2019年5月27日8:00
中国銀聯股份有限公司の100%子会社として設立された銀聯国際は、銀聯(UnionPay)の国際部門を担っている。銀聯は、世界最大の発行枚数を誇る決済カードとなり、日本でも2005年の三井住友カードとの提携を皮切りに、積極的に加盟店開拓を行ってきた。今回は、プロダクト部門の責任者である盛近春(Bomee Sheng)氏に銀聯のカードやモバイル決済の展開状況、非接触やQRコード決済の展開、今後の取り組みについて話を聞いた。
「銀聯の統一アプリ」は1.5億人の利用者突破
QRコード決済の加盟店も増加
――まずは銀聯様の加盟店数、利用状況からお聞かせください。
盛:銀聯は174か国・地域に業務を展開しています。中国市場のアクワイアリングの状況として2770万の加盟店を有し、キャッシング可能なATMは116万台を設置しています。国際業務では、5,370万の加盟店があり、276万台のATMを設置しています。イシュイングでは、52の国と地域でカードを発行しており、累計発行枚数は75億枚を超えました。
――モバイル決済の状況についてはいかがでしょうか?
盛:銀聯のモバイル決済アプリは「UnionPay」といい、二種類のプロダクトを提供しています。1つはNFCの非接触、もう1つはQRコード決済です。中国全体の状況からみると、非接触、QRコードのみの端末の2種類があり、1600万台のPOS端末が銀聯の非接触決済をサポートしています。歴史から見ると中国は早い時期にIC対応を完了しました。ICと比べるとQRコード決済の歴史は古くないですが、2017年に市場に投入し、2年の短期間で加盟店数は1000万店に増加しました。
モバイル決済アプリ「UnionPay」は銀聯が自ら開発したものですが、1.5億人の利用者を突破しました。また、発行銀行、サードパーティなどが自身のアプリを開発するケースがありますが、それらのアプリも銀聯ネットワークを通過しますし、技術も銀聯がサポートしています。但し、これらの利用者数は把握することはできません。たとえば、中国大手の中国建設銀行、中国工商銀行などは自らのアプリを提供していますが、非接触決済、QRコード決済を使うときは、サービスベンダーとして銀聯は存在しています。QRコードに加え、Apple Pay、Google Pay、HUAWEI Payなども同じような状況で、それらの後ろのサービスを提供しているのは銀聯なので、銀聯の利用者としてカウントして良いかと思います。
――モバイルを活用したNFC決済の状況についてお聞かせください。
盛:中国の状況からみると、OEM Pay(Google,Apple,HUAWEI,Samsungなど主要なOEMプレイヤーのサービス)を利用している人が多いです。実際の利用されている手段は、携帯ベンダーの売上を見れば把握が可能です。現在の利用者の数は決して多くはありませんが、我々の視点から見ると、銀行のアプリの利用者の発展のスピードは速いです。現在、統一アプリは1.5億人の利用者がいますが、すべての銀行のアプリのユーザーを合わせると、この数字を超えるでしょう。
QRコード決済でもカード同様のアクワイアリング業務を実施
非接触やQRコード決済の交通機関での導入が進む
――QRコード決済には、QRをスマホに表示して機器にかざす方式であるCPM、QRを顧客の端末で読み取るMPMの2方式がございますが、その利用状況についてはいかがでしょうか?
盛:CPMとMPMの利用状況は、具体的な統計は行ったことはありませんが、業種や加盟店はそれぞれのニーズに応じて選択をしています。全体の状況から見ると、大手の加盟店はCPM、もしくは動的QRコードを使用することが多いですが、小規模加盟店ではMPMを選ばれるケースが多いです。売上からいうと非接触IC決済を使う人の方が確実に多いですが、実際の売り上げは中国銀聯では把握していません。
――中国では、特にMPMにおいて、QRコード決済による不正の課題が取り上げられています。今後は規制なども考えられますか?
盛:詳しい情報は監督官庁に確認していただきたいですが、流れからすると、そういったことはしなければいけないと考えています。我々の経験上、サードパーティなどは(MPMを取り扱う)メリットはあると思いますが、決済業務は経験もありませんし、利用者に対する調査の情報確認、加盟店への情報確認は足りない状態となっています。銀聯は最初から決済業界におりますので、どうやってカードを発行するか、加盟店を管理するのかについて、深い知識と経験を持っています。QRコードでも普通のカードと同様にアクワイアリング業務を展開しています。アクワイアラは厳しいセキュリティポリシーを適用していますので、不正の発生率は低いと思います。また、QRコードでも、決済スタンダードはEMVのICチップ取引と同様となります。
――非接触決済やQRコードの交通利用はどこまで進んでいらっしゃいますか?
盛:交通のシーンは、バスに加え、地下鉄、高速道路の料金、駐車場で支払うなど、幅が広いです。バスで見ると700以上の都市で銀聯での乗車が可能です。また、20数都市の地下鉄で銀聯の決済が利用可能です。各事業者の要望に応じて非接触決済やQRコードも展開していますが、たとえば、地下鉄は電波が届きにくく、スピードが重視されるため、非接触が多いです。逆にバスは地下鉄ほど利用者は多くなく、電波は届きやすい状態ですので、QRコードも多く、事業者には多くの選択肢を用意しています。
――ウェアラブルデバイスや生体認証など、新技術の研究については進められていますか?
盛:カードブランドとして、研究施設を設けています。また、銀行などは、生体認証のサービスを開発する際は銀聯と連携関係を作ってから着手しています。生体認証は銀聯の基準に従うことになりますので、イノベーション企業と手を組んで開発しています。
銀聯が今後注力する3つのポイントとは?
国際的にモバイル決済の浸透を図る
――最後に今後の展開について、可能な範囲でお聞かせください。
盛:全体の情報から見ると、フロント、ミドル、バックの3つのことをしっかり行っていきたいです。フロントでの一番の優先は、どうやってお客様により良いサービスを提供するかです。なるべく早めに国際市場に非接触決済やQRコード決済を提供することを実現させていきたいです。これまで、海外で220万の非接触決済の加盟店、20万以上のQRコード決済の加盟店を獲得しています。今後もモバイル決済をサポートできる加盟店を早期に増やすことが目標となっています。
2番目は現地化です。すでに52カ国にカードを発行していますので、そのような状況に応じてローカルでのモバイル決済を提供することも考えていきたいです。例えば、シンガポールは国の基準(SGQR)を策定しましたが、銀聯もEMVCoのメンバーになっていますので、各国、各政府に提供できるように努力します。
バックで重要なのは技術プラットフォーム、基準の開発です。昨年、銀聯では開発者向けのプラットフォームを発表しましたが、各基準、API(Application Programming Interface)と基準の規格を公開して、各ベンダーが簡単に導入できるようになっています。今後は、各国に応じてそういったプラットフォームを開発していくと思います。
銀聯は他のサードパーティと違い、4方モデルです。自身のために新しい技術を開発するのではなく、各メンバーをどうやって伝統的な銀行から、デジタルを活用したイノベーション企業にしていくか引き続き考えていきたいです。