会津若松市、地域通貨「会津コイン」など都市OS活用で分野を超えたデータ連携

2023年3月24日9:00

会津若松市と一般社団法人 AiCT コンソーシアムは、2023年3月17日 、内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金(Type3)事業(令和4年度)に採択された「複数分野のデータ連携による共助型スマートシティ推進事業」についての記者説明会を開催した。4月からは会津地域のデジタル地域通貨「会津コイン」を本格的に展開する予定だ。

左から会津若松市 市長 室井照平氏、スマートシティ会津若松アーキテクト兼AiCTコンソーシアム 代表理事 兼 アクセンチュア イノベーションセンター福島 センター共同統括 海老原城一氏

パーソナライズされたサービスを提供へ
「ジモノミッケ!」は「会津コイン」精算機能も

記者説明会では、スマートシティ会津若松アーキテクト兼AiCTコンソーシアム 代表理事 兼 アクセンチュア イノベーションセンター福島 センター共同統括 海老原城一氏が今年度、新たに始まる新たなデジタルサービスについて紹介した。

会津若松市の「複数分野のデータ連携による共助型スマートシティ推進事業」は、データ連携基盤である都市OSを活用して、ヘルスケア、行政、観光、防災、決済、食・農の6分野で市民向けにデジタルサービスを提供する。新たに購買履歴データ、災害時安否情報、ヘルスケアデータなど、17種類のデータアセットと、市の基幹系システムなど3つの外部システムが都市OSに接続される。令和4年度は6分野で16のスマートシティサービスが新たに接続された。オプトイン(事前承諾)による分野を超えたデータ連携により、市民一人ひとりにパーソナライズされたサービスを提供できるとした。

食・農分野 「需給マッチングサービス」である凸版印刷の「ジモノミッケ!」は、農産物の生産者と、宿泊施設や介護施設、飲食店といった地域の実需者をマッチングするサービスだ。3月下旬より精算機能や情報可視化機能を拡充する。3月下旬からデジタル地域通貨「会津コイン」による精算機能を追加し、市況価格や取引情報可視化機能を拡充する。また、情報可視化機能ではダッシュボード画面の提供をスタートする。会津若松市では、生産者から実需者に直接つながる新しい流通網を構築することで、生産者の所得向上や地産地消の促進につなげていきたいとした。

デジタル観光案内では、地域の観光情報を一元的に発信する観光支援サービス「Visitory(ビジトリー)」を拡充する。2022年10月に飲食店向けに先行リリースしたが、3月22日に観光施設、土産物店、交通などに対象を拡大している。また、一部の飲食店では開店・閉店・満席などの情報を配信している。今後は、対象を教育旅行や一般観光に拡大する予定だ。

防災分野では、 「位置情報を活用したデジタル防災サービス」 を地域情報ポータル「会津若松+」のアプリ上で、3月下旬より本格提供を開始する。「デジタル防災」は防災用品の設定や災害情報の通知、家族への安否情報の共有などの機能を提供する。在宅ケア支援アプリ「ケアエール」と連携することで、会津市民でケアが必要な人の安否情報など状況共有を通じて、避難行動をサポートしていく。

ヘルスケア分野の「つなげるデータ医療」は、アプリに記録した日々のライフログ(体重・血圧等)のデータをつなぎ、市民や医療従事者で共有できる。3月22日より、一部の医療機関の受診履歴を市民もスマートフォンで確認できるようになった。

「つながる遠隔医療」は、市民のオプトインに基づき、オンライン服薬指導や健康相談に対応できるサービス「HELPO(ヘルポ)」を3月15日に新たにリリースしている。高血圧、慢性循環器疾患に特化したオンライン健康相談サービスである「テレメディーズBP」と、それ以外の診療や服薬指導などにも活用可能な「HELPO」が提供されることで、市民一人ひとりの生活習慣に寄り添った健康管理を支援するそうだ。

「デジタル行政手続き」の「ゆびなびプラス」は、窓口のタブレットや市民のスマートフォンを利用して、転入・転出・転居およびそれらに伴う各種手続きのデジタル申請を2022年10月3日から提供開始している。3月22日には、マイナンバーカードの本人確認機能を活用し、本人同意を行ったうえで、行政が保有している情報を利用するサービスを開始した。3月末までには、対象手続きと取り扱い窓口をさらに拡充し、全22部署で当該システムを順次本稼働予定だ。

決済分野の 「地域課題解決型デジタル地域通貨」 は、お金やレシートを管理できるウォレットアプリ「会津財布」に、会津コインを実装した。会津コイン導入店舗の掲載や、銀行口座からの会津コインチャージは、2023年4月から本格的に開始する(後述)。

持続可能なビジネスモデル構築へ
「三方良し」の地域社会実現へ

今後は、地域エコシステムによる継続可能なビジネスモデルを目指す。サービスや分野ごとに閉じた従来型のビジネスモデルでは採算をとることが難しい事業もあるが、3月現在91社が加盟するAiCTコンソーシアムなどと協力し、サービスや分野を超えて利益とコストのバランスを取りながら維持・運用することが必要だとした。

会津若松市、公立大学法人会津大学、一般社団法人スーパーシティAiCTコンソーシアムは、2022年4月20日、「スマートシティ会津若松」の深化・発展に向けた新たな推進体制の整備として3者による基本協定を締結している。3者が相互に連携して「スマートシティ会津若松」の取組を推進し、将来にわたって持続力と回復力のある力強い地域社会と、安心して暮らすことのできるまちづくりを目指している。市民による地域へのオプトインに基づくデータ提供を起点とし、地域・市民・企業にメリット・納得感がある「三方良し」の考え方を基軸とした地域社会の実現を目指すという。会津若松市 市長 室井照平氏は「地域の担い手の稼ぐ力を向上させる。その先に実際に市民に便利なサービスが実現できる」と話す。

会津コインの提供形態は? 
将来のデジタル通貨へのインプットも視野に

なお、AiCTコンソーシアム決済WGリーダーのTISでは、スマートシティ導入を進める地域向けの共通決済サービス「ID決済プラットフォーム」を活用したデジタル財布「会津財布」を提供してきた。会津財布では、東芝グループの電子レシートサービス「スマートレシート」、みずほ銀行が提供しているスマホ送金・決済サービス「J-Coin Pay(ジェイ コイン ペイ)」と連携するなど、サービスの拡充に努めている。4月から開始予定の会津コインはどのような形でサービスを提供するのだろうか?

AiCTコンソーシアム 決済ワーキンググループ統括 TIS 岡山 純也氏

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