2013年12月26日8:30
ニッポン企業の“おもてなし力”を検証する
総 論:マニュアルの“先”にある“おもてなし”の実践が求められる
定型化が難しい“おもてなし”を実践することは容易ではないが、だからこそ企業の大きな強みとなる。“おもてなし”の強化は、企業全体の傾聴力・洞察力を向上させる取り組みでもある。その実現のためには、“おもてなし”マインドの高い人材の採用・育成とともに、その実行をサポートする仕組みの構築が求められよう。
“おもてなし”ブームの中で問われる企業のマーケティングにおける“おもてなし”のあり方
オリンピック招致活動の最終プレゼンで滝川クリステルさんが紹介した「お・も・て・な・し」が話題となったことで、改めて注目を集めている日本の“おもてなし”。2013年の「ユーキャン新語流行語大賞」では年間大賞にも選ばれており、“おもてなし”ブームは当分続きそうだ。
しかし、“おもてなし”の意味を正確に理解している人は意外と少ないように思われる。言語的には動詞である「もてなす」の連用形名詞「もてなし」に丁寧語の接頭辞「お」が付いたものということだが、そもそも「もてなす」という動詞自体、正確な意味を説明することは難しい。
今回の特集でインタビューにご協力いただいた京都大学 経営管理専門職大学院 教授の日置弘一郎氏は、「もてなす」=「以て為す」であり、「“何”を以て“何”を為すか」がブランクになっている点が特徴的であるとしている。例えば、欧米から来たホテル的なサービスでは、“こういうサービス資源があるからこういう風に遇する”という枠組みがきちんとでき上がっているのに対して、非定型である点が日本的であるというのだ。
確かに“おもてなし”は、「“おもてなし”の心」など、精神的な部分に結び付けられることが多く、その真骨頂は「“おもてなし”しよう」という心構えや姿勢にあるのかもしれない。
しかし、企業が広義のマーケティング活動の一環として、組織としてお客さまに“おもてなし”を提供しようとする場合においては、心構えや姿勢だけでなく、準備から実践に至るまでのプロセスを明確化することが必要だろう。そして、短期的な投資対効果までは求めないとしても、取り組みがマーケティングの最終的な目的である中長期的な“顧客づくり”にどの程度貢献するのかを検証することも要求されよう。
今回の特集では、“おもてなし”の向上に取り組む企業のケーススタディを中心に、ニッポン企業のマーケティングにおける“おもてなし”の現状とあるべき方向性を探った。