2017年7月6日8:00
■リクルートライフスタイル
リクルートが提供するオンラインショッピングモール「ポンパレモール」は、商品数や取扱高の拡大を続けていますが、チャージバック補償制度の採用、不正注文検知サービスの導入によりクレジットカードの不正使用や詐欺などのあやしい注文者のふるまいを未然に検知するなど、加盟店がより安心して商品を販売してもらうための対策にも力を入れています。今回はその取り組みについて、紹介します。
出店者とカスタマーの両者に対し、安心・安全な売り場を目指す
リクルートライフスタイルでは、飲食、美容、通販など、日常消費に関わる商品・サービスを展開しています。たとえば、0円でカンタンに使える「Airレジ(エアレジ)」というiPadのPOSレジアプリを無料で提供しています。また、決済関連のサービスを提供する「Airペイ」など、さまざまな領域のサービスに力を入れています。
「ポンパレモール」は2013年3月15日にオープンしました。オープン時の店舗は450店舗でしたが、現在は3,500店舗まで増えており、業界4位の3,400万商品を販売しています。リクルートライフスタイルでは、「ホットペッパービューティー」や「ホットペッパーグルメ」、「じゃらん」などの生活密着型のサービスを提供しています。そのようなサービスでネット予約をするとポイントがたまるのですが、たまったポイントをより便利にお使いいただくために、ポンパレモールを提供させていただきました。
ネット通販における不正使用の状況をみると、日本クレジット協会の国内発行カードにおける被害額は2015年時点で120億あり、2016年に関しては140億を超え、ECの被害金額も増えている状況です。ECの利用は拡大していますが、2015年の71億4,000万から2016年の87億9,000万といったように、非対面での番号盗用の被害が増えています。こういった状況に対し、弊社ではECモールとして、出店者とカスタマーの間に立っていますが、安心・安全な売り場を提供することが求められます。クライアントは、不正使用が発生することによる経済的損失や機会損失も起こり得る状況です。また、カスタマーにとっても不正が起こりやすい売り場は、高額商品が販売されていないなどのマイナスポイントになりえます。そのため、出店者とカスタマーの両者に対し、安心・安全な環境を提供できるように努めていきたいです。
2014年、ポンパレモールでの不正はほとんどありませんでしたが、2014年末に発生し、2015年1月に増加しました。つまり、サイトでいったん不正使用が発生すると狙われて、被害が増える傾向にあります。不正使用が発生している店舗は、クレジット決済を停止し、銀行振り込みの手段を使って決済することになります。その場合、売り上げが激減するため、ポンパレモール事業にとってもマイナスになります。これを防ぐため、ポンパレモールとしてさらに安心・安全な売り場を提供する必要がありました。
チャージバック補償サービスで30万円までの損失を補償
注文データを自動審査する不正検知サービスを導入
他のモールでは、その対策として、チャージバックの補償制度を提供していました。これは、チャージバックが発生しても、加盟店は不正使用による請求額を負担しなくていい制度で、請求負担はモール、もしくは保険会社が肩代わりしてくれるものです。ただし、チャージバックの補償金額には上限があります。
チャージバックが発生する流れを説明します。犯罪者は会員のカード番号を不正入手し、その後、ECショップで商品を購入します。カード会社に与信を取ってから利用が確定すると、商品が送られます。会員に利用明細が届くのは最大2カ月先ですが、身に覚えのない請求があるとカード会社は売り上げを取り消します。そうなるとチャージバックが発生し、発送済みの商品も戻ってきません。
ポンパレモールではこれまで、チャージバックはほとんど発生していませんでしたが、店舗の安心のために、補償制度を作れないかと思いました。リクルートが運営する保険比較サイトで、生命保険の窓口相談・資料請求と損害保険の比較・保険料見積もりなどができる「保険チャンネル」を提供しています。これを利用して、ポンパレモールの全店舗が加入できるチャージバック保険を作れないかと考え、補償の上限金額などを調整できないかを相談し、サービスとして提供することができました。
チャージバック補償サービスは、ポンパレモール内の取り引きにおいて、カード保有者以外の不正取引によって、カード発行会社からチャージバックを受けたことによる損失が補償されるものです。補償上限額は1店舗当たり月30万円、費用は無料で、弊社と東京海上日動火災が引受会社になっています。安心・安全なサービスを提供するため、30万円までは無料で、4月以降は有料で上限額を上げたものも提供しています。今後も店舗の事情に合わせてサービスを追加していく予定です。
ただし、店舗が高額被害にあった場合は足りませんので、そのため、不正検知ロジックとして、かっこの「O-PLUX」を2015年6月から導入しています。これを使うことにより、注文データを自動審査し、独自のルールに沿って出荷OK・保留・NG結果を知らせることが可能です。
特長として、共有ネガティブ情報と外部データを活用できるのは有効だと感じました。O-PLUXの導入企業のネガティブ情報を企業間で使え、そのデータを見ることができ、APIの結果に反映できます。外部データとして、ウィークリーマンションや転送サービスからの注文を検知するといったことはありますが、警察が出しているデータもデータベース化していますので、不正使用に対して知見がない人にとっても有効だと考えて、導入に至りました。
※本記事は2017年3月22日に開催された「ペイメントカード・セキュリティフォーラム2017」の株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部プロダクトマネジメントユニット ポンパレモールプロデューサー 山下 隆太氏の講演をベースに加筆を加え、紹介しています。