2025年9月17日8:00
日本のキャッシュレス決済シーンは、キャッシュレス決済比率4割を前倒し達成し、8割を目指して動き出している。インフキュリオン独自の「決済動向2025年調査」を担当したインフキュリオン主席アナリストの森岡剛氏に、日本のキャッシュレス推進における今後の展望と課題などを聞いた。

スマホアプリで支払う行動が一般化
体感的なキャッシュレスは4割以上?
―― これまでの国内のキャッシュレス推進に対する評価は?
森岡:キャッシュレス決済比率4割を2025年に達成するという政府目標が公表された時、本当に実現できるか疑問視していました。当時はPayPayなどのコード決済もなく、キャッシュレスと言うとクレジットカードか電子マネーでした。クレジットカードを敬遠する層は確実にいるので、4割達成は難しいと考えたからです。コード決済の登場など技術の進歩でその状況は変わり、今は店舗でスマートフォンアプリを出して支払う行動が当たり前になっています。こうした大きな変化がもたらしたキャッシュレス推進によって、私たちの生活が便利になったというのが実感です。これからもっと、デジタルサービスが普及することで、生活がさらに便利になるという期待感が膨らんでいます。
―― 口座振替やコンビニのレジで現金払いを行うBNPLなどをキャッシュレス決済に含めるなど、日本の決済比率の計算方法を見直す動きも出ている。
森岡:例えば、イベントチケットをネットで買って、コンビニで現金で支払う場合も、キャッシュレス決済には含まれません。家賃の引き落としや、普及が進んでいるBNPLなどをキャッシュレス決済に含めると、比率はもっと高くなるでしょう。キャッシュレス決済比率は4割超ですが、体感的なキャッシュレスはもっと進んでいると思います。
15業種のキャッシュレスの状況
医療機関・クリニックは現金が7割弱
―― 2015年から定期的に実施している「決済動向調査」は、国内キャッシュレス決済市場を理解するための有力な情報源のひとつとして知られている。最新の「決済動向2025年調査」で15業種を選んだ狙いは。
森岡:多くの人々が日常的に使う施設を選んで選定しています。推移を調べたいので、キャッシュレスが進んでいる業種と、進んでいない業種の双方を含めて、人々の日常生活を捕捉するのが狙いです。この調査は、全国の16才~69才の男女2万人を対象にしたアンケート調査で、シェアが高まっているのか分かるのが特徴です。ITリテラシーの比較的高い層がアンケートに答えているので、高めの数字になる傾向があると思いますが、時系列における増減の数字は、貴重なデータであるとの評価をいただいています。
―― 「決済動向2025年調査」で医療機関・クリニックでキャッシュレス決済が進んでいないという結果だったが、その理由として考えられるのは何か。
森岡:医療業界は、これまでカード加盟が浸透していなかった領域です。保険診療は診療内容に応じて報酬金額が一律に定められているので、カード決済端末導入コストや決済手数料を負担してまで患者への利便性を高めようというインセンティブが働きにくかったと考えられます。
一方で、最近では日常生活でのキャッシュレスの広がりに対応し、キャッシュレス対応を始めた施設では、来院する患者にとって便利で、病院側にとっても事務負担を軽減できるという利便性が認識されています。一定規模の病院・クリニック、ドラッグチェーンの処方薬局などでは、キャッシュレス決済やポイントの付与が行われており、この分野でも、キャッシュレス決済が浸透し始めています。
手数料負担だけでの経営判断は危険
キャッシュレス決済の質的変化が進む?
―― スーパーマーケットでは、これ以上キャッシュレス比率が高まると、手数料負担に耐えられないという声もあると聞く。
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