リクルート、自社決済スキーム活用で「早さ」「手軽さ」が売りの給与即払いを提供へ

2025年1月20日8:00

リクルートは、2025年1月16日より提供開始した「賃金のデジタル給与払い」のサービスに関する記者発表会を開催した。リクルート子会社のリクルート MUFG ビジネスが2024年12月13日付で、賃金のデジタル払いを手掛ける資金移動業者として厚生労働大臣より指定を受領した。給与支払いサービス「Air ワーク 給与支払」と決済ブランド「COIN+(コインプラス)」の連携が完了することで、従業員は現在受け取り可能な銀行口座に加え、「COIN+」を組み込んだスマホアプリ「エアウォレット」で 30 万円を残高上限額とした即払い受け取りも選べる。すでに同分野にはキャッシュレスサービス「PayPay」が2024年8月から参入しているが、リクルートでは自社が提供する決済スキームを活用し、「早さ」「手軽さ」が重要な給与即払いに特化してサービスを提供できるのが特徴だという。

給与の即払い機能を提供
米国は月に複数回の支払いが9割

当日はリクルート ペイロールプロダクト部部長 渡辺 和樹氏がリクルートの給与支払いサービス「Airワーク 給与支払」について紹介した。同氏は2020年から現職として給与支払い関連のサービスを行っている。同社はデジタルマネーによる賃金支払いを行うことは働き方、人材採用のテーマでもあると考えている。

リクルート ペイロールプロダクト部部長 渡辺 和樹氏

リクルートでは、広告ビジネスと並行して、顧客の業務を支援するような業務支援サービスを提供している。それが「Airビジネスツールズ」だ。例えば店頭でのキャッシュレス決済「Airペイ」、店頭でのレジ業務を効率化する「Airレジ」のようなサービスを提供している。「Airワーク給与支払」は、利用者の給与支払いをより便利にするサービスとして2023年4月に提供を開始している。

給与支払いをもっと便利にするとはどういうことか? その1つの機能として、給与の即払い機能を提供している。これは、従業員が申請をした場合、そこまでに働いた分の給与をすぐに受け取れる。

従業員は、専用画面で自身の銀行口座情報、勤務先情報を登録する。雇用者、事業者は、その従業員の勤怠情報を登録する。それにより従業員画面において、今自分はどれぐらいの給料をすぐに受け取れるのかのデータを表示し続けることにより、従業員が申請をもって、事業者から、その時まで働いた給与を支払う体験を提供している。

多くの企業では月に1回、前月に働いた分の給与を受け取ることが当たり前になっているが、リクルートの提供する給与即払いは、月に1回の給料日前に働いた分の給料を受け取れる。最短翌日から給料日前までの間において、すぐに給料を受け取れる体験を提供することによって、日々の資金ニーズに対応可能だ。日本では月に1回の支払いは当たり前だが、例えばアメリカにおいては月に1回の支払いは少数派という状況だ。

給与即払がこの2年で1.5倍の伸び
求人や勤続面でもプラスに?

労働者における国内における給与即払いのニーズもこの2年で1.5倍の伸び率を示している。給与を受け取る新しい選択肢が広がっていると考えており、その要因としてキャッシュレス決済の進展やスポットワークの成長が挙げられる。

キャッシュレス決済が進展することにより、例えば、日々の支払も現金、クレジットカード、デジタルマネーなどで対応し、入出金の管理が煩雑化していく。もしくはスポットワーク市場が成長することによって、働いたその日に賃金を受け取ることが当たり前になっている。そういった状況が給与即払いの伸びに関わると考えている。また、給与が月に1回しか手にできないという疑問が労働者から出てくるのも当たり前になるとした。

実際、「Airワーク給与支払」の職場での利用状況として、2024年4月から集計した数万の利用者のデータでは、月に1回から2回程度、数万円を受け取っていることが分かった。このようなサービスの利用状況を踏まえ、月に1回給与を受け取るという常識や慣行にとらわれず、その日まで働いた給料を受け取ることが増えるとした。

雇用者、事業者側にとって給与即払いを導入するメリットとして、「我々が運営している採用メディアにおいて給与即払いの制度があることを表示している求人、そうでない求人を比較すると、応募数に約120%の影響があることがわかりました」と渡辺氏は話す。

人材採用が直接売り上げにも影響する経営課題となる中で、「極めて重要な数字である」と渡辺氏は強調する。実際、採用メディアで求職者が求人を検索するキーワードのランキングにおいて、給与即払い、日払いへの関心が高まっている。給与即払いは、採用時に加え、働く人にとっても影響を与えることが調査で分かった。例えば、給与即払いを導入している企業での従業員の利用意向は40%、就業帰属率は62%と高く、その企業に勤める理由の1つになっている。実際に、運用する事業者の声からも、従業員満足度や採用力が向上した実績があることがわかった。

デジタルマネーと給与即払いの相性は良い?
若年層を中心に高まる市場ニーズを実感

その流れの中で、リクルートでは、2025年1月16日より「Airワーク 給与支払」で賃金のデジタル払いへの対応を開始した。

同サービスの開始によって従業員は、決済ブランド「COIN+」で働いた分の給与を受け取れることを実現している。デジタル賃金払い市場のニーズとしてこの2年、給与即払いを希望する同様の層において、デジタルマネーで給与を受け取りたい要望が増えている。渡辺氏は「伸びている層が同様なことからも、デジタルマネーと給与即払いの相性が良いのではないかと考えています。そのため、賃金のデジタル払いとして、給与即払いに特化したデジタルマネーの受け取りをサービスとして提供していきたいと考えています」と述べる。

給与即払いは、申請時にすぐにもらえる早さ、手軽さが重要なサービスであると考えており、「デジタルマネーが非常に大きな影響を与える」(渡辺氏)とした。従来の給与即払いは銀行口座でしか受け取ることができなかったが、銀行口座間の資金移動の手間や手数料などが普及しなかった原因だという。

「エアウォレット」での賃金受け取りに対応
三菱UFJ銀行は「COIN+」連携を強化へ

具体的な仕組みについては、リクルートMUFGビジネス 取締役COO 西脇源太氏が紹介した。また、三菱UFJ銀行の取り組みについては、決済企画部 副部長 末吉 敬明氏が説明した。

リクルートMUFGビジネス 取締役COO 西脇源太氏
三菱UFJ銀行 決済企画部 副部長 末吉 敬明氏

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