2023年12月12日8:35
さまざまな業界で、業務効率化、顧客満足度向上のために、個人情報を含むさまざまなデータを活用したいというニーズが高まっている。しかしデータの利活用は、炎上やブランド棄損のリスクと背中合わせだ。パナソニック コネクトでは2023年12月5日、特にカメラ画像の取り扱いに焦点を当て、企業に求められるプライバシーガバナンスに関するメディアセミナーを開催。経産省・総務省「カメラ画像利活用ガイドブック」の作成に携わった明治大学の菊池浩明教授と、JEITA個人データ保護専門委員会の委員も務める同社の宮津俊弘氏が登壇し、データ利活用の留意点について実務に寄り添う具体的な提言を行った。
顔識別カメラの活用事例が増加
利便性向上と防犯の両面に期待
昨今、顔識別カメラの活用事例が増加している。明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授で、 経済産業省・総務省「IoT 推進コンソーシアム データ流通促進 WG カメラ画像利活用サブ WG」の座長 菊池 浩明氏は、自身がかかわった4つの事例を紹介した。
1つ目は、店頭に150台のカメラを設置し、来店客の年齢や性別、長時間滞在する商品棚、手に取った商品を分析して陳列方法の改善などに活かしたイオンスタイル川口の事例。2つ目は、何度も訪れる得意客の特徴を識別し、接客などに活かしたコンビニの例。3つ目は、万引犯の情報を共有し、来店時に店員の注意喚起を促した渋谷3書店の例。4つ目は、主要110駅に8,000台を超えるカメラを設置し、指名手配犯などの検知を行ったJR東日本の例。
3つ目および4つ目の例では、対象人物の画像データをあらかじめデータベースに登録しておき、個人を特定する手法をとっているが、個人情報保護委員会ではこれらについてそれぞれ、「万引が疑われる行為を撮影した画像は要配慮個人情報には当たらない」「利用目的の通知がされており問題ない」との認識を示しているという。
そもそも個人情報とは何を指すのか。データにはさまざまなレベルがあり、企業が配慮すべき事項はそれぞれに異なる。個人を識別できる顔画像はまさしく個人情報に当たり、取得の通知義務がかかってくる。さらに顔の特徴をデータベース化する場合には、個人情報取扱事業者の安全管理措置義務が課せられる。カメラ画像においても、どのようなカメラで、どのような情報を取得・蓄積するのかによって対象者への通知義務などが異なってくるので注意が必要だ。
法やガイドラインの遵守だけでなく
企業の自主的な取り組みが求められる
個人情報を取り扱うに当たって、まず基本となるのは2005年に施行され、直近では2020年に改正された個人情報保護法だ。この法は、個人情報の利用目的をできるだけ特定し、その範囲内で活用することを求めている。
個人情報保護委員会では、2022年から犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会を組織し、今年報告書をまとめた。同検討会はその中で、憲法および個人情報保護法で規制されている肖像権・プライバシーなどに関する事項を遵守するにとどまらず、法が網羅していない事項についても事業者が自主的に取り組むべきとしている。
一方、IoT推進コンソーシアム・総務省・経産省では「カメラ画像利活用ガイドブック」(以下、利活用GB)を作成している。この活動は、ユーザー企業、サービス提供企業、消費者団体など民間が中心となって進めているものだ。ここでもまた、事業者は法で規制されている範囲のみならず、生活者が普段不安に感じているような事柄を含め、プライバシー保護の観点から幅広い範囲を考慮すべきことが言及されている。
有識者検討会の報告書は防犯に特化しており、利活用GBは商用を対象としている。菊池氏は、データの利活用に際しては「ぜひこの両方を参照し、対応していただきたい。そうすることによって、全方位に配慮することが可能になります」とした。
技術が高度化すればグレーゾーンも広がる
これに対応する専門チームを立ち上げ
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