2023年3月7日7:30
銀行が企業に提供するBaaS(Banking as a Service)と呼ばれる金融サービスが、急速に広がっている。消費者が利用するさまざまな小売サービスの中に、これまで銀行しか提供できなかった預金などの金融サービスが溶け込みつつある。決済やポイント、ローンなどから始まり、昨今は資産形成へも拡大。新たに立ち上がったデジタルバンクの参入も相次ぐ。
通販研究所 渡辺友絵
記事のポイント!
①2020年代に入り小売各社での導入が活発に
②「UNIQLO Pay」では会員証提示と代金決済をシームレスに
③わかりやすいマイルやポイントを入り口に
④高島屋の「スゴ積み」効果は数字に表れる
⑤ドコモが「dスマートバンク」で金融機能提供
⑥第一生命は「資産形成・承継」の入り口に
⑦BaaSに取り組む金融機関も増加
⑧今後もBaaSを活用した金融サービスは拡大?
■ユニクロは三井住友銀行と「UNIQLO Pay」で
BaaSは決済や預金、融資、為替といった金融機関の機能をAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)経由で企業に提供する仕組みだ。BaaS を利用して自社の事業に金融サービスを埋め込むことで、企業は銀行業免許がなくてもほぼ同様のサービスを展開できる。
フィンテックの浸透を目的に、2017年の改正銀行法で銀行APIの公開が努力義務化されたことから、2020年代に入り小売各社での導入が活発になった。顧客に向けたサービスの一環として、また収益が見込める新規事業として、さまざまな小売企業が乗り出している。
BaaSを通じて非金融企業が銀行サービスの一部を埋め込む仕組みはエンベデッド・ファイナンスと呼ばれており、キャッシュレスなど決済機能の埋め込みも代表的なサービスだ。2021年1月には、三井住友銀行の機能を通じてユニクロが「UNIQLO Pay」を開始。それまで別々に行っていた会員証提示と代金決済が、スマホ会員証のQRコードを読み込めば同時にできるようになった。
■マイルやポイントを軸に小売各社が「ネオバンク」に着手
エンベデッド・ファイナンスの推進役となるのが「ネオバンク」と呼ばれるもので、提携先銀行が公開するAPIを利用して企業が銀行機能を提供する。
ネオバンク事業で先端を行く住信SBIネット銀行は、「NEOBANK」のブランド名で小売各社に各種金融サービスを提供。2020年4月の日本航空から始まり、2021年3月のCCCマーケティングホールディングス、同年7月のヤマダホールディングス(ヤマダHD)、2022年6月の高島屋と続く。
日本航空は「JAL NEOBANK」の名称で預金や振込、住宅ローンなどに対応しており、利用に応じてJALのマイルが貯まる。CCCの「T NEOBANK」も預金、決済、融資などの銀行機能を備え、毎月の給与受け取りなどに加えて公営競技やスポーツくじの取引でTポイントが貯まるといったようにユニークだ。
ヤマダHDの「ヤマダNEOBANK」も銀行の基本機能を整備し、銀行取引でヤマダポイントが貯まるのをはじめ、口座開設で発行されるデビットカードを使いヤマダ電機店舗で買い物をするとポイントが貯まる。ヤマダグループの住宅購入者に向け、家具や家電の購入費用を含む住宅ローンも提供する。
これら小売企業のネオバンクは基本的な銀行機能を搭載しつつも、どちらかといえばマイルやポイントの提供に重点を置いているのが特徴といえる。銀行機能を備えたとはいえ、それまでの取引をいきなり自社のネオバンクに変更してもらうことはハードルが高い。まずは無難なマイルやポイントを入り口に、という狙いがうかがえる。
■積立や資産の運用・形成サービスも本格化
ただ、2022年に入ってからは、新たにネオバンクに参入した小売企業のサービスに変化が表れ始めた。
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