2023年4月14日8:00
新たなビジネスの活路を探ってきた百貨店がこぞって進出しているのが、商品を売らない「ショールーミングストア」だ。空きスペースを活用して商品を体験できる売り場を再構築し、スマホを通じた検索や決済に抵抗がない20~30代のユーザーに訴求する。オープンから約1年が過ぎ、各店舗には少しずつ変化が見え始めている。
通販研究所 渡辺友絵
記事のポイント!
①「明日見世」はECサイトから購入・決済
②「asumise自動販売機」でキャッシュレス販売
③そごう・西武の「CHOOSEBASE SHIBUYA」も進化
④アプリの事前注文で商品を受け取り可能に
⑤髙島屋の「Meetz STORE」は「ギフト」機能が差別化に
⑥海外の店舗への出店も視野に
⑦課題も見え始める
⑧「ショールーミングストア」の現状の位置づけ
自販機での商品販売に着手した大丸松坂屋
大丸松坂屋百貨店が運営するD2Cブランド向けのショールーミングストア「明日見世」は、2021年10月に東京大丸店にオープン。テーマに沿って3カ月ごとにブランドを入れ替えて展開してきた。
“売らない”をコンセプトに店舗には商品の見本だけを置き、利用者には体験の機会を提供。気に入れば商品のQRコードを読み込み、ECサイトから購入・決済してもらうという仕組みだ。出店ブランドから商品の講習を受けたアンバサダーが常駐し、来店者に機能性や開発ストーリー説明する。
これまで百貨店とは縁が薄かった20~30代のZ世代やミレニアム世代をターゲットとして想定。2022年1月には、ブランドのブースごとにAI顔認証ソフトを搭載する専用カメラを設置した。ユーザーの年齢や性別、滞在時間、立ち止まる位置、時間帯別の来店者数などを算出してデータ化し、ブランドにフィードバックする。
さらに2023年3月に新たな取り組みとして導入したのが、人気商品を搭載する「asumise自動販売機」だ。これまで「明日見世」で特に反響が高かった雑貨などを中心に6ブランド・全15商品を自動販売機で販売し、決済後そのまま持ち帰れるようにした。「その場で購入したい」「以前あった商品が欲しい」といった声に応えたという。
通常の自動販売機と違うのは、タッチパネルで商品選択した後に商品を紹介する画面に遷移し、商品の画像を表示して訴求力を高められる点。自動販売機で売る商品はショールーム内に専用展示コーナーを設け、実物を確認することができる。購入は各種クレジットカードや電子マネーによるキャッシュレス決済となる。
そごう・西武は期間限定ストアやカフェもオープン
そごう・西武が2021年9月に西武渋谷店に新設した「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)」も進化している。店内にスタッフはおらず商品には値札もないというショールーミングストアで、来店者がスマホをQRコードにかざすと価格や商品詳細がアップされる。購入する場合はスマホ内の専用カートに入れ、手ぶらのまま店内を回遊してレジで決済。配送か持ち帰りかを選べる仕組みだ。
2022年2月には、「CHOOSEBASE SHIBUYA」の仕組みを取り入れた無人販売の期間限定ストアを西武渋谷店の本館内に設置。店頭にあるバッグやアクセサリーなどのQRコードを読み取ってスマホで購入・決済し、持ち帰りか配送を選択できるようにした。
来店者が選んだ豆やフレーバーで淹れたコーヒーを提供する完全キャッシュレスのパーソナライズドカフェも、同年7月に「CHOOSEBASE SHIBUYA」内にオープン。モバイルオーダーアプリによる事前注文も可能で、カフェ目当てに来場する人もいるようだ。将来的にはD2Cブランドオーナーなどが集う交流の場を目指しているという。
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