クラウドやAI活用促進でイノベーション加速へ ペイパルのテクノロジー戦略とは?

2019年5月22日8:00

電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービスを提供するPayPal(ペイパル、米国カリフォルニア州)のテクノロジー・エンジニアリング責任者、Guru Bhat(グル・バート)氏が来日し、同社のテクノロジー戦略について語った。クラウドやAIなどの活用を進め、「人々がストレスを感じず、意識しないうちに自然に決済できる」ような新たなサービスの提供を目指す考えを示した。(ライター:小島清利)

ペイパルのテクノロジー戦略を説明するGuru Bhat氏

フィンテックの先駆者、新金融サービスの拡大も視野

グル氏は、2015年にインドのチェンナイ・テクノロジーセンターのゼネラルマネジャー(GM)としてペイパルに入社し、現在はバンガロールとチェンナイのテクノロジーセンターの責任者を務める。

テクノロジー分野で19年以上の経験を持ち、次世代の決済ソリューションとサービスを構築。ペイパルのグローバル決済プラットフォームの構築やソフトウェアの開発を担う部門を率いている。

グル氏は「ペイパルは決済のグローバルプラットフォーマーとして、フィンテックの創成期から、フィンテックに取り組み、トークン化によるセキュリティー技術の先駆者でもある。バイヤー(買い手)とセラー(売り手)を仲介する決済処理や、ビッグデータを活用した中小企業融資などの金融サービスプロバイダーとして、今後も世界をリードしていくだろう」と述べた。

ペイパルの強みは、堅牢なセキュリティーを実現するシステムの信頼性の高さと、リスク管理能力の高さだ。グル氏は「ペイパルは、デジタル決済の先駆者で、セキュリティー技術も最先端である。急成長実現の背景には、お客様ファーストの考え方があり、今後も、お客様の情報については他社とは共有せず、セキュリティーを徹底させた世界で信頼されるブランドを目指している」と話した。

オープンソースの場で、イノベーション活用

安定した持続性のあるシステムの維持と今後の技術開発を加速させるために取り組んでいるのがクラウドコンピューティングへの移行だ。ペイパルは2002年、eBay(イーベイ)に買収されその子会社となっていたが、15年7月に独立。システムの多様性は、イーベイの子会社時代からさらに向上しているという。

スピーディーなシステム更新を実現するために、2017年ごろから段階的にクラウドコンピューティングへの移行作業に入っている。システムの更新は以前は年間8リリースだったが、現在は一日に65リリースと飛躍的に更新間隔が短くなっているという。

また、グル氏は、クラウド移行の狙いとして、「例えば、米国のサンクスギビングデー(感謝祭)には、家族や友人のパーティーが開かれ、1分間に3万4000件の取引処理が行われる。一時的なことではあるが、1年365日、ピークに合わせて容量を確保しておかなければならない」とも話した。

しかし、ペイパルが狙っているクラウド移行の最大の効果は、イノベーションの創出だ。ペイパルは現在、グローバルに事業拡大を続けているが、持続可能性を追求するには、提携先とのコラボレーションは欠かせない。オープンソースの場を活用し、テクノロジーの進化を積極的に取り入れる方針だ。

グル氏は「世界で様々なイノベーションが起こるのは、オープンソースの環境下であり、イノベーションをいち早く活用するには、クラウドへの移行が効果的。クラウドに移行するには、堅牢なセキュリティーレベルの維持と企業内カルチャーの改革が課題となるが、将来の発展に向けて実稼働の本番環境も移行していく」と意欲を示した。

ウーバー型決済を横展開、世界市場へ

さらに、グル氏はトークン化技術やAI(人工知能)、ディープラーニング(コンピューターによる機械学習)などのテクノロジーを積極的に活用した新サービスを日本をはじめとする世界市場でも展開したい考えを示した。

その一つが、トークン化技術を活用したモバイルやクレジットカードなどのNFC決済の実現だ。クレジットカードの番号をウェブサイトに入力することで、不正使用を懸念するECサイトユーザーが多いことに着目し、ペイパルが他社に先駆けて実現したのがe-mailアドレスを活用した決済だ。

グル氏は「現在では10億以上の財務金融情報をトークン化している。この技術を使えば、米国で実現しているNFC端末を使った決済が世界中で利用してもらえる。また、FacebookやInstagramなどのSNSのユーザ―体験ももっと楽しくなる」と話す。

さらに、グル氏は、AIや機械学習を活用したサービスとして、米国でのウーバーのタクシー決済をあげた。「アプリでタクシーを呼んで、乗車して、座って、降りる。この間に料金の支払いは終わっている。このように、意識せずに、自然な決済ができる仕組み他のサービスにも拡大していくことは当然の流れだし、マーケティングチームも考えていると思う」と話し、日本市場などのグローバル展開も始まっていくとの見通しを示した。

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