2013年3月21日8:00
リアルとネットをつなぐデジタル決済サービス「MasterPass」とは?
MasterCard Worldwide アジア/太平洋、中東、アフリカ地域 エマージングペイメント部門グループヘッドのフィリップ・イェン(Philip Yen)氏、モバイル/e コマース部門リージョナルヘッドのラジ・ダモハラン(Raj Dhamodharan)氏インタビュー
マスターカード・ワールドワイド(MasterCard)は、2013年2月25日、次世代型デジタル決済サービス「MasterPass」を発表した。同サービスは、店頭やレジはもちろん軒先でも、NFC、QRコード、電子タグ、モバイル機器などを使った決済が可能だ。利用者は、オンライン、実店舗など、どんな場所からでも、マウスでのクリックあるいは画面でのタップやタッチだけで、あらゆる種類の決済カードや対応するデバイスを利用して決済を行うことができるという。MasterCard Worldwide アジア/太平洋、中東、アフリカ地域 エマージングペイメント部門グループヘッドのフィリップ・イェン(Philip Yen)氏、モバイル/e コマース部門リージョナルヘッドのラジ・ダモハラン(Raj Dhamodharan)氏に、「MasterPass」について話を聞いた。
どのデバイスでも簡単に、ワンクリックで決済が可能
NFC、QRコード、電子タグ、モバイル機器など多彩な決済を実現
――まずは、「MasterPass」のコンセプトからお聞かせください。
フィリップ・イェン:MasterCardでは、あらゆるデバイスがコマーシャルデバイスになると認識しています。POSやPCのみではなく、タブレット、モバイル、テレビ、冷蔵庫など、さまざまなものが商用デバイスとして利用されるようになってきました。それと同時に伝統的な小売のモデルが変わっています。小売り店舗においてもPOSだけで支払いをするわけではなくなっていますし、eコマースについてもオフィスや家庭以外からショッピングが行われています。
最近では、リアルとオンラインの世界が収斂してきていると言えます。このようなデジタル決済の移行を上手く管理する必要があります。そして、「MasterPass」は便利で簡単に決済が行える枠組みとなっています。どのようなデバイスでも単純に、簡単に、ワンクリックで決済が行えます。実店舗やオンラインにおいてさまざまなチャネルを利用して決済をしていただくことが可能です。
「MasterPass」については、いくつかの主要な開発が行われてきました。MasterPassは、MasterCard PayPass Walletとかつて呼ばれていました。このMasterCard PayPass Walletのインフラを活用して、さらに強化されたのがMasterPassです。「MasterPass」のチェックアウト・サービスはすべてのフレームワーク、すべてのデバイスで利用可能です。例えば、NFC、QRコード、電子タグ、Bluetoothによる通信など、多彩な手段に対応しています。
ユーザーは1つのウォレットさえあれば支払いが完了
イシュアは自身のブランドでウォレットを発行可能
――具体的に「MasterPass」の実例についてお話をいただければ幸いです。
ラジ・ダモハラン:最終的な目標として、MasterCard PayPassやQRコードなど、ユーザーは1つのウォレットさえあれば支払いが完了できます。例えば、「MasterPass」の利用者が、Webサイトで飛行機のチケットを購入したい場合、航空会社のサイトで「MasterPass」のボタンをクリックすると購入が可能なように、便利で簡単な支払いを提供できます。
リアルの世界では、スマートフォンを利用して店舗のリーダライタにタップすれば、決済が可能です。もう1つの例として、利用者が店舗に行って商品を購入したい場合、商品にバーコードがついていますが、これを読み取ることによりウォレットによる支払いが行えます。決済後、レシートが出力されますので、それを店員に見せると、レジに並ばずに買い物が完了できます。
このような具体例は、ほんの一握りに過ぎません。ユーザーや店舗がインテリジェントデバイスを持っていれば対応が可能です。私たちの役割は、支払いのための基準を設定することです。それに則っていれば、お客様は便利な手段を提供可能です。
MasterPassを利用すればさまざまな支払いが行えることがメリットとなります。このシナリオですが、金融機関や通信会社、第三者のサードパーティがウォレットを発行し、「MasterPass」のネットワークにプラグインして、そこに店舗が参加する形となります。
「MasterPass」は、フレームワークというよりはインフラになります。デフォルトのウォレットが提供されていますので、すぐに利用が可能です。イシュアに対し、APIを提供することにより、さまざまなウォレットが使用可能となっています。
また、カード発行のパートナーが「MasterPass」をお使いになるとき、弊社のブランドを活用してお客様自身のブランドをつけていただくことが可能です。さらに、自前のウォレットを作ったうえで、弊社のシステムにプラグインしていただくこともできます。現在、世界で「MasterPass」の話が進んでいる銀行、加盟店、テクノロジーパートナーのリストは数多くありますが、いずれかの方法を採用すると思います。
まずはオンラインからサービスを開始
Visa等の他のブランドをサポート
――リアルにおける「MasterPass」の展開はいかがでしょうか?
