「PayPay」がオフライン決済機能を搭載した成果は? 能登半島地震の被災地で石川除く全国でのオフライン決済比率と比較して8.5倍に

2024年4月26日8:00

PayPayは2023年7月、キャッシュレス決済サービス「PayPay」に、通信障害時やインターネット回線が使用できないなど、スマートフォンがオフラインの状況下においても、決済が可能となる機能を搭載した。23年12月には、決済金額と決済回数の上限が拡大するなど使い勝手を高めており、2024年1月に発生した能登半島地震の被災地でも、オフライン支払いでの決済の割合が多い時で(被災地である)石川県を除く全国でのオフライン決済比率と比較して8.5倍になるなど、災害時に使えることを証明した。

国内主要コード決済サービス初
複数の特許を出願中

オフライン決済機能の提供により、通信障害時はもちろん、地下や多くの人が集まるイベント会場などの通信が不安定な状況でも、「PayPay残高」または「PayPayクレジット(旧あと払い)」で決済(決済金額や回数に上限あり)ができる。この機能は、国内の主要コード決済サービスとしては業界初(一般社団法人キャッシュレス推進協議会にデータ提供している主要な国内コード決済サービス事業者の中で)となり、複数の特許を出願中だ。

スマートフォンの回線速度が遅い場合やオフラインの状況の場合、「オフライン支払いモード」が表示され、ユーザーが提示したコード決済画面を店側に読み込んでもらうことで決済が完了する。この機能は、ストアスキャン方式(ユーザーがスマホなどに表示した決済画面を加盟店が読み取る方式)の加盟店でのみ利用可能で、利用にあたっては店舗の決済端末がオンラインである必要がある。

オフライン決済機能を利用して決済した場合、ユーザーのアプリは決済完了画面に切り替わらず、決済音も鳴らない。通信環境が安定した際に、プッシュ通知や決済履歴などで決済情報を確認できる。通常の通信回線を介したコードの表示にかかる時間が3 秒を超えると、自動的にオフライン決済機能を利用した決済が可能となる仕組みだ。

「オフライン支払いモード」

予想を上回る利用件数に対応
上限額引き上げ利便性向上

当初は、オフライン決済の1回の決済額は最大5000円で1日2回までなど、決済金額および回数の上限設定があった。しかし、「半年が経過し、オフライン決済の利用は1日平均約10万回と想定の2、3倍使われていることが分かり、しかも、決済が失敗した理由の多くが上限額を超えたケースだった」(コーポレートコミュニケーション 広報 細野透子氏)ため、利便性の向上のために2023年12月18日から、上限額の引き上げを行った。

変更前の上限が決済金額1回5,000円、過去24時間で1万円、過去30日間で5万円、決済回数は過去24時間で2回、過去30日間で10回だった。変更後の上限は、決済金額が1回5万円、決済回数は過去24時間で5回、過去30日間で10回となっている。なお、保有している残高およびクレジットの利用上限を超えての決済はできない。

「オフライン支払いモード」の各種上限が拡大したことにより、通信障害時はもちろん、地下や多くの人が集まるイベント会場などの通信が不安定な状況でもより便利に「PayPay」を利用できるようになった。同部 中川望氏は「実際に、イベント会場でオフライン決済を使って支払った反響は、XなどのSNSの書き込みなどで確認していて、ユーザーの評判は良いです」と話す。

携帯電話キャリア各社が連携
オフラインになりづらい環境整備を検討

スマートフォンを活用したコード決済サービスは、一般的に携帯電話の通信障害時や電波が届かない場所では決済ができず、通信ができない状況下においては他の決済手段を使用する必要があった。最近はトラブルに備え、ソフトバンクなど携帯電話のキャリア同士が連携し、自社の回線がつながらなくなった場合の備えとして、他社の回線が利用できるサービスの提供や通信障害時などの緊急時に無料Wi-Fiを提供する検討などが進んでいる。これらの取り組みが進むことで、オフラインになりづらく、コード決済で安定的に決済できる環境の整備にもつながっている。

一方で、1月1日の令和6年能登半島地震による携帯電話の通信障害は、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルなど通信事業者各社で起こり、完全復旧までに時間を要した。地震や津波の影響によって、回線が切断されたり、電源が使用不可になったため、通信障害が引き起こされたとみている。電源使用不可については、基地局周辺の停電が原因だったが、予備バッテリーで運用していた基地局も停電が長引いた場合には蓄電池の容量がなくなり、やがて運用できなくなった。

こうした中で、通信回線や電力供給システムの復旧を待つ間の対策として、コード決済サービスのオフライン決済機能は効果的な手段であると考えられている。2022年には、コード決済の決済金額および決済回数が、初めて電子マネーを上回った。決済の多様化が進む中、日常生活における決済シーンでコード決済が浸透し、クレジットカードに次ぐキャッシュレス手段として定着している。中でも、PayPayは国内コード決済において、約3分の2のシェアを占めており、決済回数・登録ユーザーともに最も多いという。PayPayは社会インフラとして、決済が滞りなく行えるサービスを提供することが重要だと考え、オフライン決済機能を開発した。PayPayが提供するキャッシュレス決済サービス「PayPay」は、大型チェーン店はもちろん、中小規模の店舗や、自動販売機、タクシー、公共交通機関などへの支払いまで、日本全国に拡大し続けている。オンラインサービスでの支払いや公共料金の請求書払いなど、さまざまな決済シーンでも利用できる。細野氏は「PayPayは今後も、ユーザーはもちろん、あらゆる小売店やサービス事業者にキャッシュレス決済の利便性を提供し、日本全国どこでも安心してキャッシュレスで買い物ができる世界の実現を目指しています」と話している。

 

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