2024年2月16日7:30

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(AWSジャパン)は、「AWS re:Invent 2023」金融業界記者向けリキャップセッションを、2023年2月1日にオンライン形式にて開催した。同セッションでは、2023 年 11 月 27 日 ~12 月 1 日の 5 日間、ラスベガスで開催されたAWSの年次イベント「AWS re:Invent 2023」において行われた「金融業界」のセッションや発表内容について解説した。生成AIをはじめ金融業界におけるグローバルのクラウドのトレンド、AWSを活用した最新事例などを、 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 金融事業開発本部長 飯田 哲夫氏が、日本の金融業界への示唆を含めて説明した。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 金融事業開発本部長 飯田 哲夫氏

「AWSre:Invent 2023」での金融セッション紹介
Verifinは金融犯罪対策で生成AI活用

飯田氏は2016年よりAWSジャパンで金融領域の 事業開発を担当している。前職では電通国際情報サービスにて、 勘定系、決済系などを中心に、金融機関向けのITソリューショ ンの開発・企画を担当し、日本初のFinTechピッチコンテスト 「FIBC」を手掛けるなど、日本国内におけるFinTech領域の拡大にも貢献してきたという。

今回は2023年11月27日 ~ 12月1日まで ラスベガス で開催されたグローバルカンファレンス「AWSre:Invent 2023」での金融セッションについて紹介した。同セッションでは、大手金融機関が登壇し、取り組みを紹介している。

AWSの基調セッションでは、Worldwide Financial Services ジェネラルマネージャーのScott Mullins氏が「変革は、荒唐無稽な将来像を示すことではなく、 今日、どのように行動を変えるかに掛かっている」と語った。そのうえで、AWSの提供価値として、「選択肢」「スピード」「信頼」の3つを挙げた。

NatWestは、生成AIで実現する顧客体験のハイパー・パーソナライゼーションについて紹介した。同社では、生成AIの100件のユースケースを特定して、うち10件に絞り込んで検証した。LLM(大規模言語モデル)をコンテンツの生成やコンプライアンスチェックに活用し、顧客ごとにパーソナライズされたメッセージを配信した。これにより、コントロールグループと比較して、4倍のメッセージ開封率、+900%の貯蓄口座の申し込みを達成した。

Nasdaqグループ会社のVerafinは、3,800社に対して金融犯罪対策ソリューションを提供している。同社ではマニュアル作業に時間を取られていたが、Amazon Bedrock で生成AIの活用に取り組むとともに、Tokenサイズの最適化によるコスト削減(83%)、プロンプトエンジニアリングによるハルシネーションの抑制といった工夫を行った。生成AIを活用することで、単純マニュアル作業を 60%から5~10%へ削減することに成功している。調査担当者は、金融犯罪の抑止に関わる活動に注力できるようになった。

Sun Lifeは、生成AIによる社員の生産性向上を狙い、Amazon Bedrockを活用して、6カ月で14件の検証を実施したうち 4件は2023年中に運用が始まった。検証により、ユースケースごとのLLMの使い分け、ハルシネーション防止のためのチューニング、モデルの選択におけるビジネス視点の重要性が明らかになった。

カスタマーエクスペリエンスの取り組みとして、Prudentialはこれまで、メインフレーム上で30年稼働 する顧客情報システムについて、開発期間の長期化、高コスト、COBOLを理解する人材獲得・育成の困難という課題があった。同社では、クラウドネイティブアーキテクチャーによる次世代 の顧客管理ソリューションを構築し、コスト削減、 拡張性向上、アジリティ強化、接続性の強化を目指した。AWSのプロフェッショナルサービス を含む、スクラムチームを形成して臨んだが、5,000万の顧客レコードのうち約600万顧客を移行した。開発の効率化、拡張性・可用性の向上、スキルの向上を実現している。

Trust Bankは、2022年設立のシンガポールのデジタルバンクだ。1年で人口の12%の顧客を獲得。デジタル化の推進とシンガポール当局のSLA達成(ダ ウンタイムは年間4時間以内)の両立が必要となった。同社ではゼロダウンタイムでのリリース、「障害は起きる」 ことを前提としたオブザーバビリティの高度化に注力し、End-to-Endで顧客トランザクションの状況をリアルタイムに把握するプラットフォー ムを構築した。AWS Fault Injection Serviceも活用し、3分以内のオンボーディング、他行よりも早いプロダクトリリースなど、優れた顧客体験を実現したそうだ。また、顧客の70%は口コミで獲得している。

