2019年6月24日8:00
地域のキャッシュレス化、店舗の生産性向上に期待
総務省は、一般社団法人キャッシュレス推進協議会(以下、協議会)が策定した「決済用統一 QRコード・ バーコード(JPQR)」の普及に向けた事業を2019年8月1日から半年間、岩手県、長野県、和歌山県、福岡県の4県で開始する。6月22日には、和歌山県西牟婁郡白浜町の「SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE」でキックオフイベントを開催した。
統一QRコード・バーコードで店舗の負荷を軽減へ
和歌山県ではキャッシュレス化を宣言
今回の事業は、2019年3月29日に協議会において策定されたJPQRを使用し、コード決済における店舗側の負担軽減や利用者の利便性向上を検証・推進するものだ。また、経済産業省が推進する「キャッシュレス・消費者還元事業」とも連携し、JPQR の普及・利用促進を図る。キックオフイベントには、総務省、経済産業省、協議会、和歌山県、決済関連事業者、加盟店の担当者などが参加した。
まずは、総務省の総務大臣 石田真敏氏が登壇。日本は諸外国に比べ現金決済比率が高いが、キャッシュレス化の推進により現金管理のコスト削減が期待され、事業者にも大きなメリットがあるとした。また、交通機関でのMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の推進、超スマート社会のソサエティ5.0(Society 5.0)などの展開に向けても重要になるとした。国内ではQR/バーコード決済が話題となっているが、JPQRの活用により、1つのコードでさまざまな決済に対応できるため、店舗の負荷が減り、地域での導入につなげることが可能だ。
また、経済産業省 商務サービス・審議官 藤木俊光氏は、JPQRの普及に全力で取り組むとしたうえで、QR/バーコード決済に着目している理由を述べた。藤木氏は、「手数料も安いですし、コストも小さい。昨今のスマホの普及に合わせると店舗にも、事業者にも、利用者にも大きな意味があります」と述べた。また、今回の事業は、「大変意義深いことで、総務省とともに頑張っていきたいです」と語った。さらに、今後はゴールデンルートなどの主要観光地に加え、地方での人手不足、地域通貨による活性化などでも活用できるとした。
続いて登壇した和歌山県知事 仁坂吉伸氏は、和歌山県のキャッシュレスを高々に宣言。和歌山は観光資源に恵まれ、IT産業の誘致も行っている。また、高速道路の整備、トイレへのウォシュレットの設置などを推進。さらに、訪日外国人に向けて、表示機能や通訳電話の導入、Wi-Fi整備などを行っている。現状、キャッシュレス化の推進は全国で最下位レベルだというが、「これではいけないということ県中で動いています」と仁坂氏は話す。
続いて登壇した一般社団法人キャッシュレス推進協議会 会長 鵜浦博夫氏は、データは生活者、地方のためという方向感で整理していくことが重要としたうえで、「ソサエティ5.0が豊かさ暮らしやすさを進めるのであれば、地方がメイン社会になります。日本の中でのデジタル化のナンバー1にぜひなっていただきたい」と和歌山県の取り組みについて期待を述べた。
MPMは1つのコードで8事業者の決済に対応
紙による申し込みを受け付け、和歌山では紀陽銀行が契約事務代行を実施
QRコード決済には、QRをスマホに表示して機器にかざす方式であるCPM(利用者提示型)、QRを顧客の端末で読み取るMPM(店舗提示型)があるが、同事業では2方式を検証する。決済事業者・サービスとして、NTTドコモの「d払い」、Origamiの「Origami Pay」、KDDIの「au PAY」、福岡銀行の「YOKA!Pay」(福岡地域のみ)、PayPayの「PayPay」(MPMは不参加)、みずほ銀行の「J-Coin Pay」、メルペイの「メルペイ」、ゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」、LINE Payの「LINE Pay」となる。POS加盟店など、大手を中心に導入するCPMはもちろん、7~8割の小売店・飲食店はキャッシュレス未対応なため、その推進に向けMPMは有効であるとした。総務省 情報流通行政局 情報通信政策課 調査官 飯倉主税氏によると、「CPMとMPMをあわせて、人口100万規模(和歌山県)の県で2,000~3,000店舗の参加を目指します」とした。つまり、今回実験を行う4県で2万~3万規模の参加となる。
MPMの場合は、決済事業者による開拓に加え、県庁、商工団体、金融機関、NTT東日本およびNTT西日本も協力して加盟店開拓を行う。和歌山県内各地では、30~40回の説明会を実施。また、紙による申し込みを受け付けるのが特徴だ。さらに、地域の金融機関である紀陽銀行が契約事務代行を行う。紀陽銀行 取締役頭取 松岡靖之氏は、「和歌山は観光の分野においても決済インフラの充実は大きなテーマで、当行でも推進して、地域のお客様が業務の改善、経営の効率化を図れるように支援活動も進めていきたいです」とした。
なお、加盟店は、1つの申請書で、最大8事業者の加盟店登録が可能だ。また、事業実施期間中は、手数料が0~1.8%に優遇される。さらに、「キャッシュレス・消費者還元事業」にも登録登録要請の提出が行える。訪日外国人向けの決済手段であるAlipay、WeChat Payにもオプションで申し込むことが可能だが、JPQRとは規格が異なるため、別のQRを掲げる必要がある。
オークワ、松源、プラスの代表も統一コードに期待
PayPayはMPMの参加を見送る
キックオフイベントには、和歌山地域で展開する加盟店も参加した。スーパーマーケットのオークワでは、店舗のキャッシュレス化としてクレジットカード、電子マネー(サーバー管理型プリペイドカード)については35%超えた比率になったそうだ。オークワ 代表取締役社長兼COO 神吉康成氏は、「スマホの決済が一気に広がることで生産性向上に結び付きます。レジの改修に時間がかかりますので、10月中旬から下旬にまずは和歌山県下でスタートします」とした。
また、和歌山と大阪でスーパーマーケットを展開する松源では、2016年にポイントを一新。電子マネー機能を搭載したポイントカードの提示率は85%を超えている。松源 代表取締役社長 桑原太郎氏は、「現在のキャッシュレス比率は37~40%を推移しています。来年1月までに目先の目標としては、キャッシュレス比率を50%に持っていきたいです」と意気込みを語った。
3府県で産直市場「よってって」を26店舗展開するプラスは、MPM方式で参加予定だ。今年から一部店舗でQR決済も推進しているが、プラス 代表取締役社長 野田正史氏は、「(全国で2万店舗あるとされる)道の駅の利便性も高めていきたいです」とした。
なお、事業者のJPQRへの対応として、キャッシュレス推進協議会の理事を務めるOrigamiでは、積極的に推進していく構えだ。また、協議会関係者によると、LINE Payは、加盟店アライアンス 「MOBILE PAYMENT ALLIANCE」で連携するメルペイが今後アクワイアリングを行うMPMについてはJPQRを設置していくが、LINE Payがすでに設置しているPOPなどの置き換えは検討している最中だという。なお、CPMのみで参加するPayPayについては、アクワイアリングの展開をスピーディーに行うこと、連携するAlipayやPay tmとのコードの整合性などを含め、参加を見送ったと同関係者は話す。
※掲載当初オークワ 神吉様のお名前に誤りがございました。お詫びして訂正させていただきます。