2013年7月30日8:45
新たな価値をうみだすmPOS
mPOS Creates New Value
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
モバイルPOS、略してmPOS。これが世界中でいま、上昇気流にのって高く舞い上がろうとしている。mPOSとは、スマートフォンやタブレットを使ったPOSシステム。ショップの販売管理システムと決済システムを連動したモバイルソリューションをいう。
Squareが2009年12月に発表した革新的なモバイル決済ソリューションがいまや世界中に拡大。世界で80社以上が同類のソリューションを提供するまでになった。北米、欧州、中東、アフリカ、アジア・オセアニア、南米。すべての大陸でmPOSプロジェクトが動いている。
調査会社のジャブリン(Javelin Strategy & Research)が2013年4月末に発表した調査によると、mPOSは個人商店のようなマイクロマーチャントからビッグボックスと呼ばれる大手流通まで幅ひろく導入が進んでいる。mPOSによって、カードアクセプタンスは2,000万件も拡大。年間のカード取扱高は1.1兆ドルになると予測している。
調査会社のIHLグループが2013年5月に発表した調査によると、北米のmPOS市場規模は2013年末までには20億ドルを超えるとみている。これはmPOSの取扱高ではなく、mPOSに使うハードウェアやソフトウェアの金額だ。
北米の小売業で、2013年末までになんらかのかたちでmPOSの導入を計画しているところは28%。小売専門店はタブレットPOSに積極的で、全タブレットPOSの45%を専門店が占めている。
2016年までに米国小売業のmPOSは伝統的なPOS市場の12.4%を浸食する。置換えが最もすすむ領域は、百貨店と専門小売店。大手流通の85%以上が導入すると予測している。mPOSがショップのオペレーションを今後3年間で変えることは間違いない。
日本ではPayPalがPayPalヒアで2012年に参入。楽天はスマートペイを自社開発、セゾンはコイニーと提携してmPOS市場に参入した。本家本元のSquareも今年の5月、ついに日本に上陸した。
なぜmPOSは世界中で注目され、採用されているのだろうか。それはスマートフォンやタブレットがクラウドと連動し、さまざまなサービスを提供できることがわかってきたからである。
言うことを聞かない頑固なPOSシステムやカード決済端末とちがい、mPOSは柔軟性が高く、拡張性がある。クラウドに情報をためておけば、場所を選ばず、時間に関係なく、機器にしばられることもなく使える。しかもだれでも直感的に指で操作できる。なんといっても一番の魅力は、安く導入できることである。
機器にしばられない、というメリットは大きい。米国人の2人に1人がもっているスマートフォン。米国成人の3人に1人がもっているタブレット。これとおなじものを使ってショップのPOSシステムが構築できる。米国では、スマートフォンの保有者数は数年でほぼ100%に達成するだろう。
日本では携帯電話保有者の30%強がスマートフォンを保有している。スマートフォンの普及速度ははやい。スマートフォンのタッチスクリーン操作に慣れた人たちは、店員であろうと顧客であろうと、ほとんど直感的に操作できる。むずかしいマニュアルや教育訓練はいらない。それがまたmPOSの浸透スピードをアップしている。
mPOSはいままでのPOSとちがい、どのような価値を提供してくれるのだろうか。mPOS開発会社は何をめざしているのだろうか。進化するmPOSについてレポートしよう。