2021年3月22日8:00
全国展開1カ月で都市部での利用増、顧客とスタッフの負担減へ
ドイツポストDHLグループの国際物流大手DHLの日本法人、DHLジャパンは2020年12月から、集配時に対面での支払いを希望する利用者向けにキャッシュレス決済を導入した。持ち運びが便利なスマホ決済サービスを用いて、これまで現金のみだった輸送費などの支払いをクレジットカードや電子マネー、QRコード決済でも可能とした。顧客の利便性向上はもちろん、配送スタッフらの業務効率化にもつなげる。
顧客と従業員の新型コロナ対策も
実証実験で導入に手ごたえ
世界220以上の国・地域を結ぶネットワークを持つDHLの日本法人であるDHLジャパン。日本国内には約30拠点があり、国際宅配便や貨物便のスピード配送に取り組んでいる。コロナ禍の「巣ごもり需要」で海外のネットショップで買い物をする人が増え、国際宅配便の利用は伸びている。
今回新たに導入した「楽天ペイ(実店舗決済)」は、クレジットカード主要7ブランド、交通系ICカードや楽天Edy、iDなどの電子マネー、QRコード決済に対応。宅配便の配送スタッフは、社有スマートフォンと楽天ペイの専用カードリーダーをBluetooth(ブルートゥース)で接続し、利用者が選んだ方法で支払ってもらう。
同社によると、宅配業界では、集配の際は現金払いが主流で、キャッシュレス決済は一般的ではなかった。しかし、日本国内にもキャッシュレス化の波が押し寄せ、同社も1、2年ほど前から、顧客の利便性を高め、配送スタッフの業務を効率化する手段の1つとして検討するようになった。
DHLジャパン 業務部・グランドオペレーション プロジェクトマネージャー 森宗一郎氏は「現金の決済では、ドライバーにお釣りの準備や、入金の際の回収代金の確認などに手間がかかるため、こうした手間を削減したいと考えていました」と話す。新型コロナウイルスの感染拡大のニュースが連日大きく取り上げられる中、非接触のQRコード決済は、顧客と従業員の安全に配慮できるのではないかという考えもあった。
そこで、事業所と客先の両方でキャッシュレス決済ができ、決済の記録が残せるメモ機能がある楽天ペイの導入を検討。2020年8月から個人客が多い東京都の世田谷区、目黒区、港区などで実証実験を行った。配送スタッフから利用者にキャッシュレス決済を告知してもらったところ、好評だった。森氏は「楽天ペイは世の中に浸透していて安心感があります。信頼という部分でも好評をいただいたのではないでしょうか」と話す。決済手段別では、クレジットカードの利用が最も多く、次いで電子マネー、その次がQRコード決済だった。
配送スタッフからは「キャッシュレス決済をすることで、現金払いの時よりもかなり時間が短縮された」などの声が寄せられ、業務効率化に一定の効果が見られた。これまでは、配送スタッフが担当エリアを回る際に十分なお釣りを用意していても、ある客先でお釣りが足りなくなり、お金を崩してから再度客先を訪問するケースがまれに発生していた。スタッフも楽天ペイを利用したことがあるため、オペレーション面もスムーズだったという。
同社は実証実験の結果を受け、楽天ペイメントから楽天ペイの専用カードリーダー530台を購入。徐々に試験運用のエリアを広げ、2020年12月から全国展開に踏み切った。
都市部中心に1日100件前後の利用
将来は完全キャッシュレス目指す
森氏によると2021年1月現在、都市部、特に東京、大阪、名古屋を中心に楽天ペイの利用客が増えている。詳しい集計はこれからだが、全国で1日100件前後利用されているという。決済の際に、楽天グループのECサイト「楽天市場」での買い物などで貯まる楽天ポイントを利用する客もいる。森氏は「楽天ポイントで決済ができるなどの部分もお客様の利便性につながるのでは」と期待する。
同社の代表取締役社長、トニー・カーン氏は全国展開の際に「決済サービスの多様化をきっかけに、お客様にはDHLのスピードと利便性を、ビジネスや生活の場面で体験していただけたらこの上ない喜びです」とコメントを出した。同社が目指すのは完全キャッシュレス。森氏は「お客様の利便性を上げ、社員の手間や労力をできる限り削減するため、日々いろいろなことを検討して取り組んでいきたいです。運送業界の中で先行してキャッシュレス化を進めていきたい」と意気込む。
※カード決済&リテールサービスの強化書2021より