2015年6月18日8:00
タレスジャパン株式会社
モバイル決済におけるセキュリティリスク管理の新潮流
NFCのモバイル決済で注目を集めるHCEの運用にHSMは有効
鍵交換技術の実装にHSMが有効
イシュアにとってセキュアな鍵の生成が可能に
HCEは、VisaとMasterCardが最初のイシュア向けの仕様を出しましたが、アカウントマネジメントシステムは、カードベースのシステムの延長となり、トランザクションマネージはカード決済のオーソリのシステムです。デバイスプロビジョニングは、HCEで使う新システムとなり、携帯電話とのインターフェースをとり、鍵や機密データを携帯電話にプロビジョニングする役割があります。イシュアにはさまざまなシステムアーキテクチャが登録されていますが、このような仕組みを利用すれば、既存のシステムに対して大きな混乱はなく、モバイル決済のサポートや構築の手助けになると考えます。
HCEは、鍵を生成する際にカードスキームとしてHSMで行われ、イシュアにとってはよりセキュアな鍵の生成方法がとれるはずです。HCEで使うPANのレンジは実際の物理的なカード環境で使うものとは異なるため、仮にデータが盗まれても、それを使って対面取引で悪用されたり、非対面取引に使うことはできません。また、鍵をどう保管するかという、ストレージの部分については、HSMの内側にのみ存在し、イシュアの環境の中だけでセキュアな形で暗号化されています。
アカウントマネジメントモジュールについては、アカウントのアーキュレーションをサポートします。例えば、あるユーザーがモバイルサービスを使う場合、銀行への登録を行いますが、まずはユーザーのデバイスの適格性をチェックする必要があります。方法は各イシュアにより異なりますが、お客様に対してアクティベーションコードを供給し、アプリケーションのダウンロードを行います。アプリケーションがインストールされ、鍵のプロビジョニングが終わると、ユーザーは店舗で支払いが可能になります。どの程度のセキュリティレベルでアクティベーションさせるかはイシュアに委ねられますが、この場合、考えられるのはPINコードや指紋による認証になります。また、マスターキーはカードから分離されています。鍵交換技術を使用するためにHSMが利用され、モバイルデバイス側に格納されている鍵は暗号化された形式で携帯デバイスに格納されます。
PANについては、HCEは通常のカードは利用しません。物理的なカードで使っているPANとは代替となるPANもしくはトークンが使われます。この場合、鍵は一回限りの使用となります。すでにプロビジョニングされた鍵が全部使われた場合には、イシュアから再度もう一度鍵をプロビジョニングすることが必要となります。これをどのように実装するかに対してはさまざまなパイロットが行われています。
HCEによりモバイル決済の普及が加速
HSMで「人」「プロセス」「技術」の包括的なセキュリティ強化
現在、モバイル決済の市場についてはAndroid、Blackberryの21%で準備が整っています。実際には世界中の携帯端末の17%にあたり、すでにHCEを使ったNFCをサポートしています。2~3年の間に市場の85%の端末はHCEをサポートするといわれていますが、これに「Apple Pay」を加えると市場の99%をサポートすることになりますので、モバイル決済が普及する時期が間もなくやってくると思います。
従来、セキュアレメントのモデルが使われているのに、なぜHCEが注目されるのかというと、セキュアエレメントモデルがパイロット以上に使われていない状況が挙げられます。HCEを使うことによりプロビジョニングが簡単になり、技術的なアドバンテージがあるはずです。つまり、OTA(Over the Air)の管理をセキュアに行いつつ、アプリケーションを利用することができます。HCEは非常に大きなビジネスの利点をもたらします。特に、セキュアな環境を迅速に、簡単に、複数のモバイルデバイスに対して提供できます。そして、その際に複数のキャリアやモバイルオペレーターとやり取りせずに行えるのは大きなメリットです。金融業界では、従来と違ったやり方の場合、懐疑的な意見もあるかもしれませんが、これまでのやり方が今後も利便性があって安全性があるとは保証できません。HCEのような新しい技術を使ってビジネスを行うことで付加価値を創出しなければ、どの企業も競争力を維持できないと考えます。
最後に、タレスのHSMは、「人」「プロセス」「技術」の包括的なセキュリティ強化を実現します。また、HCEにおいても強力なマスター鍵保護、暗号データの確証、セキュア・チャネルの構築により、ビジネスを支援可能となっています。
※本記事は2015年3月12日に開催された「ペイメントカード・セキュリティフォーラム2015」のタレス e-セキュリティ シニア プロダクトマネジャー ジロウ・シンドウ氏の講演をベースに加筆を加え、紹介しています。