2020年8月14日8:30
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下の福岡銀行が運営するオープンイノベーション共創拠点 DIAGONAL RUN TOKYO(DRT)と、親和銀行が運営する DIAGONAL RUN FUKUOKA(DRF)では、2020年8月5日、それぞれの開設3周年、2周年を迎えた周年イベントを開催した。当日は、iBankマーケティング 代表取締役社長 永吉 健一氏が、「マネーアプリ『Wallet+』 4年間のあゆみと今後の展望」と題し、これまでのサービス展開と今後について紹介した。開始から4年がたった「Wallet+」は、利用者が着実に増加するとともに、機能の拡充を進め、より便利なアプリを目指しているそうだ。
日常使いの利用者は着実に増加
DRT/DRFの周年イベントは、リアルと、ZOOMによるオンラインを併用して行われた。当初は、2020年3月~4月にかけて開催する予定だったが、新型コロナウィルス感染拡大を受け、開催が先延ばしされ、このタイミングでの開催となった。DRT/DRFは、オープンイノベーション共創拠点として、さまざまなイベント等を行っている。
iBankマーケティングは、FFG傘下の企業として、2016年4月に設立。同7月に銀行公式無料アプリ「Wallet+」を開始し、2020年7月にサービス開始から4周年を迎えている。金融と非金融を結ぶ新たな金融サービスの形を目指したアプリとして、2020年3月時点で100万ダウンロードを突破、足元では106万ダウンロードまで伸びているという。サービス開始当時はFinTech(フィンテック)がバズワードだったが、現在はDX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まっている。永吉氏は「展開してきたステップごとにみると、我々の行ってきたことがDXとして存在しています」と説明する。Wallet+では、2016年の福岡銀行でのサービス開始を皮切りに、2017年度には熊本・親和銀行を加えてマルチバンク化を開始した(現在は8行まで拡充)。2018年度には銀行連携・広告代理店化により総合的なDX支援を提供できる体制を整えた。2019年度には、地域総合商社の立ち上げなど、連携を加速させている。
ユーザーは、男性が49%、女性が51%となり、男女比はほとんど変わらない。特徴的なのは年代で、「10代から30代の銀行の店頭に現れない人に使っていただいています」と永吉氏は話す。Wallet+では、如何に日常的に使用してもらうかを考えてサービスを展開してきた。年間や月間といった指標に加え、週間、デイリーベースで使ってもらえるように努めてきた。その結果、ユーザー数は伸びているが、福岡銀行の口座登録ユーザーのMAU(マンスリーアクティブユーザー)は、2019年3月の64.5%から2020年3月は64.8%となり、「通常はユーザーが増えるたびに比率は下がりますが、昨年と比べても順調に上がっています」と永吉氏は成果を述べる。
また、貯蓄預金/積立預金を提供しているが、貯蓄預金の残高は189億円、21万人となり、うち目的預金の残高は110億円、ユーザー数7万9,000人、セット数15万9,000個となっている。さらに、カードローンの新規申し込みが大きく増加。2019年3月の1,600件から、2020年3月には3,500件と伸びている。資産運用(THEO+)も2020年3月には連携件数が1,400件となり、着実にすそ野が拡大しているとした。
バンキングアプリよりも接触回数は多い
Wallet+では、金融機関のフロントチャネルとしてサービスを展開しているが、月間接触累計人数を見ると、ATMは一カ月に880万回、インタネットバンキングは156万回のところ、Wallet+は252万回(前年比56%)の利用がある。銀行のバンキングアプリよりも接触回数が多く、顧客接点の維持・最大化に貢献できているとした。
また、金融機関にとってサービスを提供するうえで、投資対効果が求められるが、「預金」「デビットカード(決済手数料)」「カードローン」「運用」等により、一人当たり年間+1250円の収益に貢献できていると試算した。
myCoinはポイントを「おくる」機能追加、スマホで登録から決済まで可能に
Wallet+の直近1年での主な取り組みとして、①myCoin、②AIチャットボット、③地域総合商社、④Debit+、の4つを挙げた。
まず、myCoinでは、ブロックチェーン技術を使用しているが、「おくる」機能を搭載した。これにより、Wallet+の利用者が手にしたポイントをユーザー間で送ったり、もらったりできるようになった。また、「ふやす」機能も搭載。貯まったポイントを1ポイント単位で、資産運用(THEO+)に投資可能となった。さらに、「交換する」機能の拡充として、2020年6月からは、「nanaco」「楽天ポイント」「au Walletポイント」「スターバックスカード」を加え、交換可能ポイントは合計10種類となった。
そのほか、ブロックチェーンの関連技術であるスマートコントラクトを使って異業種とのコラボレーションも進めている。SOMPOひまわり生命保険とは、共同企画した『健康預金キャンペーン』では、スマートコントラクトを活用し、キャンペーンの達成条件判定からmyCoinプレゼントまでを自動化させた。
AIチャットボットの活用では、NTTドコモと連携した「AI会話レコメンドサービス」を試行的に運用。利用者は、キャラクターをタップしてチャットで質問すると、AIでコミュニケーションが可能だ。
地域総合商社事業では、オンラインストアやクラウドファンディングの運営等を通じた販路拡大やWebプロモーションを行っている。オンラインストア「エンニチ」を活用した取り組みとして「波佐見陶器市@エンニチ 2020 Summer」を開催。販売額は1,000万円強、サイト来訪者(UU)17万人、閲覧者(PV)187万回となった。
2020年7月13日からは、Wallet+を通じて、Apple Pay/Google Payにデビットカードの登録が可能となる連携機能の提供を開始した。今回の機能追加で、利用者が手持ちのデビットカードの登録から店頭での決済までの一連の手続きがスマートフォンで完結できるようになり、かつポイントも付与される。
同社では、4周年を記念して、約1万3000人を対象にアンケートを実施したが、今後追加、改善してほしい機能として、残高照会、収支管理、目的預金、クーポンなどの回答が挙がった。Wallet+では、ユーザーの声を反映したサービス開発・機能高度化を実践していきたいとした。また、近年5年間でのお金周りでの行動の変化として、「キャッシュレス決済の普及で預金を行わなくなった」「銀行窓口に行かなかくなった」という回答が上位となった。
永吉氏は、まとめとして、近年は非金融業者と金融との協業が加速しているが、同社は銀行代理業を使って、フロントチャネルでエンドユーザーにサービスを提供するサービスを提供しており、「そういった観点では日本初のネオバンクを自負しています」とした。引き続き使い勝手や便利な機能を提供することで、価値を高めていきたいと意気込みを見せた。同社では今後も時代の変化に対応しつつ、不変のビジョンを成長軸として、名実ともに日本を代表するネオバンクを目指していく方針だ。