2018年6月1日8:00
アプリにクレジット決済機能、販促機能を搭載、手数料も安価に提供へ
東急電鉄とNTTデータは、2018年4月から、スマートフォンを活用したクレジットカード決済ソリューション「.pay(ドットペイ)」の提供を開始した。カードレスでハウスクレジット決済が可能な同サービスの魅力について、両社に話を聞いた。
ハウスクレジットにより加盟店のコスト削減が可能に
安価な手数料でサービスを提供出来る仕組みを構築
「.pay」は、企業・店舗などの販促アプリに、カードレスのクレジット機能を搭載することで、スマートフォン1台で決済ができるソリューションだ。決済時にはスマートフォンに表示されるQRコードを利用する。同社によると、物理的カードを発行せずに約1分で即時発行でき、実店舗で利用できるハウスクレジットサービスは、日本にも世界にも例がないという。
Webの世界で「.(ドット)」は世界をつなぐが、例えば、いち早く同サービスを導入したぐるなびに「.pay」を付けると「ぐるなび.pay」となり、中立的に、色のないサービスとして、決済機能をつなぐ役割があるとした。「.pay」において、東急電鉄はサービス全般の運営を担当。また、NTTデータはカード決済ネットワーク提供、東急カードはハウスクレジット業務、東急エージェンシーはマーケティング業務を担う。
「.pay」のサービスでは、ハウスクレジット、カードレス、ハウス特典、共通クレジットサービス、ブランドレス、決済特典のシームレス化、といった特徴が挙げられる。
ハウスクレジットカードは、国際ブランドのネットワークを介さずに、企業独自の自社クレジット会員組織として展開可能だ。東急カードでも東急百貨店に対し、ハウスクレジット機能を提供しているが、汎用性がない代わりに、自社の会員により手厚いサービスを提供できる。東急電鉄 生活サービス事業部 メディア・マーケティング部 事業企画課 主事 松藤京介氏は、「国内のカード会社でハウスクレジットカードを発行できる企業は限られており、ノウハウも蓄積されていることがサービスを提供する上での強みとなります。また、国際ブランドなどが介在しないため、従来のクレジットカードよりも安価な手数料でサービスを提供できます」と口にする。
さらに、カードレスのため、物理カードの発行コストを抑制できる。現在展開されているモバイルバーコード・QR決済サービスの多くはクレジットカード等と紐付く形となり、加盟店はチャージ時の手数料が必要となるが、そのコストがなく、物理カードを発行しないため、企業の特典により多くのコストを投下できるとした。
店舗独自の販売促進やプロモーションが可能に
企業に加え、店舗独自のカードを発行できる
「.pay」サービスの構築に向けては、米国・ウォルマートの「ウォルマートペイ(WalMart Pay)」を参考にした。ウォルマートでも自社でしか使用できないハウスカードを発行しているが、新規会員の獲得や維持に活用されている。例えば、グローバルなモバイルOSプラットフォームやECモールなどでも決済サービスが提供されているが、「マーケティングデータを自社で活用しにくい課題がありました」と松藤氏は指摘する。「.pay」は、自社のハウスクレジットのため、導入企業は、クレジット会員の決済情報を自社データとして保有でき、顧客情報に基づいたマーケティングや、柔軟な特典設計が行える。
さらに、アプリを通じて柔軟な付与、クーポンの配信も可能で、「利益が出れば、よりお客様に還元することが可能です」と松藤氏は話す。顧客データは、自社がリアルタイムに分析、活用することで、売上アップに役立てられる。例えば、雨が降ってきて店舗の来店率が下がると予測した場合、来店を促す「雨の日クーポン」をテナント自らの判断で配信可能だ。
販促機能の提供では、NTTデータのポイント・顧客管理ソリューション「CAFIS Explore」、スマートフォン決済サービス「CAFIS Pitt」の機能をベースに構築した。加盟店は、初期コスト不要、決済手数料のみで同サービスを利用可能だ。
また、大手企業の場合、複数のテナントを抱えるが、それぞれアプリを作ることで、各テナントのそれぞれのカードを作ることも可能だ。
ポイントやクーポンと、クレジット決済を1アクションで完結
入会時は最短1分の審査で即日発行可能
店舗での決済時には、ポイントやクーポンを支払いとの1アクションで完結できる機能を搭載。利用者は、事前に利用するポイントを選べば、店員に利用ポイントを告げずに支払いが完了する。
利用者は、実店舗で「.pay」を通じて決済を行うと、通常のクレジットカードと同様、指定した銀行口座から料金が引き落とされる。共通クレジットカードの色もあるため、口座引き落としは月々の合算金額となる。
会員がスムーズな入会申し込みが行える仕組みも用意した。利用者は、アプリをダウンロードして、必要情報を記入後、最短1分の審査で即日発行可能だ。松藤氏は、「従来のクレジットカードの場合、例え同じカード会社が発行するカードであっても各カードの入会ごとに個人情報を登録する必要がありましたが、1対Nの管理をしており、いったん個人情報を入力していただければ、再度面倒な個人情報の入力をする必要はありません」と、入会登録をより簡易にする工夫について紹介した。つまり、一度個人情報の登録を行えば、その後は利用者が好きなカードを簡単にその場で作成できる。
店舗ではクレジット番号非表示の決済を実現
多岐にわたる業種・業態での利用を目指す
なお、セキュリティ面では、NTTデータの決済ネットワークを活用した、クレジット番号非表示の決済を実現している。NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部 営業統括部 ソリューション営業担当 課長代理 横木佳子氏は、「QRコードを利用した決済のセキュリティは、EMVCoの規格を意識しており、トークンキーを相互交換する形となり、偽造できないような仕組みを取り入れています。今後は、非接触決済や生体認証などを活用することも考えています」と説明する。
まずは、東急線沿線で先行展開し、そこで得た知見をオープン化し、日本全国に新しい決済手段のあり方を提供していく。東急グループ外では、ぐるなびが同サービスの導入を決定しているが、日本全国の商業施設・外食業界・コンビニ・スーパー・ポイント事業者など、さまざまな業種・業態に適用できるサービスであると捉えているそうだ。また、スマートフォンアプリの開発が必要な企業に対して、ひな型のアプリ提供も可能だ。松藤氏は最後に、「日本のペイメントを変え、キャッシュレス化に貢献したいです」と意気込みを見せた。