2018年3月15日8:00
JCBとVisaの2ブランドで展開し、将来のメイン口座化につなげる
北陸銀行では、「ほくぎんJCBデビット」・「ほくぎんVisaデビット」を発行している。同行では、“現金より便利。クレジットより気楽。”というキャッチコピーでサービスを推進。ほくぎんデビット発行から約1年が経過したが、稼働率や単価の高いカードとして成果を感じているそうだ。
デビット発行で決済環境を整備
審査不要で幅広い層に提供へ
「ほくぎんデビット」はJCBとVisaの2ブランドで展開。カード券種は、スタンダードおよびキャラクター「ほくまるとりくひめ」の各2種類となり、キャッシュカードとの分離型を採用した。同カードは、全世界のJCBおよびVisa加盟店においてキャッシュレスで買い物ができ、利用代金が即時に利用者の預金口座から残高の範囲内で引き落とされる。また、利用金額に応じて、JCBが「Oki Dokiポイント」、Visaがキャッシュバックのサービスが受けられる。
北陸銀行がブランドデビットを発行した理由は大きく2つ。1つめは、日本でもキャッシュレス化を推進する中で、決済環境を整備する目的があった。ブランドデビットは銀行が発行でき、国内でも発行が進むにつれ、消費者の認知も高まっている。
もう1つは、基本的に審査不要で持つことができるカードであるため、「将来のメイン口座となる若年層の獲得につなげられます」と、北陸銀行 リテール推進部 主任 宮坂尚氏は話す。JCB、Visaブランドともに、23歳以下は年会費無料で利用できる。
まずは2017年2月に、ほくぎんJCBデビットを先行して発行し、5月にほくぎんVisaデビットをラインナップに追加した。
「2月に先行してJCBをスタートした理由は、口座開設がすごく伸びる時期だからです。銀行は約90%のお客様が非対面層と言われる中、口座開設のタイミングは接触を持つことができる絶好の機会です。2017年2月には、ほくぎんポイント倶楽部において、大学、大学院、短大、専門学校の学生はATM時間外手数料無料などの特典が付く、『学割サービス』を開始しました。ほくぎんデビットと学割サービスを複合セールスし、若年層を早期に囲い込むことを狙いとしています」(宮坂氏)
JCBブランドに関しては、入会や発券、利用情報の照会、銀行システムへの中継などの業務処理や、コールセンター業務、ポイントプログラムをJCBに委託できることが大きかった。JCBとは、「ほくぎん JCB デビット」の募集開始時に、新規の入会に加え、携帯電話料金のカード決済の指定や利用金額に応じたキャッシュバックキャンペーンを実施している。「携帯3キャリアの携帯電話支払いをセットでお申し込みされた方の稼働率は非常に高くなっています」と宮坂氏は成果を口にする。
Visaブランドの発行に向けては、銀行・金融機関系カード会社62社で組織する企業連合であるVJAのスキームを活用。これにより、グループの北陸カードが利用者のサポート、加盟店対応等を行い、北陸銀行では、申し込み業務に専念することが可能となっている。業務環境として、クレジットカードの発行が北陸カードであり、募集は北陸銀行を中心に整備してきたが、VJAのスキームではこの体制が生かせるため、人員やシステムを流用できるところが大きかった。
比率はJCBが約65%、Visa約35%
稼働率は50%近い数字に
銀行の窓口でもデビットに重点を置いて営業している。学生では、海外への留学者などからのニーズもある。また、学生だけではなく、幅広い層がカードに入会している。なお、入会者は先行して発行したJCBが約65%、Visaが約35%となるが、2017年夏以降はVisaの申し込みが増え、現在はJCBが55%、Visaが45%の申し込みとなっている。最近では、Visaを中心に、海外で使用される実績が増えつつある。
現状の会員獲得として、「当初の目標には1~2割少ない数字で進んでいますが、稼働率や単価は想定より高く、収益は高くなっています。将来のメイン口座として、住宅ローンや退職金、資産運用などで生涯に渡るお取引につなげていきたいです」と意気込みを見せる。実際、稼働率は50%近い数字となっており、「JCBからは先発行の稼働率は30%程と伺っていますので、かなり高い数字となっています」と宮坂氏は胸を張る。23歳を超える会員は2年目以降、年会費が必要となるが、離脱する人は少ないと想定している。
利用シーンとして、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ECモール、フリマアプリなどで日常的に利用されている。
キャッシュカードとの一体型も視野に
スマホ連携のサービスも検討へ
なお、ブランドデビットでは、国内特有のインフラにより、二重引き落としやオフライン加盟店への対応等の課題があるが、「JCBとの連携、VJAのスキームが実現したことにより、大きな問題にはなっていません」と宮坂氏は話す。
今後は、なるべく早く収益面での採算を立て、キャッシュカードとの一体型などを考えていきたいとしている。また、スマートフォンと連携したサービスも視野に入れる。「例えば、横浜銀行では『はまPay』を展開していますが、横浜銀行、北海道銀行、七十七銀行は、勘定系システムを共同利用しているため、情報連携していきたいですね」と語った。