2010年10月13日8:40
ポイントサービスの最新動向(2)~野村総合研究所 安岡寛道氏
ICカードを利用したポイントも有望
成功のカギは継続的なポイントの循環
今後はICカードを活用したポイントも有望です。現状、地域通貨および地域ポイントは国内に600種類以上あると言われていますが、そのほとんどが活性化されていません。原因は利用者が「貯まらない」「使われない」ため、通貨そのものが流通しないからです。今後は地域同士や地域と企業が連合した取り組みを行い、さらに他の企業が後押しし、政府や自治体がバックアップする形が望ましい流れでしょう。
現在、成功している地域ポイントの多くは隣の商店街で共通に利用できるなど、代表の方が考えて、運営しています。そのようにポイントを継続的に循環させる工夫が必要です。政府発行のエコポイントは、キャンペーンとしては成功していますが、一度発行して終わりでは、ポイントの特性を上手く利用しておらず、突発的で継続性がありません。
最近では、イオンが商店街や自治体と連携し、電子マネー「WAON」を地域の商店街で利用できる取り組みを進めています。イオンが上手いのは券面のデザインを変更し、地域通貨的な形で展開していることです。今後は「nanaco」など、他の電子マネーの地域展開も広がっていくでしょう。
2007年は「電子マネー元年」とも言われましたが、その時期に電子マネーの利用でポイントが付与されるケースが多くなったことも普及の理由として挙げられます。消費者側も1円でも安く、1ポイントでも多く付与されることを意識するようになりました。
民間以外のポイント活用も活発化?
今後はプラットフォームの統一も必要
ポイントシステムの普及により、導入企業側の認識も変わってきました。かつては、ポイントの担当者は他社がやっているから導入するというケースが多かったのですが、最近は各企業でマーケティングに精通した優秀な方が付いています。弊社の調査によると、ポイントを貯めている意識も以前に比べて約4倍に高まっています。マーケティングツールとしてもインパクトのあるものになっていますので、導入企業側も分析してどう活用したらいいのかを考える時期に入っていると思います。実際、英国のテスコやネクターなどは、ポイントの分析だけを主とする部隊や子会社も存在しています。
ポイントの付与の仕方に関しても、5%アップしたら、1%の時より5倍利用が増えているわけではありません。1ポイントの付与を2倍にしても5倍にしても、それほどインパクト的には変わらないことは分析結果からもわかっています。例えば、家電量販店のポイントは5~20%と高いポイントを付与していますが、一度上げてしまったポイントの還元率はなかなか下げることが難しいため、本当に経営上のメリットがあるのかを振り返る時期にきていると思います。現状でも家電量販店では、高額のポイントを付与しているところと、還元率の低い企業とに二分化しています。
今後の動向としては、民間だけではなく、公共や政府、教育機関などのポイントが注目されるでしょう。例えば、電力やガスの利用でポイントが貯まり、そのポイントを税金に充当できるなど、いろいろな取り組みが考えられます。企業もCSRとしてポイントの失効分を社会貢献や地域振興に利用するなど、さまざまな展開が求められます。
すでに行政まで入ってきたポイントなので、突発的に予算を付けて付け焼刃のポイントプログラムを提供するのではなく、将来的にはプラットフォームを統一し、施策に応じたポイントを提供しやすくし、社会コストを下げていく工夫は必要だと思います。また、そのプラットフォームに大手共通ポイントに参画できなかった企業が参画して、ユーザーが自由に選べるようにするなどの新たな支援策も必要だと思います。