沖縄の観光系バスでのタッチ決済導入の成果は? 現金収受の負荷軽減、データ活用にも期待

2022年7月4日9:33

ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は、2022年6月29日に琉球銀行、東京バスを招き、沖縄県の観光系路線バスにおけるVisaのタッチ決済導入の実証実験についての記者説明会を開催した。沖縄県では、令和3年(2021年)度、県内の観光系路線バス5社のバス車内においてVisaのタッチ決済を利用可能とする実証実験を実施しており、実証後も導入を継続している。

ラッピングバスでVisaのタッチ決済が利用できることを訴求

公共交通機関の伸びは38.1倍に
インバウンド受入拡大でさらなる伸びも

説明会ではまず、ビザ・ワールドワイド・ジャパン デジタルソリューションズ ディレクター 今田和成氏がVisaのタッチ決済の取り組みについて紹介した。

日本におけるVisaのキャッシュレス戦略として、安心安全なキャッシュレスの普及、キャッシュレスを推進するために、タッチ決済、トークン、デビットをエンジンと位置付けてビジネスを展開している。タッチ決済は日本で進んでおり、その中でもトランジットはタッチ決済を推進する大きな柱の1つだとした。

2021年と比較した際の2022年第一四半期の全加盟店のタッチ決済の取引件数の伸びとして、公共交通機関が38.1倍となっており、次いで家電が20.3倍、地方自治体が19.6倍となる。コンビニエンスストアは5.3倍、ドラッグストアは5倍、スーパーマーケットは3倍と伸びが少ないが、早くから普及を推進しているためだとした。Visaでは、1日、世界中どこにいても1枚のカードで過ごせる環境を目指しているが、欧州ではその世界が現実化しつつある。

2022年3月末現在、国内のタッチ決済対応端末の設置数は100万台以上、対応カードの発行枚数は7,100万枚となる。公共交通機関の導入は日本でも徐々に進んでいるが、アジアパシフィックではオーストラリア、シンガポールに加え、タイ・バンコクでも進んできている。日本では先に一般加盟店での導入が進んでおり、公共交通機関への導入も徐々に進むとみている。

国内での公共交通機関でのタッチ決済の導入状況として、2021年は12都道府県、10プロジェクトだったが、2022年6月末時点で、18都道府県25プロジェクトが展開されている。7月以降も西武バスが運行する一部の「空港連絡バス」での実証実験が発表されている。プロジェクトでの特徴的な点は、空港路線での運用が多いことだ。「1 つはインバウンドの方々への利便性向上、空港から街中への移動にご期待をいただいています」(今田氏)。インバウンドの受け入れ態勢が増えてきたため、タッチ決済の利用が今後伸びると期待される。

Juniper Researchによる2021年から26年の予測では、タッチ決済の取引件数は+22%、取引金額は+24.7%の伸びを示すとされている。日本はもちろん、世界中でタッチ決済の伸びが続くとした。

駅中や駅周辺の地域経済波及効果として、ロンドンでのタッチ決済乗車券の利用者の一般対比の決済件数は2倍、一般対比の決済金額は+70%、ニューヨークでの駅中・駅周辺でのカード利用件数は+15%伸びていることがわかったという。

インバウンドに関しては、ビジネスは戻り始めており、観光に対する期待も大きい。今後入国の制限が緩和されれば、タッチ決済の利用がさらに伸びていくとみている。交通事業者については、コスト削減、利用率向上、データ活用等のメリットがあるそうだ。

観光系路線バス5社でVisaのタッチ決済を検証
端末機の処理スピードアップは課題に

琉球銀行では、国際ブランドからライセンスを取得し、関連会社で行っていた「カード加盟店業務(アクワイアリング)」を銀行本体で2017年1月17日から開始した(関連記事)。増加が見込まれる県内の電子決済市場での基盤拡大を図り、県経済の成長・インバウンドの増加を収益面で 直接的に取り込んでいる。アクワイアリング業務開始から5年が経過し、全国9,000台、沖縄県内で8,500台を設置している。琉球銀行では、沖縄を“キャッシュレスアイランド”にすべく取り組んでおり、現在沖縄の17市町村と連携してキャッシュレスを推進している。例えば、与那国島は、JALのカウンターでしかキャッシュレスの取り扱いができなかったが、2019年7月に与那国町役場、与那国町商工会などと連携協定を結び、80店の商店のうち約50でキャッシュレス決済ができるようになった。琉球銀行 ペイメント事業部 部長代理 石井誠氏は「日本国内においても一番キャッシュレスが進んでいる地域ではないかと考えています」と話す。

観光系路線バスでの 「Visaのタッチ決済」の実証実験は、沖縄県観光2次交通機能強化事業の一環として実施している。目的として、那覇空港におけるレンタカー貸渡しの混雑や、観光客の利便性向上、持続可能な観光交通への転換などの課題解決に資する取り組みとなり、沖縄県の観光振興課がメインとなり平成30年(2018年)度から複数年度で取り組みを行っている。まず、平成30年度に宮古・八重山圏域、令和元年(2019年)度に本島圏域と2年かけて全県のデータ整備を完了した。これにより、Googleマップでは、県内全公共交通情報の検索が可能になった。令和2年(2020年)度事業では、観光系路線バス5社での動的データの実証を実施し、リアルタイム情報、遅れを含む検索をできるような形となっている。

