2019年11月26日9:15
トライアルホールディングスと、フクシマガリレイ(旧:福島工業)は、「リテールAIショーケース」となる「MILABストア」(大阪市西淀川区)の完成披露発表会を 2019年11月22日に行った。同ストアでは、AIカメラ、デジタルサイネージ、電子棚札、デジタルカートを用いて、スマートストアを実際に体験可能だ。
フクシマガリレイの新本社に検証施設「MILABストア」をオープン
フクシマガリレイは、冷凍冷蔵庫やショーケース、その他の製造、販売、メンテナンスを行っている。現在、全国のトライアル店舗で同社ショーケースが使われている。フクシマガリレイでは、2018年8月にトライアルとショーケースのAI化について取り組みを開始。同10月には、アイランドシティ店、12月にQuick大野城店にスマートカメラ搭載のケースを納品している。2019年8月には、社内にリテールプロジェクトを立ち上げ、AIショーケースやデジタルサイネージなどのリテールAIの検討を開始。現在は、トライアルの福岡・佐賀プロジェクトにおいて、既存店舗のAIショーケース化、サイネージ搭載を田川店から設備を導入していく方向で進めている。
フクシマガリレイでは、11月18日に新本社が稼働開始。その中にオープンイノベーション拠点となる「MILAB」を開設し、実際の店舗を検証できる「MILABストア」をオープンした。
フクシマガリレイ 専務取締役 福島豪氏は、「顧客がドキドキ、ワクワク買い物を楽しむことができ、ストレスなくスムーズに決済できる環境を構築していきたい」とした。また、商品の買い上げ点数、客単価が上がり、生産性も向上し、店舗の利益が上がる改革・革命を行っていくそうだ。それに加え、デジタル化で商談など、「店舗の無理、無駄、ムラをスマートストアでなくしていきたい」と話す。そのためには、さまざまな企業とエコシステムを構築しながら、MILABでの検証・研究・勉強を深めていきたいとしている。
フクシマガリレイでは、トライアルはもちろん、他の小売チェーンにサービスインフラを外販し、リテールAIを日本に浸透させ、“リテールAIファシリティ企業”を目指す。
テクノロジーよりもオペレーションを重視した運用を目指すRetail AI
続いて、トライアルの独自のAI技術を開発するRetail AI 代表取締役社長 永田 洋幸氏が、同社の取り組みについて紹介した。Retail AIは、AIを推進するためにトライアルが設立した企業だ。近年、米国や中国でAIカメラを活用した無人店舗がオープンしているが、その多くが苦戦している状況だ。
永田氏は、その理由の1つとして「テクノロジーファースト」であり、オペレーションが優先されていないことを挙げた。もう1つは流通業のサービスを把握せずに導入し、店舗の無理、無駄、ムラを理解していないとした。Retail AIでは、店舗のオペレーションを最優先したサービスの提供を意識し、トライアル店舗でPoC(実地検証)を進め、他の流通業も含めたリアルストアのデジタル化を目指している。
「現在位置カメラ」、「人流検知カメラ」、「欠品検知用カメラ」を設置
「MILABストア」では、「現在位置カメラ」、「人流検知カメラ」、「欠品検知用カメラ」を設置。これにより、顧客導線の分析、顧客のマッピング、商品の欠品検知をリアルタイムで可視化することが可能となる。
たとえば、顧客導線を把握することで、店舗内で顧客の流れが密なところ、ほとんど通らない場所など、職人の勘に頼っていた部分をAIで解決できる。また、商品の欠品を検知するカメラでは、商品棚のエリアごとにどの程度の欠品があるかを認識し、仮に棚に空きがあったり、在庫が少なくなった際にアラートを出し、商品の補充に役立ていることが可能だ。
AIカメラによる認識は、商品そのものをカメラで認識するのではなく、棚の空白部分を検知している。また、AIカメラでは、必要なデータだけを静止画で処理し、クラウドに上げている。その際は、テキスト化するなどの工夫により、24時間監視するサーバの負荷を抑えることができ、流通業にとっては負担のないコストで運用が可能となっているそうだ。
なお、海外で展開されているAIカメラや重量センサーなどを利用した商品認識や決済の取り組みに関しては、ウォッチはしているが、段階があると捉えており、まずは店舗のオペレーションをより効率的に回すことを意識している。
商品のレコメンド機能、決済機能を装備したレジカート運用の成果は?
レジカートは、商品のレコメンド機能、決済機能を装備しており、従業員によるPOSレジでの商品のスキャン、会計を省いている。レジカートでは、セルフレジ機能を搭載。利用者はまず、プリペイドカードをカートにスキャンし、ID認識を行う。店舗では、手に取った商品をスキャンすることで、商品がカートに認識され、出口での自らの会計が可能となる。また、ショッピングカートは情報端末として、顧客の属性やスキャンした商品にあった類似の商品などをレコメンドする。永田氏は、「レジカートは、若年層から高齢の方までまんべんなく使っていただいています。買い物のレジ待ち時間でも60~90秒でチェックインからチェックアウトが終わるデータも出ています」と成果を口にした。
また、流通事業者はメーカーや卸などとデータを共有し、売り上げの改善に役立てる。例えば、 メーカーのサントリーでは、消費者の購買行動や小売りの売場等をAIで分析し、顧客の嗜好の多様化に迅速に対応できるよう努めるという。
Retail AIでは、トライアル店舗で検証を進めているが、今後はさまざまな流通業に同システムを利用してもらうことで、よりAIの精度が高まり、店舗の運営を効率化できるとしている。