2011年1月5日8:10
決済アプリケーションセキュリティ基準「PA-DSS」入門 第5回(2/3)
要件13. 顧客、リセラー、インテグレータ向けの指示文書とトレーニングプログラムの保守
カード会員データ環境へのペイメントアプリケーションの安全な導入と維持
要件13には、決済アプリケーションが安全に導入および維持されるために必要な文書とトレーニングプログラムを用意し、導入を行うインテグレータや加盟店に提供しなければならない旨が要求されている(図2)。本要件がPA-DSS準拠に必要であるということからも、各ステークホルダーの役割が明確になる(厳密にすると、PCI SSCやブランド、PA-QSAなども登場する)。
要件13には、大きく分けて2つの要求事項がある。1つは、“PA-DSS実装ガイド”を用意すること、もう1つはトレーニングを提供することである。トレーニングは、PA-DSS実装ガイドを用いて行えば良いので、大きく1つの要求事項としてとらえても良いだろう。
実装ガイドは、作成、保守、配布プロセスに従う必要がある。これは、企業で文書を作成するプロセスとして特に変わった点はないと考えられる。実装ガイドのポイントは以下の通りである。
●作成時…要件で求められている点を網羅すること
● 配布時…アプリケーションと実装ガイドを共に配布すること
● 作成後…1年に1回レビューを行うこと
また、文書の改訂や配布、レビュー実施など、簡単でも良いので記録しておくことも重要である。
“実装ガイド内容の要約”の読み方と
実装ガイド作成時のコツ
付録の実装ガイドでは、要件に散りばめられているのに加え、“コントロールの実装責任(Control Implementation Responsibility)”という列があり、当該要件に対してベンダ、加盟店やリセラ、インテグレータがどのような責任を持つかが記載されている。要件2.1を例に確認してみよう(図3)。
定義した保存期間を過ぎたカード会員データは破棄しなければならないという要件だが、この要件について、実装ガイドに記載しなければならないことが2点挙げられている。
●定義した保存期間を過ぎた後、破棄する必要がある旨
●ペイメントアプリケーションがカード会員データを保存するすべての場所
1点目のような内容については、そのままオウム返しで記載してしまうのが良いだろう。あまり意気込んでオリジナルの文章や文言を盛り沢山にして作成してしまうと、実装ガイドのバージョンアップ時(アプリケーションのバージョンアップ時)、PA-DSSのバージョンアップ時など、その内容が正しく盛り込まれているか、の確認に手間取ってしまう。上記1点目については、ずばり以下のように記載してしまおう。
「カード会員データは、定義した保存期間を過ぎた後、破棄する必要がある」
2点目のような内容の場合、具体的な場所の記載が求められているため、オウム返しというわけにはいかない。実際に、カード会員データが保存されるすべての場所を記載する。パスを含むファイル名や、データベース上のテーブル名やカラム名なども考えられる。
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