2014年8月6日8:57
モバイルペイメントには「リモート型」と「近接型」があるが、NFC(Near Field Communication)は近接型のモバイルペイメントソリューションとなる。NFCは、“ISO/IEC14443タイプA/B”、FeliCaの上位規格に位置付けられており、こうした従来の通信仕様にもNFCは対応できる。NFC対応のPOSカード決済端末機のカードリーダにNFCチップを搭載したモバイルフォンやスマートフォンなどのモバイルデバイスやコンタクトレスICカードなどを10センチメートル以内に近付けることで双方のデバイスを認識可能だ。
また、NFCでモバイルデバイスに接続した後からIrDA(赤外線通信)やBluetooth、WiFi、無線LANなど、他の高速通信方式との対応も行なえる。
NFCの通信機能などをスマートフォンなどのモバイルデバイスに実装する方法は、これまで“アンテナ”のほか、無線通信をコントロールする“RF(Radio Frequency)チップ”とNFCアプリや暗号化に必要な機密情報を格納する“SE(Secure Element)チップ”の3つが必要であるといわれていた。その実装方法は、下記の方法がある。
A、「SIMカード方式」
“SEチップ”を通常のSIMカードと異なった専用のSIMカード“NFC/SIM”に実装する
B、「マイクロSD方式」
“SEチップ”を内蔵したマイクロSDをモバイルデバイスに装着する
C、「チップ内蔵方式」
“SEチップ”もモバイルデバイスに内蔵する
〇“RFチップ”をモバイルデバイスに内蔵しないケース
D、「コンボSIMカード方式」
“RFチップ”と“SEチップ”を共にSIMカード上に実装したコンボSIMカードをモバイルデバイスに装着する
E、「マイクロSD/NFC方式」
“RFチップ”と“SEチップ”を共にマイクロSD上に実装したマイクロSDをモバイルデバイスに装着する
〇その他
HCE(Host based Card Emulation)による方式
こうした“SEチップ”をどこに置くかが、モバイルフォンキャリアとカード会社や金融機関などとの綱引きとなっている。AのSIMカード方式やDのコンボSIMカード方式のように“SEチップ”をSIMカードに置く方法が採用されれば、モバイルフォンキャリアがNFCのアプリケーションにおけるイニシアティブが高まる。一方、“SEチップ”をSIM以外のマイクロSDに置くBのマイクロSD方式やEのマイクロSD/NFC方式が採用されると、モバイルフォンキャリアの影響を排して、金融機関などがNFCプロジェクトを主導できる。GSM方式のモバイルフォンキャリアの業界団体であるGSMAはSIMカード方式を押していた。
そして、現在注目を集めるのがHCE(Host based Card Emulation)方式だ。これは、2013年10月にモバイルデバイスのOSであるAndroidの開発を行っているGoogleが開発したSE(Secure Element)無しにNFCカードエミュレーション機能の提供が可能な方式となっている。
HCEにより、“SEチップ”をモバイルデバイスの本体やSIMカード、マイクロSDのうちどこに置くかといったモバイルフォンキャリアとカード会社や金融機関などとの綱引きも不要となる可能性がある。これにより、NFCを活用したモバイルサービスの普及につながると期待され、世界各国でプロジェクトが進んでいる。
すでにスペインやオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国等でHCEを活用したプロジェクトが進行。例えば、スペインの金融機関Banco Bilbao Vizcaya Argentaria(BBVA)ではHCEを活用したサービスを発表したが、クラウドの基盤を活用し、米国、メキシコ、チリでの展開を行う予定だ。また、Visa payWaveのクラウドサービス開発を支援した米国のSimply Tapp CEO Doug Yeager氏が、「NFCだけではなくBluetoothなども含めた基盤に成長させたい」と話すように、クラウドで管理することによる拡張性も期待できる。
「モバイルペイメント要覧」では、NFCやQRコードなどの2次元バーコードを用いた近接型のモバイルペイメントソリューション、PayPal BeconやiBeaconなどの近距離型のモバイルペイメントソリューションについて紹介している。