナンバー制度開始から約4年半が経過してもいまだ所持率が20%に届かないマイナンバーカードであるが、今後は健康保険証や運転免許証など生活になくてはならない機能をこれに集約することも検討されていることから、所持率は大きく伸長していくものと推測される。
この動きを睨み、フライトシステムコンサルティングでは。2016年から提供してきたマルチ決済端末「Incredist Premium」の後継機種、「Incredist PremiumⅡ」に、いちはやくマイナンバーカード読み取り機能を実装する。マイナンバーカード読み取り機能を搭載する端末には、地方公共団体情報システム機構が実施する適合試験を受け、合格することが求められる。「Incredist PremiumⅡ」はこれをクリアし、適合機種としての認定を受けた。
「マイナンバーカードにはICチップもNFCも付いていて、コンタクトにもコンタクトレスにも対応できます。これを使って本人確認を行い、決済まで完了できる端末のニーズは大きいと考え、1年ほど前から開発を進めてきました」と、フライトシステムコンサルティング 代表取締役社長 片山圭一朗氏は振り返る。今秋からの本格的な販売開始に向けて、現在、クラウドベースの本人確認・決済のソリューションを含め、調整を急いでいるところだ。今のところまだ競合は現れていないとしたうえで、片山氏は「先行者メリットを生かして、ビジネスの基盤固めに邁進したい」と抱負を語る。
店頭から求められている確実かつ安全安心な本人確認手段
近い将来、本人確認はマイナンバーカードが主流に?
iPadなどのモバイルデバイスとの組み合わせで、小売・サービス業の店頭に多様で柔軟な決済環境を提供する「Incredist Premium」。携帯キャリアのSoftbankショップをはじめとした大手キャリア、ホテル、ファッションブランドショップ、旅行代理店、家電量販店など多店舗展開を図る大企業の多くに採用されている。
小売・サービス業が顧客に個人情報の提示を求めざるを得ない場面は、決して少なくない。例えばコンビニで酒類やタバコを購入しようとすれば、20歳以上かどうか、タッチパネルで回答を求められる。しかしこの方法では、うがった見方をすれば“なりすまし”も可能だ。一方、例えば携帯電話の契約のように、より厳密な本人確認が必要とされる場合、店舗では契約者に運転免許証などの提示を求め、そのコピーをとって保管するのがこれまでの通例だった。しかしもし、そのコピーが流出するような事態が起きれば大問題になる。マイナンバーカードに記載された情報を端末で読み取ることで、店舗側には必要以上の個人情報を残さず、正確かつ安全安心に本人確認を行うことができれば、これらの課題を一挙に解決できる。
「Incredist Premium」の既存ユーザーの中にもこのようなニーズは高い。「Incredist Premium」は2016年のリリースから約4年が経過し、ユーザーは今後順次リプレイスの時期を迎えることになるが、コンパクトなサイズや重量はそのままにマイナンバーカード読み取り機能を搭載した「Incredist PremiumⅡ」への移行は、スムーズに進んでいくものと見られている。
「本人確認×決済」で広がるアプリケーション
中小専門店やクリニックでの活用に期待
フライトでは「Incredist PremiumⅡ」リリースを機に、新規ユーザー獲得にも意欲を見せる。ターゲットの1つは、決済機能付き会員カードを発行している中小規模の専門店。現状、会員カードの発行には、膨大な情報を顧客自身の手で記入あるいは入力してもらう必要があるが、マイナンバーカード読み取り機能によってこれを簡素化できる。ショッピングモールに出店している専門店などを対象に、ユーザーの開拓に力を入れたい考えだ。
もう1つ、「Incredist PremiumⅡ」のターゲットとして同社が想定しているのが、病院だ。すでに自動精算機を導入している大規模な総合病院は別として、町のクリニックのキャッシュレス化は遅れている。しかしマイナンバーカードに健康保険証の機能が搭載されることになれば、これで診療費の支払いまで済ませたいというニーズが高まることは必須で、クリニックのキャッシュレス化が一気に進む可能性は大きい。クリニックでの円滑な運用ができるよう、フライトは今、厚生省や医療系SIerとのディスカッションを重ねている最中だ。「Incredist PremiumⅡ」は今秋のリリース後、年間数万台の納入が見込まれている。
いまだ発展途上のマイナンバーカードは、マーケティングツールとしての可能性も未知数。今後の動向は注目に値する。