世田谷区の「せたがやPay」2年間の成果は?デジタル地域通貨で非経済的な価値創造を目指す

2023年2月21日10:40

アイリッジ子会社のフィノバレーは、2023年2月20日に、東京都世田谷区と世田谷区商店街振興組合連合会との共催オンラインセミナーを開催した。同セミナーはフィノバレーがシステム・運用パートナーとして参加する、東京都世田谷区のデジタル地域通貨 「せたがや Pay」の開始 2周年と合わせ、全国の自治体担当者や商店街振興組合・商店街振興組合連合会担当者向けに実施した。

世田谷区 経済産業部 商業課長 中西成之氏。非経済的な価値をまわすこととして、経済的な基盤を整えることに加え、使う人に理解してもらうための対話が必要だとした

総決済額は100億を突破
13万8,460人が支払い実施

世田谷区の「せたがやPay」は、東京都世田谷区の支援のもと、世田谷区商店街振興組合連合会が導入するデジタル商品券・地域通貨だ。利用者のスマートフォンで店舗のQRコードを読み取り決済するMPM方式を活用している。2021年2月20日にサービスを開始し、現在4,366店舗が加盟している(アプリ掲載数)。また、13万8,460人が支払いを行った実績がある。これまでの総決済額は累計108億円だ。システムはフィノバレーのMoneyEasy(マネーイージー)を使用しており、初期経費は5,500万円を投入した。

フィノバレー代表取締役社長川田修平氏。せたがやPayでは常駐スタッフも含め、地域通貨事業を支援している

せたがやPay導入の経緯として、世田谷区 経済産業部 商業課長 中西成之氏は「地域通貨というよりも最初は行革のつもりで始めました」と説明する。従来の紙の商品券は高コスト、手間が多いという。また、発行に時間がかかるといった課題があったため、電子化すれば効果があると考えた。当初は紙の商品同様に1万人の利用を想定していたが、コロナ禍で消費の底上げが必要な中、1万店舗、5万人の利用まで高めていきたいという思いがあったそうだ。また、紙の商品券は地域の大手スーパーで多くが使われていたが、電子化を機に、地元の中小企業を活性化させることを目指した。

世田谷区商店街振興組合連合会 上村隆氏。紙の商品券は集計作業などが課題だが、世田谷区には3,000店舗の利用箇所があり、紙の商品券が普及しているベースがあるためデジタル地域通貨が受け入れられた一因であると分析

「せたがやPay」がスタートした2021年2月20日からはチャージで10%、決済の20%という、計30%を還元する消費喚起キャンペーンを実施した。当初は数百店舗規模でのスタートしたが、利用は伸びず、「庁内の理解も得られなかった」と中西氏は振り返る。厳しい船出となったが、店舗や利用者への案内を積極的に行うことで、3年度末には2,000店の加盟、利用者5万人を達成した。

世田谷区では、せたがやPayの利用が拡大する中、持続可能な取り組みに向けて、地域通貨の歴史について振り返ったという。地域通貨は、発行元がいる法定通貨的に流通した「通貨方式」、個人が取引のたびに発行して記帳していく「通帳方式」、家事援助などをした時間を貯蓄、将来引き出して援助を受ける「時間貯蓄」、企業や商店街のスタンプ・ポイントなどがあったが、発行数が伸びず、使い道が限定、発行・運営の負担などで終了するケースも少なくなかった。その中で、商店街のポイントは継続しているところもあり、ボランティア活動などのお礼にポイントを付与するケースも見受けられる。商店街のポイントは、「安定運用に資するような基盤が整っていたことと、商店街活動があり、商店街における商取引のインセンティブとして、ポイントが発行される基盤があり、地域通貨的に使われています」と中西氏は話す。

世田谷区では、地域経済の持続的な発展を目指す条例を昨年4月から施行。地域経済の発展に加え、地域や社会の課題の解決を両立していくことを目指している。第3条では、基本的方針として、①多様な地域産業の発展、②誰もが個性及び能力を発揮、③地域及び社会の課題解決をビジネスでも、④事業者も消費者も社会の持続可能性を考慮、が掲げられている。例えば、地域連携型ハンズオン支援事業の「SETACOLOR」では、区内の事業者の新たな挑戦を、専門家による伴奏支援でサポートしており、昨年は30事業者、今年度は80事業者を支援した。また、産学官連携で社会や地域/ビジネスの課題の解決を形にする「SETAGAYA PORT」では、クリエイターと子どもによるアート作品を福祉作業所で製作し、販売する取り組みを行った。世田谷区では、「世田谷ものづくり学校」の跡地に新たな産業活性化拠点をオープンするという。下北線路街の「BONUS TRACK」を手がけた「散歩社」を中心に、6者のコンソーシアムでの運営が決定しているそうだ。

地域経済の持続可能な発展に向けた取り組み
地域通貨として転々流通する運用を目指す

せたがやPayでも経済発展と課題解決を両立し、経済価値や非経済価値を必要とする区民の理解が得られるように努めていきたいとした。そういった展開を模索する中、令和4年度は昨今の物価高騰の影響を受けた区民を支援する消費喚起キャンペーン「せたがや全力応援祭」を実施。せたがやPayで支払うと30%のポイントを還元したが、結果4,300店舗が参加し、13万の利用があるなど、外的な要因で地域通貨として活用するために安定した基盤が整う結果となった。

今後は地域通貨として自律していくため、中小個店支援プラットフォームを整備していきたいとした。これは、商店街や個店がクーポンやポイントを発行し、顧客に対して販売促進を行うものだ。世田谷区商店街振興組合連合会 上村隆氏によると「商店街ポイント財源を用意して、通常のポイント以外にお店でしか使えないポイントを付与したり、クーポンの機能を利用してお店のアピールをするなど、最大限活用いただくことで、加盟店側のメリットが生まれる」という。

将来的には、ボランティアなどの地域活動でポイントを付与したり、地域稼働を解決するためのクラウドファンディングでの活用、イベント参加でのポイント付与、BtoBでの仕入れでの利用に発展させていくなどの展開を想定している。

中西氏は、これまで世田谷区は住民参加型で、建物、道路、公園などハードウェアを整備する「街づくり」、人々が活躍する住民自治の「まちづくり」を進めてきたが、これらに加えて地域通貨で非経済的な価値をも循環して創造する「マチづくり」を行っていきたいとした。

システム課題や今後実装予定の機能は?
MoneyEasyの基盤を利用してローカル領域で価値創出

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