2016年2月18日8:55
MasterCardは、2016年2月17日、最新決済ソリューションを紹介する「Japan Innovation Forum 2016」を開催した。同フォーラムでは、MasterCardの戦略や最新のデジタル決済やコンタクトレスペイメント、開発中の技術が発表された。また、「通勤」、「職場」「食事・買物」「自宅」などの生活シーンに合わせたデモも行われた。
「Priceless Japan」でブランドとしての発信を強化
グローバルシステムと日本のシステムとの互換確保に注力
MasterCardは、イシュアやアクワイアラをはじめ、加盟店、政府などとのかかわりも深い。冒頭あいさつしたMasterCard 日本地区社長 ナンダン・マー氏は、「電子決済をシンプルに、安全に、メリットを享受できるように提供していくことを約束したい」と語った。決済をシンプルにすれば加盟店の取引量も増え、また、顧客体験も便利になる。さらに、海外では政府でもMasterCard決済が活用されている。
MasterCardでは、“お金で買えない価値がある”日本のさまざまな魅力を改めて発見するプログラム「Priceless Japan(プライスレス・ジャパン)」等を通じて、ブランドとしての発信を強化している。同取り組みはイシュア(カード発行会社)と広げているが、「日本だけではなく中国などのアジアのマーケットに広げていきたい」とマー氏は意気込む。
また、グローバルシステムを見直しており、MasterCardが提供するすべての決済ソリューションと日本のサービスが互換性の高いものにしていく方針だ。世界でローンチしている技術を同時進行で日本に提供できるように努めていく。そして、日本でのビジネスを拡大する上で、スタッフの強化を図る。
MasterPassは今年度秋に非接触決済に対応
MDESはイシュアに提供できる環境を整備
続いて、MasterCard アジア太平洋地区 エマージング・ペイメント ヘッド ラジャ・ダモダラン氏が登壇。非接触決済・デジタル決済の最新ソリューションについて紹介した。世界のインターネットデバイスの数は急上昇しており、日本でもスマートフォンの浸透により、モバイルコマースの利用者が増加している。MasterCardでは、「Apple Pay」「Android Pay」、「Samsung Pay」、「Facebook Payments」とのパートナーシップを発表しており、安全な形での決済を提供していきたいとしている。
デジタル決済の提供において、「信頼」、「妥当性」、「採用のしやすさ」、「差別化」の4つが重要であるとした。また、好きなデバイスがから接続できること、複数のチャネルで取引ができる必要がある。さらに、カードのトークン化、EMVのようなセキュアな機能を提供することで、より安全な決済が実現可能だ。MasterCardは、多段階のアプローチを通じて、カード決済取引の高いセキュリティを実現している。例えば、動的な取引が可能になるEMVは安全な技術だが、それに似た暗号をウォレットのサービスにも持ち込むことで、セキュリティを担保できるとしている。
MasterCardでは、デジタル決済サービス「MasterPass(マスターパス)」を提供。世界各国の25万加盟店で使用でき、アジア太平洋地域では9つの市場でサービスを開始している。また、MasterPassはオンラインのチェックアウトなどを中心にサービスを展開してきたが、今年度の後半に対面の非接触決済のサポートを開始する予定だ。MasterPassのサービスは、金融機関(イシュア)から消費者へサービスを提供するだけではなく、コーヒーを注文したり、給食で支払うなど、現実の世界でスムーズな支払いが選べるように、アップグレードしていく。
また、ペイメントトークンサービス「マスターカード・デジタル・イネーブルメント・サービス(MDES:MasterCard Digital Enablement Service)」では、増加するウォレットサービス、ウェアラブルデバイスなどの多くで、トークンによる安全な支払いを提供するという。すでにMDESでは、Apple PayやSamsung Pay等でイシュアを支援しているが、日本のイシュアに提供できる仕組みは整備しており、ニーズがあればサービスを開始できる体制となっている。
コインランドリーの「MAYTAG」ではスマホで予約、決済が可能
冷蔵庫から必要な食料や雑貨を購入できるサービスでSamsungと連携
MasterCardでは新技術への対応強化の目的として、グローバルな研究開発機関「MasterCard Labs」を2010年から開設。世界各国に研究機関を設けており、アイデアやテクノロジを研究し、商用化していく役割を担っている。国内には研究機関はないが、「日本向けのソリューションを作り上げたいです」とMasterCard アジア太平洋地域 デジタルペイメント&ラボ イノベーション・マネジメント部門 バイス・プレジデント トビアス・ブース氏は意気込む。
同氏は、海外での事例も紹介。例えば、「MAYTAG」では、コインランドリーをスマートフォンで支払うサービスを提供。利用者は、スマートフォンから空いているコインランドリーを探して予約でき、MasterPassによる支払いに加え、完了の通知を受け取ることも可能だ。
また、Samsungとは、冷蔵庫から必要な食料や雑貨を購入できるサービスで連携。MasterCardの「グローサリー・バイ・マスターカード」では、日々の買い物をインテリジェントカードに追加するだけで、複数の店舗から商品を注文でき、チェックアウトで支払いが完了する。
さらに、スマートフォンだけではなく、スマートウォッチやウェアラブルデバイスを利用して、自動販売機で支払いが行えるサービスを提供。非接触ICカードリーダーがなくてもシームレスに支払いが可能であるという。
「MasterCard Start Path」では世界のスタートアップを選抜
日本からはMoneytreeを選出
なお、MasterCardでは、世界的企業とスタートアップ企業とを繋ぐプロジェクト「MasterCard Start Path(マスターカード・スタートパス)」を2014年から開始。第一期生の4社は、世界200以上の中から選抜されたスタートアップ企業からなり、日本からもMoneytreeが選ばれている。Moneytreeは、無料の資産管理アプリで、全国の銀行やクレジットカード、電子マネー、ポイントカードなどの取引データや入力データが自動取込・自動仕訳され、会計データとして取り込まれるサービスとなる。