2016年2月24日8:00
主要なモバイルペイメント、独自のウォレット双方を展開可能に
大日本印刷(DNP)では、スペイン・バルセロナで開催されている「Mobile World Congress 2016」に3年連続で出展している。DNPでは、NFC搭載スマートフォン等にモバイル決済サービスの機能をネットワーク経由で追加するクラウドサービス「DNPスマートデバイス向けクラウドペイメントサービス」を提供しているが、2016年は国内においてNFCモバイルペイメント、モバイルウォレットが本格的に動き出すと感じているようだ。
撮影した写真をカードに印刷し、NFCで展示内容を確認
パスポートの情報をトークン化してクラウドに保管
DNPでは、入り口近くの1ホールに3年連続でブースを構えた。まずは人目を惹くことを意識し、人工知能を搭載した小型ロボットがお出迎え。DNPの会社紹介を小型ロボットが行った。
会場では、人工知能ロボットと撮影ができ、写真はカードプリンタで撮影してプレゼントしたそうだ。撮影したデータは、NFCリーダライタからプリンタに転送して、来場者がブースを見学している間にカードが完成する。来場者が手にしたカードにはNFCタグが内蔵されており、スマホでかざすと当日の展示内容の詳細を確認できる。また、裏面にはDNPが開発しているホログラム「リップマンホログラム」が埋め込まれている。
DNPでは、2015年10月に「SIM型」、「eSE(embedded Secure Element)型」、「microSD型」に加え、クラウド上で機密データを管理する「HCE(Host Card Emulation)型」をはじめ、NFCのさまざまな方式に対応できる「DNPスマートデバイス向けクラウドペイメントサービス」を発表。2015年10月に米国・ラスベガスで行われた「Money20/20」、2月上旬に東京で開催された「NFCフォーラム東京総会」などでデモを実施している。DNPでは、デジタルセキュリティの世界的リーダーであるGemalto N.V.(ジェムアルト)と提携してサービスを提供しているが、「従来のSIMなどに加え、プロビジョニング(Provisioning)とトークナイゼーションがASP型サービスとして利用できるため、多くのイシュア様にご利用いただき、モバイルペイメントの普及に貢献していきたい」と大日本印刷 情報ソリューション事業部 デジタルイノベーション本部 モバイルサービス部 部長 土屋輝直氏は話す。
MWC 2016では、パスポートの情報をNFCスマートフォンで読み取りクラウド上に格納し、その情報をトークン化してスマートフォンに書き込み、呼び出すごとにサーバ側で認証し、本人情報をタブレットに表示きるデモや、続けてモバイル決済ができるデモを実施した。土屋氏は、「Apple Pay、Samsung Pay、Android Payなど、世界の主要なモバイルサービスに対応できるだけではなく、イシュアが独自のモバイルペイメントを展開したいといった要望にもお応えできます」と説明する。
スマホやカードもシンクライアント化
インフラからサービスレイヤーまでトータルに提供へ
また、MWC2016では、モバイルペイメントのシンクライアント型のゲートウェイをコンセプト展示。決済を読み取るリーダライタ、消費者が利用するスマートフォンやカード側にそれぞれ認証用の鍵が必要だが、それをすべてシンクライアント対応させ、決済のオーソリゼーションをゲートウェイ上で行うものだ。トークナイゼーション技術、シンクライアント技術、HCE技術を使って、正規の決済取引であることをゲートウェイ上で認証する仕組みとなる。
「シンクライアント型の決済端末は日本市場でも登場していますが、リーダライタだけではなく、スマホやカードもすべてサーバ側で完結させるコンセプトです。日本だけではなく、アジア等の海外も含めて、新たにモバイルペイメントを導入していただく際に敷居が低くなるようなサービスと考えています」(土屋氏)
DNPでは、2016年はイシュアの採用が加速する1年になるとみている。国内のNFCサービスでは、現状SIMで展開されているが、HCEへの要求も高まっているという。また、イシュアも従来のSIMの良さを理解しつつも、「さまざまな方式を検討されています」と土屋氏は話す。そのため、「今年は日本のモバイルマーケットは大きく動くとみていますが、インフラからサービスレイヤーまでトータルに提供していきたいです」と同氏は意気込みを見せた。
複数端末間のセキュアな直接通信を実現するソフトウェアVPN
アプリケーション堅牢化ソリューションを紹介
そのほか、中継サーバを介さずに複数端末間のセキュアな直接通信を実現するソフトウェアVPNを展示。従来、VPN技術を利用したインターネット回線が使われているが、独自の接続技術によって、より高いセキュリティを実現できるという。大日本印刷 ABセンター 第2本部 事業開発ビジネスユニット セキュリティ事業開発部 製品企画ユニット リーダー 蜂木茂男氏は、「監視カメラなどセキュリティの管理が求められるものを暗号化したり、店舗のPOSデータをセンターに送る場合などで、セキュアに直接の通信を実現できます。また、VPN機能のSDKをスマートフォンアプリに組み込めるため、スマートフォン同士で書類や画像を送る用途にはマッチしています」と特徴を述べる。Peer to Peerで通信ができる強みもあるため、今後はクライアントのSDKを活用することで、NFCとの連携も考えられるそうだ。
また、アプリケーション堅牢化ソリューションのCrackProof(クラックプルーフ)も展示。昨今、インターネットバンキングやオンラインゲームでは、アプリが改ざんされる事件などが起こっているが、堅牢化処理 を行うことで、改ざんを防止できるという。現在は、インターネットバンキングでアプリ等の改ざん防止に利用されている。