令和3年(2021年)度は、新たな観光二次交通の利便性向上の取り組みとして、コンタクトレス決済導入に係わる実証実験の実施を行うことに基づいて、2022年2月1日~3月24日までVisaのタッチ決済の実証実験を行うこととなった。実験は令和3年度の事業となり終了したが、バスに設置した端末は継続して事業者のバスに設置されており、令和4年(2022年)度は端末機を増設して実証実験を行う予定だ。

実証実験の目的として、①利用者の利便性向上を通じたバスの利用促進、②非接触決済利用による新型コロナウイルス感染症の感染予防、③運転手の業務負荷の軽減、④インバウンド観光客の利便性の向上、となる。

琉球銀行は、キャッシュレス導入支援、およびバス会社各社との契約取りまとめを実施。小田原機器がキャッシュレス運賃収受機器の提供、三井住友カードがキャッシュレス導入支援、およびsteraプラットフォーム提供、ビザ・ワールドワイド・ ジャパンがVisaのタッチ決済に関するソリューション提供、および認知プロモーションとなっている。

対象バス路線は、沖縄エアポートシャトルの全線、沖縄バスの空港リムジンバス(沖縄バス販売所窓口への導入)、カリー観光の沖縄本島内全線、東京バスの沖縄営業所管内全線、やんばる急行バスの全線となる。

実験でよかった点は、現金以外のキャッシュレスが利用可能になった点だ。沖縄には地域ICカードの「OKICA(オキカ)」があるが、モノレールと一部のバス事業者の利用に限定されている。今後の改善点として、現在はオンラインでオーソリを行うため、若干スピードに課題があり、利便性向上のため端末機の処理スピードアップを挙げた。さらに、乗車時、降車時の2回タッチする方式を求める声もあった。今後の展開として、沖縄バスの空港リムジンバス車内への決済端末機設置、来年以降は宮古、八重山地域の路線バス等への導入を計画している。

東京バスでは観光客の利便性向上に期待
OD(起終点)調査のデータ取得のメリットも

続いて、観光路線バス「ウミカジライナー」における キャッシュレス化の状況について東京バス 取締役統括本部長 佐藤智彦氏が説明した。「ウミカジライナー」は県内の観光地を通る路線であり、国際通りから那覇空港、赤嶺駅、瀬長島ホテル(ウミカジテラス)、沖縄アウトレットモール あしびなー、イーアス沖縄豊崎 (DMMかりゆし水族館)、道の駅いとまん、サザンビーチホテル、糸満市役所を結び、今後は名城ビーチまで延伸する予定だ。

実証実験以前の片道運賃の決済方法は現金または回数券のみだった。Visaのタッチ決済の実証実験では、降車時タブレット端末に表示された「乗車地(バス停)」、人数、支払い方法(Visaのタッチ決済、QRコード決済<PayPay、Alipay>)を選択する。Visaのタッチ決済を選択し、画面上にVisaカードやモバイルなどをタッチする流れだ。バスの車内ではVisaのタッチ決済が使えることを掲示するなど、利用者に認知してもらう取り組みを実施。これまでの利用状況として、キャッシュレス決済件数の平均は日25.2件、最高件数は93件となった。また、キャッシュレス比率は22%となり、最高で38%となった。

東京バスでは、キャッシュレス決済導入の効果として、まずは利用者の利便性向上を挙げた。また、1日50万円ほどの小銭を数えるなど現金集計業務の負担があり、銀行への入金手数料、運賃箱の硬貨投入口の詰まりや紙幣検定のエラー軽減といったことを軽減できる。さらに、OD(起終点)調査のデータ取得を挙げる。各バス停乗降客数をマーケティングデータとしてダイヤ編成等へ活用したり、バス停のある観光施設への情報提供をして活用してもらう。一方、課題として、処理速度のスピードアップを挙げた。通信環境による速度低下の可能性もあり、現在使用しているWi-fiキャリアを変更してテスト予定。また、ツータッチ端末の導入を検討している。さらに、バス車内で案内したり、マンガ等の視覚的に分かり易いもので案内することで、利用者への認知度アップにつなげていく方針だ。

今後の取り組みとして、①沖縄県を訪れる観光客に対する公共交通の利便性向上、コロナ禍における「新しい生活様式」に対応したキャッシュレス化、観光客の動向データを活用したニーズ把握とマーケティングにより公共交通を利用した滞在型・周遊型の旅行需要を創出し、沖縄県の観光業のさらなる発展につなげていきたいという。

琉球銀行は2018年から交通でクレカや電子マネー対応
やんばる急行ではVEGA3000と小田原機器の端末と併用

なお、琉球銀行では、2022年6月15日から、西表島交通、やんばる急行バスが運行する路線バス車内にて、銀聯国際有限公司(UnionPay International、以下UPI)が提供する非接触IC決済である「QuickPass」(クイックパス)の取り扱いを開始している。今回の説明会ではVisaのタッチ決済に関する内容だったため、現状の交通分野の動向、既存の設置端末との兼ね合いなどについて、後日、石井氏に話を聞いた。

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