2022年11月7日20:43
野村総合研究所(NRI)は、家電量販店やキャッシュレス決済、携帯電話など、国内11業界の主要企業が1年間に発行するポイント・マイレージの発行量を金額換算した「年間最少発行額」について、2021年度までの実績推計および2026年度までの予測を行い、発表した。また、2019年度~2021年度は、行政のキャッシュレス促進施策などで発行されるポイントについても推計し、発行額に加算している。
NRIの調査によると、2021年度の民間部門における発行額は、2020年度の1兆399億円から約4%増加し、1兆834億円と推計された(図1)。2020年度から発行額が増加した一因としては、新型コロナウイルス感染症に起因する経済停滞の一部回復が挙げられる。具体的には、航空業界は新型コロナウイルス感染症によって大きな打撃を受けた業界の1つであり、2020年度は前年度から発行額が611億円減少したが、2021年度は2020年度から66億円増加している(表1)。また、新型コロナウイルス感染症に端を発する、「新しい生活様式」への対応や巣ごもり需要の影響を受けているキャッシュレス決済およびECプラットフォーマーの存在も発行額の増加に大きく貢献しており、随所に新型コロナウイルス感染症の影響が表れていると考えられるそうだ。
2022年度以降の予測値として、民間発行額は増加を続け、2026年度には1兆2,000億円を突破する見込みだという。また、2020年度と比べて発行額が拡大している航空業界においても、新型コロナウイルス感染症流行以前の水準と比較すると、その発行額は依然として低い状態にあり、今後のさらなる回復が見込まれるとした。
行政が主体となっているキャンペーン・事業によるポイント発行額は、2020年度の3,668億円から約6割減少し、1,579億円と推計した。発行額減少の主要な要因としては、2019年6月に開始され、累計で約5,000億円の発行額に寄与した「キャッシュレス・ポイント還元事業」の2020年6月での終了を挙げた。
2021年度は行政主体のキャンペーン・事業として、主に「マイナポイント事業」と「グリーン住宅ポイント制度」が実施されたが、「マイナポイント事業」は2022年度においても継続的に実施されている。特に、2022年6月30日からは、「マイナポイント第2弾」が開始され、発行額の上限が、従来の一人当たり5,000円分 から4倍の2万円分 に大きく増加している。2021年度以前に5,000円分のマイナポイントを獲得済みの人でも、差額の1万5,000円分のマイナポイントは追加で獲得できるため、2022年度は「マイナンバー事業」による発行額の大幅な増加が予想されるとした。
発行額の推計対象であるポイントは、複数の事業者間で使える「共通ポイント」、グループ企業でのみ使える「グループ内共通ポイント」、当該事業者でのみ使える「ハウスポイント」の3つに区分される。その中の共通ポイントの動向に目を向けると、PayPayが「PayPayポイント」の外部企業への販売2022年10月以降開始し、新たに共通ポイントの一員になると発表されている。また、CCCグループ(Tポイント)は2022年10月に、三井住友フィナンシャルグループ(Vポイント)との資本業務提携に関する基本合意書の締結を発表している。すでに各共通ポイント事業者が精力的に加盟店開拓を行ってきたため、今回の動向によって新規にポイントを導入する企業は限定的である可能性が高いものの、決済単価が比較的小さく、PayPayが提供するコード決済と相性の良い総合スーパー・コンビニエンスストア業界や、三井住友フィナンシャルグループが強みを持つ金融分野を中心とした発行額拡大が予想されるとした。
この記事の著者
ペイメントナビ編集部
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