フィリップ・エン:「MasterPass」は、リアル、オンライン、そしてクーポンやポイントといった付加価値サービスを提供できます。これを組み合わせることができますし、アクセプタンスネットワークのなかで提供されています。イシュアやサードパーティのお客様が自身のウォレットをつくる場合、MasterCardのアクセプタンスネットワークの活用が可能です。POSに関しては、世界中で約70万か所以上の加盟店にMasterCard PayPassのターミナルがありますので、それを活用していく予定です。
現在、世界中でいくつかのNFCのウォレットがありますが、弊社はリーダ的な存在です。お客様にとっては、「MasterPass」のフレームワークでチャネルを拡大でき、モバイルからオンライン、QRコードやNFCへ展開を広げていくことが可能です。
なお、「MasterPass」は、世界各国で展開予定ですが、最初の段階ではオンラインになると思います。また、MasterPassは、ウォレットの部分でVisa等の他のブランドをサポートします。私たちはベストなウォレットになっていきたいと思いますし、イシュアなどに対しては有益なビジネスモデルを提供していきたいと考えています。
――最後に、「MasterPass」の普及の目標についてお聞かせ下さい。
フィリップ・エン:私は過去に、さまざまな決済技術のグローバルな導入に関わってきました。例えば、クレジットカードやデビットカードは、磁気ストライプからEMVチップ(ICカード)に移行してきていますが、10年ほど時間がかかりました。MasterCardでは、MasterCard PayPassを世界で展開しているため、それを活用できるメリットがあると思います。ただし、全体の数からみればまだまだ少ないため、オンラインの方が早く展開は進むでしょう。今後は弊社のサービスを多くの店舗に検討していただく必要があり、正直なところ何年もかかるかもしれませんが、乗り越えていきたいと思います。
――本日はありがとうございました。
国内ではリアルでの非接触決済から「MasterPass」は浸透?
マスターカード・ワールドワイド 上席副社長 マーケット デベロップメント 広瀬薫氏
MasterCardの企業ビジョンは「A World Beyond Cash」ですが、これはキャッシュに依存しない市場・世界に少しでも近づく努力をして行こうという理念です。具体的には、「easier, safer, more rewarding」というコンセプトのもと、簡単、安全で、付加価値の高い決済ソリューションを提供していく事により、この「A World Beyond Cash」の実現を目指したいと考えています。その取り組みのひとつが「MasterPass」であるといえます。シームレスに決済手段を統合化する事により、より簡単で安心な決済を提供するものです。現在は海外数カ国においてオンラインのみの対応ですが、日本国内での展開は現在検討中です。日本ではおサイフケータイが普及している為に、オンラインよりもリアルでの非接触決済から浸透していくと思われますが、どの決済手段が切り口であっても、最終的には統合化された「MasterPass」としてより付加価値の高い決済ソリューションに育ててまいりたいと思っております。