2019年12月12日8:00
ストライプインターナショナルは、2019年12月9日、ストライプチャイナの成長戦略についての記者説明会を行った。ストライプチャイナでは、アリババとともに、ニューリテール戦略を推進している。また、テンセントが出資する京東(JD.com)の協力を得て、店舗に設置したカメラやセンサにより取得した顧客動向データをマーケティング戦略に生かしている。
売上がオンラインで2倍、オフラインで1.5倍にアップ
当日は、ストライプチャイナ 総経理の陶 源(Douglas Tao)氏が中国での取り組みを紹介した。ストライプでは、アリババグループのインターネットショッピングモールの「T-mall(天猫)」に出店している。昨年は、ストライプインターナショナルがアリババと協業し、「ニューリテール」実現に向けた共同研究を行うと発表している。
ストライプチャイナでは、アリババのクラウドサービスである「Alibaba Cloud(アリババクラウド)」を導入。Alibaba Cloud上でERPとCRMを構築し、ニューリテールシステムを完全統合している。保存場所と運用はAlibaba Cloudのシステムとなるため、会社内のサーバルームを削減できるメリットがある。リアルのデータとECのデータを共有させることで、購入履歴などを統合することが可能だ。
また、リアルおよびネットで購入したポイントシステムを双方で使うこともできる。ポイントサービスでもランク付けされており、上位会員は試着を他のランクよりも早く行うことができる。
接客の高度化には、チャットを活用。タオバオのユーザーであれば、納期や商品情報の確認を店舗の店長等と直接行うことが可能だ。こうした取り組みにより、2019年上期の売上は、「オンラインで2倍に、オフラインで1.5倍にアップしました」と陶氏は成果を語る。
「DingTalk」の導入で高速マーケティングを実現
オールインワンのモバイルワークソリューション「DingTalk」の導入により、社内の生産性アップに加え、社外の高速マーケティングの実現につながった。例えば、モバイルでの稟議決裁の申請、承認、可視化ができるため、稟議決裁の時間は95%短縮した。社員にはDingTalkを導入したモバイルを持たせることで、ディスカッションがよりスムーズになったという。顧客からの問い合わせに対して、DingTalkで社内共有することで、ディスカッションがより円滑となり、顧客要望の解決時間は92%短縮した。
こうした取り組みにより、Tmallの売上ランキングでは、2018年の1,480位から、2019年6月は442位へアップした(全500万店舗)。また、SNSコマースランキングの女性アパレルカテゴリでは、75万店舗のうち、286位を獲得している。
カメラやセンサで来店者等のデータを可視化
京東(JD.com)とは、店舗に設置したカメラやセンサにより、店舗に来店する顧客データを取得し、それに基づくマーケティング戦略を展開している。店舗では顔認証に登録した人を認識。来店客数に加え、購入単価、年齢、性別といったデータを識別可能だ。顧客データはダッシュボードでリアルタイムに確認。例えば、顧客が店舗で動く導線を生かし、そのヒートマップから陳列などの課題を認識できるという。また、店舗の前を通過した人、実際に来店した人等も把握可能だ。さらに、30分以内の再来店は1回と捉え、1日複数回来店した人等のデータも取得可能だ。
店舗では、登録している会員を把握できるため、VIPルームに案内するなど、VIP特別対応に活かすこともできる。今後は、BluetoothやRFID(ICタグ)を商品に設置することで、商品情報のリアルタイムの収集にも役立てることも検討している。各ショッピングセンターの顧客属性も把握できるため、出店先の選定にも役立てることが可能だ。
そのほか、オンラインの「WeChat store」では、会員システムをWeChatに統合。店舗のスタッフと顧客が気軽にコミュニケーションをとれるようにしている。
今後は、中国の政策である「大衆創業万衆創新」にのっとり、立ち上げを伴走するFC展開による出店の拡大も行うという。これは、立ち上げ時の内装や採用、商品仕入れなどはストライプチャイナが行い、黒字化後にオーナーに引き渡す仕組みとなる。まずは、2020年に50店舗の出店を見込んでいる。
なお、中国で展開しているニューリテール戦略の日本での実施については、日本では別のモデルでクラウド化が進んでいるなどの理由から、現状では未定となっている。