2020年9月11日8:00
LINEは、2020年9月10日、LINE Business Conference「LINE DAY 2020 ―Tomorrow’s New Normal―」をオンラインにて開催した。「LINE Pay」のセッションでは、コロナ禍でも注目されるキャッシュレスのこれからのキーワード「非接触/Contactless」に沿って、LINE Pay 代表取締役社長CEO 長福 久弘氏がLINE Payのユーザー・加盟店双方の利用動向や、今後の新サービス、New Normal(ニューノーマル)時代に対応するためのビジョンについて紹介した。
これからのキーワードは「非接触(Contactless)」
顧客ニーズに応える事業継続の必須事項に
昨年の国内のキャッシュレス化比率は26.8%となり、中でもQR/バーコード決済は約6倍の成長となった。現在は大手スーパー、ドラッグストアの多くがキャッシュレス決済を採用しており、スマートフォンによる支払いも増えている。SMB(Small and Medium Business、中堅・中小企業)においても、今年6月まで実施していたキャッシュレス・消費者還元事業により、27%から36%までキャッシュレス決済の導入が進んできた。一方で、中堅・中小企業のキャッシュレス導入は、都道府県によってばらつきがあるとした。
LINE Payでは、2018年の「LINE CONFERENCE 2018」で、国内でのコード決済普及施策を「Payment Revolution(ペイメントレボリューション)」として発表。事業者の初期費用0円、決済手数料無料を打ち出してきた。また、利用者にとって、直感的でわかりやすいメリット、お得・便利を強調し、高還元による魅力付けを行ってきた。しかし、他社も含めたこれまでのキャッシュレス戦争を振り返ると、お得で便利の以上でも以下でもなく、生活課題を解決する必然ではなかったと分析した。
現在は、新型コロナウィルスの発生により、お店、消費者に変化が生まれている。長福氏は、キャッシュレスのこれからのキーワードとして「非接触(Contactless)」を挙げた。コロナ禍により、現金を取り扱うリスクが発生し、現在は非接触への対応が進められている。事業者も人手不足の解消、レジの効率化に加え、顧客ニーズに応える事業継続の必須事項になっているとした。
簡易に決済できる「LINE Pay支払いリンク」を11月に開始
通販、デリバリー、オンラインサービス等での利用を見込む
同社による2020年4月の加盟店アンケートでも、新型コロナウィルス感染拡大により、70%以上の店舗が大きな影響を受け、30%が事業継続ができないと回答している。LINE Payでは、加盟店支援策として、入金申請を一時的に無料とし、加盟店の売上をすぐに現金化できるようにした。同取り組みの開始後は多くの申請が発生し、初日には実施前の約5倍、最大12倍の申請があった。また、6月より全加盟店を対象に精算サイクルの短縮を実施。最大1カ月早く売上金を受け取れるようにした。
さらに、オフライン店舗ではソーシャルディスタンスが叫ばれ、困難な状況下でも簡易的に売り上げが高まる仕組みを求める声が挙がった。そこで簡易に決済できる「LINE Pay支払いリンク」のプロトタイプ版を7月にローンチ。すでに1,000件を超える申請があるそうだ。
これまで、LINEのトーク上で決済まで提供することは物理的には可能だったが、費用的にも物理的にも難しかったという。「LINE Pay支払いリンク」は、「簡単で速いだけではなく、対面接客と同じような感覚で使えるLINEらしいサービス」と長福氏は説明する。同機能は、申請した加盟店であれば無料で利用可能だ。加盟店が支払い用のリンクを生成し、顧客とのやりとりの中で送信することが可能になる。LINE公式アカウントとLINE Payを連携させることで、LINE上で接客から購入確定後の支払いまでの一気通貫したサービスを、難しい開発不要・設定1つで提供可能になる。プロトタイプ版で導入した店舗からも「決済までのスピード感が抜群に上がりました」「気軽に始められるので試してみたいと思って導入しました」「一気通貫で完結できる」といった声をもらった。同機能は11月に正式リリースし、申請した加盟店であれば2021年7月末まで無料で利用可能だ。通販、デリバリー、オンラインサービス等での利用を想定している。
東京ガスの支払い、管理等をLINE上で一気通貫して可能に
LINE Pay残高での支払いで「Apple Pay」に対応
また、「LINE Pay請求書支払い」は4月、5月と40%ずつ増加を続けた。中でも5月は前年同月比310%と急成長。対応請求書は全国1,700団体、公共料金で300、公金375団体となっている。新たな取り組みとして、東京ガスと提携し、2021年春ごろより、ガス・電気料金をLINEで通知し、LINE Payでの支払いまで完了できるように開発を進めている。金額通知から支払い、支払いのリマインド、履歴の確認、家計簿での管理までをLINE上で一気通貫で可能にする、「業界初の取り組みとなる予定」(長福氏)。
さらに、年内に、LINE Pay残高での支払いで「Apple Pay」に対応する。Visa LINE Payクレジットカードを介した後払いでの利用に加え、プリペイド支払いでもiPhoneやApple Watchでの支払いが可能になる。長福氏は「コード決済、クレジットカード、プリペイドカード、かざして決済などすべてに対応可能で、決済プラットフォームが完成します」と語った。
LINE Payでは、三井住友カードと提携した「LINE Payクレジットカード」の4月からの発行等により、決済金額や回数も大幅に上昇したという。クレジットカード決済に加え、紐づけて後払いが可能になったり、「LINEポイントクラブ」と連携した特典クーポン等が功を奏している。現在、LINE Payは、「Payment Platform(ペイメントプラットフォーム)」としてアライアンスを拡大させ、全世界6,000店舗、9,000万以上のシーンで利用可能だ。今後は、中小企業やフリーランスの導入も加速させたいとした。
LINE Pay3.0では公共性の高い認証に進化
金融領域以外にも認証を広げる
長福氏は、1.0のフェーズで決済箇所を拡大させ、2.0のフェーズでは決済箇所の広がりとともに、公式アカウントとの連携によるマーケティングサービスを提供してきたとした。そして、現在の3.0フェーズでは、LINE Payが本人確認を必要としている強みを生かし、公共性の高い認証に進化させていきたいとした。その構想が、「LINE ID Passport」だ。 LINE Payは、eKYCの導入により、安全な出金や送金のために本人確認を重視してきた。昨年はLINEアプリからお金を借りることができる「LINEポケットマネー」にもeKYCのスキームを導入している。LINE Payでは、CtoC、BtoC、GtoC送金を強化し、本人確認を増やしていきたいとしている。
LINE ID Passportでは、一度LINE Payで本人確認をしたらパスポートのような機能を果たし、スムーズな本人確認が可能になる。将来的には外部企業との連携を進め、次世代の本人確認サービスにするという。金融領域に加え、民泊等のシェアリングエコノミー、短期ファンドやクラウドソーシング、エンターテイメントのチケット販売やリセール、飲食店予約などへの活用を目指す。また、自治体でも証明書、給付金に加え、公共施設での予約、子育て関連など、支払いを伴うさまざまな申請において利用されるポテンシャルがあるとみている。
現在、国内のキャッシュレス化は、事業者の還元合戦に加え、政府による支援などによって成長している。長福氏は、政府が掲げる2025年にキャッシュレス比率40%は前倒しで達成できそうだとしたうえで、「キャッシュレスはそのものが目的ではなく、世の中を良くすることが目的」とし、「(LINE Payでは)本質的な価値を提供するサービスとして成長していきたい」とまとめた。