アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(5)

2011年2月15日7:45

アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(5)

YOUnique

(人と違うパーソナリティ)

インターネットの登場で多くの商品が見つけやすく、手に入りやすくなった。大衆向けのブランド品を買って安心していた時代は過ぎ、他にはあまり見られない個性的な商品やショッピング体験を通して個性を主張するようになってきている。

日本は、高級ブランドがそのステータスを保ちながら大衆市場で成功できる「マス・ラグジュアリー」市場だと見なされてきた。Bain & Company(2010年10月)によると、日本の高級品市場は2010年に1%縮小した。それにもかかわらず、世界第2位の富裕国である(Credit Suisse Research Institute 2010年10月)。さらに2009年末時点で日本は、アジア太平洋地域の個人富裕層(HNWIs)の半数以上(54.6%)を占めているとBain & Companyは伝えている(2010年9月)。

これまでは、一流ブランドを所有することは、経済的な成功者や日本の中産階級には必要不可欠とされてきた。実際、消費者の3分の1以上(35%)は高級品を購入する際には有名ブランドを選ぶと回答している。しかし注目すべき点として、それより多い46%は希少性を求めるとしている。

従来の容易に予測できた日本の消費者は消えつつある。他の年齢層に比べて最もブランドネームに影響されないのが18~24歳の消費者である。彼らは有名ブランドから離れ、ますます個性を求めるようになり、より洗練された消費者意識を象徴している。対象者のほぼ3分の1(30%)は、自分らしさが表現できることを企業に求めるとしていて、これは、信頼できること、責任を果たすこと、低価格であることに続いて4番目に高い回答となった。一方、日本の消費者の23%は、自分たちは協調的であると認識しており、企業に自分たちの意見やアイデアを反映してほしいと望んでいる。

最近の話題では、Pentaxがナノブロック(レゴのような、ブロックのメーカー)と共同で好きなように組み合わせられる着せ替え用フェース付きのカメラを製作した。ユニクロのUT ストアやTシャツを専門に扱うグラニフは、真似るのが難しく珍しいスタイルを打ち出している。また、企業は地域限定商品などで希少性や個性を強調する必要が出てきた。Chanelは東京限定のメークアップシリーズを発売、McDonald’sやNestléなどは地域限定の商品を打ち出している。Kit Katは、焼きとうもろこしやカマンベールなど、地域の名産を取り入れた19種の新商品を発表し、その特定の地域でのみ販売している。

この最先端の流れとして、映画『Minority Report』に出てくるような看板が「デジタルサイネージジャパン」のイベントに登場した。顔をスキャンすることで年齢と性別を特定し、個人に合った広告を映し出すという。JR東日本が最近導入した自動販売機も、利用者の性別と年齢を判断しその人に合った商品を勧めるという同様の機能を備えている。

消費者は他にはない商品を求めるようになると同時に、ユニークで、個人的な体験型ショッピングも求めるようになっている。18~24歳までの5人に1人(20%)が購入に一番影響する社会的要因として、さまざまなデザインや商品、イベントを試みるショップの普及を挙げており、これは2番目に多い答えとなっている。

マッキンゼーのブライアン・ソーズバーグ氏は「現在、日本で成功している企業は、刺激的で個性的な小売スペースを消費者に提供している。人々がApple Storeへ行くのは、単に商品を購入するためだけでなく、サービスを受けるためや新しい製品に触れるためでもある。同様に、日本におけるIkea、Costco、Zaraなどの小売業者は、日本の消費意欲をかき立てる極意を身に付けたのだ」と述べている。

nendoが手がけたトウキョウ ベイビー カフェ(東京・青山) Tokyo baby café by Nendo, Aoyama, Tokyo

昨年後半に、Ace Hotelは欧米のブランドと共同で、ポップアップ・ストア(期間限定店舗)をオープンした。Adidasが最近オープンしたRunbaseは、ジム設備、シャワー、ショップ、そしてランニングアドバイザーを完備した画期的なAdidasブランドのランニング施設である。

デザイン事務所Nendoは、トウキョウベビー カフェを新しくデザインした。子どもと大人両者を意識したプレイスペースとダイニングスペースには、大人用の普通サイズの家具とそっくり同じデザインの子供サイズの家具を配置している。

消費者が個性を重要視するようになり、また現在オンラインショッピングが占める5%のシェアは2015年までに2倍になると予測されている。この2つの傾向を踏まえて、企業・ブランドは、希少性や個性に焦点をあてることで商品の差別化を図り、魅力的かつ個人的な体験を提供できる小売スペースを作り出すことが必要だ。

消費者ケーススタディー: YOUnique

ササキユキは33歳のモデル兼OL である。独身で、品川にある東京湾を見下ろす新しい高層マンションに住んでいる。

ユキは、他人と同じではない自分なりのスタイルを持っている。「それはとても大事なことです。私の見た目やスタイルは、私という人物を表します。ファッションはその人を表現する上で大切です」と彼女は言う。そして、高価な宝石やこれ見よがしのアイテムを身に付けるよりはむしろ、ユキのスタイルは落ち着いている。「シンプルな服を身に付けていると、その人本来の魅力が出てきます」とも彼女は述べる。

ユキはデザイナーブランドを見たりするのは好きだが、買い物をするときは慎重で、ブランドネームやそのロゴマークのためだけに購入することはない。ユキが買物をするのは専門店や比較的小さめの個性的なショップがほとんどで、日本では渋谷の109、ニューヨークではALDO がお気に入りである。

リンジー・ローハンやケイト・モスなど米国や英国のセレブたちが、ユキのファッションセンスに影響を与えているのも事実だ。

「あの人たちは、何を着ても心地良さそうにしています。この点が日本と欧米のスタイルの大きな違いです。リラックス感が女性の自然なセクシーさを引き出すのです」

彼女は、彼女の友人たちはもっと楽な格好を普段するべきだと言う。そうすれば特別な時のドレスアップが楽しめると考えているからだ。

「それは人生のようなものです」とユキは言う。

「いつもパーティーばかりではありません。日本の女の子は、ただきれいでいることばかり気にしていないで、人生の他のことに目を向けるべきです。そして、皆それぞれ違うのですから自分だけのスタイルを持つことが必要で」

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