2018年6月29日7:22
少額の資金ニーズの旅行市場を開拓
インターネットを使ったビジネスの企画・開発・運営を手掛けるバンクは、10万円までの旅行商品なら、手持ちのお金がなくても、ボタンひとつで先に旅行を楽しめる、後払い専用の旅行代理店アプリ「TRAVEL Now(トラベルナウ)」をスタートした。立ち上げ当初は20~30代をターゲットにするが、少額の資金ニーズは年齢を問わず、幅広い世代にあると考え、近い将来は幅広い世代への浸透を目指す。(ライター 小島清利)
CASHのノウハウを旅行アプリに展開
バンクは、手元にある商品を撮影してアプリから送信すると、その査定額の現金が振り込まれる質屋のようなアプリ「CASH(キャッシュ)」を2017年6月からスタートした。光本勇介CEO(最高経営責任者)は都内の本社で開いた記者会見で、「CASHのサービス開始からちょうど1年が経過したタイミングで、CASHのノウハウを生かした新サービスを展開する」と宣言した。
新サービス「TRAVEL Now」は、後払い専用の旅行代理店アプリ。10万円までの旅行であれば、ただちに旅行の予約を完了できる仕組み。具体的には、行きたい場所、行きたい日、ホテルなどを選んでタップするだけで、その瞬間に旅行商品が手に入る。面倒な審査や手続きは不要だ。
支払いは2カ月後にコンビニで
「航空券とホテル」「高速・深夜バス」や、日帰りで楽しめる「遊び・体験」など、国内・海外旅行を含む約4,000種類の旅行商品が揃う。旅行商品については、オンライン旅行事業を手掛けるエボラブルアジアをはじめ、複数の旅行会社と提携し、提供する。
支払いは2か月後。予約後、コンビニエンスストアで支払う通知ハガキが発送される。未払い時は、支払い通知が再度送られる。引き続き支払いがない場合は、以後のサービスの利用ができなくなるという。
「今お金がない」新たなニーズに注目
BANKがCASHを提供する中で、少額の資金ニーズは非常に大きく、1つのサービスだけでなく、さまざまな角度から、あらゆる潜在的な少額ニーズに対応する必要があると判断し、まず、旅行サービスへと幅を広げた。
光本CEOは「旅行市場は大きいが、BANKが手掛けるアプリは、新しい需要を掘り起こす狙いだ」と話す。従来の旅行商品はお金のある人が、商品を選び、旅行を楽しむという消費行動だが、「TRAVEL Now」は、「休みをとれたけど、お金がないのであきらめていた」という新たなタイプの旅行客を囲い込む。
ターゲットは「まずは若者」次にボリューム市場へ
BANKは、CASHの成功で、従業員数が60人まで拡大した。1年間はCASHの事業にフォーカスしてきたが、組織に余力ができ、旅行アプリの事業への挑戦にとりかかった。旅行事業の要員は10人程度。アイデアを思いついてから、モックができるまでわずか1日だったという。開発期間は約3カ月。
バンクの高田加奈子COO(最高執行責任者)は「今旅行に行ける、というコンセプトなので、アプリ内で旅行を見つけたり、申し込んだりするまでを極力簡単に使えるように設計している」と説明する。
一般の旅行サイトは入力項目が多いが、そうした手間を減らし、パッと見た瞬間にすぐ情報が見えるようにデザインをすることで、高齢者を含むデジタル機器が使い慣れていない世代を含む幅広い世代にユーザー層を広げていく戦略だ。
「人を信じる」リスクは織り込み済み
「TRAVEL Now」は「CASH」と同様に性善説に基づいたサービスである。CASHの場合も、不正ユーザーは一定程度いたが、1年間で次第に不正は減っていったといい、TRAVEL Nowの不正使用に関するリスクも織り込み済みとしている。
光本CEOは「CASHも、TRAVEL Nowも新しいサービスなので、あえて数値目標は設けていないが、少額資金のニーズは、旅行にも必ずあると思っている」と話す。