2018年9月12日8:00
国内では、Suicaやnanaco、WAONといった電子マネーサービスが登場し、定着している。海外では、クレジットカードやデビットカードのEMVスタンダードのICカード化により、国際標準規格のType A/B準拠の非接触決済サービスが展開されている。「フューチャーペイメント要覧」の“はじめに”から、IC電子マネーとコンタクトレスペイメントについて振り返りたい。
1990年代にさまざまな電子マネープロジェクトが立ち上がる
D.チャウム氏が暗号通貨であり、仮想通貨であるDigicashを設立したのは1990年である。1990年代にはインターネットの商業化が、アメリカを中心として始まり、SETやサイバーキャッシュなどのクレジットカード利用の電子化を図る「クレジットカード応用型」やNet CheckやQuicken、Microsoft Moneyなどの預金通貨を決済手段に利用する「預金通貨利用型」、VISA CashやベルギーのProton、シンガポールのNETSなどのプリペイドカード機能を向上させた「プリペイドカード型」、MondexやDigicashなどの転々流通が可能な「現金通貨模倣型」と大きく4つのカテゴリーに分けられる電子マネープロジェクトが欧米や日本などで展開され始めた。
1990年代中頃、欧米では急増するデビットカード決済のうち、主に少額決済の代替を対象としたプリペイドカード型の電子マネーが注目を集めるようになった。こうした中、VISAのVISA CashやマスターカードのMondexといったコンタクトICカードを用いたIC電子マネーの国際ベースプロジェクトがスタートした。一方、ナショナルベースのIC電子マネープロジェクトには、ドイツのGerte Carte やデンマークのDanmont、スイスのCash、オランダのChipknip、イタリアのMiniPayオンラインデビットカードが普及していたヨーロッパを中心にIC電子マネーの取り組みが行われていた。また、日本では当時デビットカードは全く普及していなかったものの、クレジットカードへのIC電子マネーの搭載も検討されていて、コインベースの少額決済の電子化を図るため、1998年から1999年にかけて、コンタクトICカードを用いた首都圏電子マネー実験(渋谷実験)や郵便貯金ICカード化実証実験(大宮実験)、NTT電子現金実験(新宿実験)などいくつかのIC電子マネープロジェクトの実証実験が行われた。
2000年代にEMVスタンダードの非接触IC決済の取り組み、日本でIC電子マネーの導入開始
クレジットカードやデビットカードに採用されていた磁気カードとPINによる本人認証は、1990年代後半からヨーロッパやアジアを中心にスキミングなどによる偽造カードによるカード不正を引き起こすようになった。1990年代初めにフランスではカード不正が横行し、ICカードによってカード不正を克服した成功体験を有していた。磁気カードとPINによる本人認証の脆弱性は予見され、ユーロペイ、マスターカード、VISAによるEMVスタンダードのICカードによるクレジットカードやデビットカードなどのペイメントカードのセキュリティ対策が練られていた。1998年には、EMVの最初の規格が公表されている。
2000年代には、インターネットの普及に伴うインターネット決済やIC電子マネーの取り組み、クレジットカードやデビットカードのEMVスタンダードのICカード化、PayPass(現・Mastercard Contactless)やVisa payWave(日本ではVisaのタッチ決済)などのコンタクトレスペイメントの取り組みが行われている。
1999年にヨーロッパで、決済通貨としてのユーロが導入され、2002年にはユーロ紙幣、ユーロ硬貨が発行され、SEPA(Single Euro Payments Area)が立ち上げられた。また、中国では2002年3月に人民銀行の支援を受けて中国銀聯(China Union Pay)が設立されている。2007年~09年にはサブプライムローンとリーマンショックによる世界同時不況が起きている。日本では、2001年からIC乗車券のSuicaやコンタクトレスペイメントのIC電子マネーのnanacoやWAONなどが続々とが発行されている。