2017年5月23日15:30
デジタルセキュリティベンダーのジェムアルト(Gemalto)は、銀行などのイシュアに対し、セキュアなトランザクションを行うための仕組みを提供している。同社の中東でのモバイル認証ソリューション、NFCの展開などについて、担当者に話を聞いた。
スマホを活用したオンラインバンキングの口座開設を安全、シームレスに実施
ジェムアルトでは現在、スマートフォンやタブレットなどを使って、デジタル上で銀行とのやりとりを安全に、シームレスに行うソリューションの展開に力を入れている。たとえば、モバイル認証ソリューション「Ezio Mobile Suite」を提供しており、スマートフォンやタブレットによる生体認証を活用したオンライン認証サービスを世界中の金融機関に勧めている。認証では、指紋に加え、自撮りでまばたき(ブリンク)をすることで認証が行われる仕組みなども提供している。
UAE・ドバイで開催された「Seamless Middle East2017」では、ジェムアルトのオンラインバンキングの口座開設に対応したID認証ソリューションが「Digital transformation and innovation of the year」を受賞した。同ソリューションは、スマートフォンやタブレットを使ってオンラインバンキングの口座開設を行うサービスで、銀行はオンラインバンキングの顧客獲得を強化することが可能だ。
利用者は、IDカードやパスポートの画像を撮影して提出し、指紋などで本人確認を行うなどことにより、口座を開設できる。また、IDカードやパスポートの非接触機能を活用して本人認証を行うことが可能だ。銀行は、ジェムアルトのデータベースにアクセスし、ID確認を実施。ジェムアルトは、銀行が各国政府のサーバへセキュアにアクセスすることもサポートしている。これにより、利用者は、銀行のオンラインバンキングへのリアルタイム登録を容易に行うことができるという。
同ソリューションへの銀行の関心は高く、中東ではUAEで年末までにローンチされる見込みだ。日本では、大日本印刷と協力して、金融機関に営業を行っている。
中東ではHCEベースのモバイルウォレットが普及の兆し
中東では、コンタクトレスEMVカード、NFCモバイル決済を強化するイシュア(カード発行会社)が目立つという。すでにコンタクトレスEMVカードは、サウジアラビア、UAE、パキスタン、レバノンなどで発行が進んでいる。その流れを受け、モバイルを活用したコンタクトレスペイメントの引き合いが増加しているそうだ。UAEでは、Samsungのモバイル決済サービス「Samsung Pay」がスタート。ジェムアルトでは、Samsung Payと接続可能なプラットフォームを提供しており、プロジェクトが進行している。また、イシュアの独自ウォレットとして、HCE (Host Card Emulation)ベースのモバイル決済サービスの引き合いが寄せられているそうだ。
「UAE、サウジアラビア、カタール、バーレーン、レバノンでHCEのプロジェクトが進行しています。今年は限られたスタートになるかもしれませんが、特にサウジアラビアとUAEは加盟店に非接触決済端末が数多く設置されていますので、来年は普及するチャンスはあるとみています」(Gemalto Middle East & Africa Banking Solutions & Services Director デビッド・ノエル・ラーディン(David Noel Lardin)氏)
指紋センサーを搭載した非接触決済カードを開発
なお、「Seamless Middle East2017」のジェムアルトのブースでは、指紋センサーを搭載した非接触決済カードも展示された。利用者は、PIN入力の代わりに、指紋認証を行うと、支払いが可能になる。指紋センサーが搭載されているため、通常のカードと比べると倍以上のコストが必要となるが、本人確認を強化したい一部の金融機関からは引き合いがあるとみている。
すでに複数の企業が指紋センサー搭載のカードを発表しているが、ジェムアルトでは耐久性の高いカードとして銀行に提案しているそうだ。