データアナリティクスにおける活用では、FINRAの事例を紹介。FINRAは、統合取引監視システム“CAT”において、全米の証券取引データを一元的に集約・分析・ 監視している。日々6,000億件を超える市場イベントを処理しており、データ量は、680ペタバイトから3 年以内にエクサバイト規模への拡大する見込みだ。同社ではスケーラビリティ、セキュリティ、参加者のコスト負担軽減のため、Graviton2、S3 Intelligent Tieringなどを採用した。 また、Graviton3, 4の検証にも着手。コンピュートについては、Graviton2の採用 により、処理時間を70%削減し、1,000 万ドルを節約。また、ストレージについては、単価 を65%削減し、数百万ドルを節約したという。

JPMorgan Chase Asset Managementは、1,000+のデータソース、6,000+アプリケーション、5PB+データ量を所有している。データドリブンでのビジネス拡大のため、分析に至るまでのプ ロセスの時間と負荷の削減が課題であった。同社ではS3、EMR、Redshiftを活用し、統合デー タプラットフォーム“AMIQ”をAWS SaaS Labを活用し再利用可能なSaaS型プラットフォームとして構築。その結果、コストを50%削減し、パフォーマンスは30% 以上向上した。データオンボード時間の短縮や、 開発速度(5倍)、デプロイ頻度(10 倍)の改善で新サービス投入速度が向上し、 年間10Bドルの追加売上につながっている。

Fidelity Investmentsは、AWSだけでも1,500+のアカウント、800 万+のリソースを運用している。複数のクラウドプロ バイダー、複数の環境におけるセキュリティ監視の実現が課題だった。同社では、異なるセキュリティポリシーを持つ複数の環境に対して、2,000を超えるシナリオから適切なセキュリティシナリオを自動的に適用し、監視・検出・対応・予防が実施できるスケーラブルなセキュリティ監視ツールを構築した。コンプライアンスの証跡、リソースの稼働状況などを1つの画面でリアルタイムに把握可能なUI “Single pane of glass”を実装することで、状況把握が容易になり、開発者を含め現場との情報共有も簡素化した。

Coinbaseは、顧客との接続ゲートウェイ、オーダーマネジメントシステム、マッチングエンジンを低遅延 で連携させるため、Cluster Placement Groupを採用した。同社では、システム内の処理時間を1ミリ秒以下にすることに成功している。今後はアカウントをまたがって実現することで、顧客システムが AWS で構築されているケースにおいては、顧客接続を含めた超低遅延化実現のため、 AWS Private Link や Shared Cluster Placement Group も検討している。

Goldman Sachsは、新規のビジネスとして、トランザクションバンキングをAWS上で新規に構築している。ビジネス要件として、24時間365日の稼働が求められるが、システム障害のみならず、メンテナンスなど新しいサービスの実現においてもゼロダウンタイムの実現が求められた。AWSによりサードパーティの開発支援ツールを活用しながら、Blue/Green Deploymentという本番環境を稼働させながら新バージョンのリリースを行う方法を実装している。四半期で1,000回を超えるリリース頻度でBlue/Green Deploymentで新サービスの検証の時間を長くする一方で、週末のリリースといった負担が重たい作業に成功している。月間のバリデーションタイムが削減、デプロイ時の Aurora のダウンタイムを削減した。こういった取り組みは日本の金融機関でも増えてくると見ている。

スペインのSantanderは、クラウドネイティブのトレーディングプラットフォームを大規模に構築している。クラウドの特性を生かすために、マイクロサービスアーキテクチャにしたことに加え、AWS PrivateLinkによるデータフィード接続、 AWS CDK によるテスト・デプロイの自動化、 Amazon CloudWatch によるモニタリングなど、クラウドのサービスを最大限に活用したという。プロジェクト成功の要因としてビジネス部門と一体となりプロジェクトを推進したからだ。

クラウド上で稼働するクリティカルなワークフローが増えてきていることに加え、1つのビジネス機能の裏でさまざまなマイクロサービスが稼働したり、外部のサービスと連携する環境において、レジリエンシー強化への対応とチャレンジが積み上がってきている。

Stripeは拡大するオブザーバビリティを抑える
日本ではキャッシュレス拡大とともにクラウド活用が広がる

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