2012年2月6日8:00
CRM施策の現況
選抜された12名のSP-PROが手探りで営業スタイルを確立
同社の「SP-PRO(スマートカーライフプランナープロ)」に関する取り組みは暗中模索とも言える状況で始まった。
まず、800名近い全国直営店の営業担当者の中から、営業経験が豊富で高い実績を残している12名を選抜・指名。スタートに当たっては、毎月本部で開催している店長会議に招聘し、全国の店長に紹介するとともに、代表取締役社長および担当執行役員が、新たな営業担当職の内容や意義についての説明を行った。
ただし、スタート時点において固まっていたのは、基本的に①従来、月間50~60件行っていた来店客(新規客)への対応を20件までに制限すること、②それ以外は過去の取引客からリピートや紹介を通じて商談しなければならないこと、③リピート・紹介による販売については新規客に対する販売の2倍の評価をすることのみ。
実際にどのようにリピート・紹介営業を行うかは、選抜された12名のSP-PROに委ねられていた。
12名のSP-PROはそれぞれ手探りで行動を開始しようとしたが、共通してぶつかった最初の壁は「お客様の顔が思い出せない」ことだった。それまで、“来店客との商談をいかに早く成約するか”という観点で営業活動を行い、営業実績を上げていた彼らにとって、商談は1回限り、数時間でクローズすることが大半であったため、データベース上の取引履歴を見ても、顧客の顔をはっきりと思い出せなかったのだ。
そこで、まず着手したのは、営業活動のターゲットとなる顧客リストづくり。担当者によって違いはあるものの、1カ月程度を費やしてデータベース情報などを基にリストを作成し、やっと実際の営業活動のスタートラインに立った。
営業スタイルも担当者により異なるが、基本は訪問や電話による自動車保有・使用状況の把握と買取・販売ニーズの聴取。これらを地道に行うことで、徐々に成果につなげていった。
新規客への対応も変化
過去の取引客のリピート・紹介を目指す営業活動を開始したSP-PRO12名は、それまで顧客との関係性がいかに薄かったかを痛感。そのことは、月間20件までに制限された新規客への対応をも変化させた。
例えば、新規客の中には「当面は売るつもりはないが、とりあえず買取価格を知りたい」「買取価格を知ってから検討したい」という層も数多く存在するが、従来はこれらの層に対しても、その場での決断を促すような商談を行うことが少なからずあった。しかし、その場合、商談の成否にかかわらず、顧客にとっては「押し付けられた」という感情が残ってしまい、特に、商談が成立しなかった場合、実際にニーズが発生した時点でも再来店をためらってしまうことになりかねない。ましてや、顧客との信頼関係の構築などは望むべくもない。
このような認識からSP-PRO12名の新規客への対応は、まず顧客のニーズがどこにあるのかを把握することに重点を置き、丁寧に商談を進めるスタイルに変化。顧客が急いでいる場合を除いて、3回程度の商談を行い、成約に至らない場合でも、以降、継続的に連絡が取れる状態で商談をクローズすることを目指すようになった。
SP-PROを101名体制に拡大
同社では、2009年4月からスタートしたSP-PROの活動が一定の成果を上げているという認識から、同年11月、第2期として89名を増員。総勢101名体制での取り組みを開始した。
増員に当たっては2カ月半前の8月中旬に候補者約200名を社内に告知。その後、絞り込みを行い、89名を選抜した。さらに、スタート時には本社で代表取締役社長、担当執行役員、全国の店長と第1期12名のSP-PROを交えたキックオフ・ミーティングを開催。第1期のSP-PROが自らの体験談を紹介し、新たなSP-PROに営業方法をレクチャーした。
なお、現在、SP-PROの過去の取引客に対する営業活動は、訪問、電話のほか、ハガキやeメールなどでも行われている。ハガキやeメールの文面などは営業担当者各自が作成するかたちであるが、営業担当者間での情報交換も活発化しており、社内イントラネット上に「ひな型」が用意されるなど、全社的な情報共有も進みつつあるとのことだ。
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