2023年3月17日8:00
学園内の自販機・売店に顔認証決済サービスを導入
愛知県蒲郡市にある全寮制の中高一貫校、海陽学園では、学園内の自販機および売店に顔認証による決済サービスを導入した。以前から独自の決済用FeliCaカードを用いて、学園内のキャッシュレス決済環境を整えていたが、顔認証の導入によって生徒はカードレス、つまり手ぶらで学園内で買い物をすることが可能になった。また、チャージ式のプリペイドカードを活用することで、使いすぎの心配もなく、決済情報は保護者にもリアルタイムで通知されるため、生徒の生活の様子が伝わって保護者の安心感も増す。以前の独自システムによるキャッシュレス決済の運用と比較して、学園側が負担するコストも大幅に削減できた。
更新のタイミングで顔認証導入
Kyashのプリペイドカードを活用
海陽学園は日本の次世代リーダーの育成を目指し、トヨタ自動車、JR東海、中部電力の3社を中心に、80社以上の企業の賛同を得て、2006年に愛知県蒲郡市に設立された、全寮制の中高一貫校だ。およそ500人の全生徒が、構内のハウス(寮)で生活をともにしている。
保護者の現金送金の煩雑さや、不要なトラブルを回避するため、同学園では開校当初から独自のFeliCaカードを作成・配布することによって、学園内の決済のキャッシュレス化を推進してきた。このキャッシュレス決済システムが老朽化し、更新のタイミングを迎えるにあたり、同学園では顔認証決済サービスの導入を決めた。
2021年に、顔認証機能を備えたダイドードリンコ(以下、DyDo)の自動販売機を設置。まず1台でテスト運用を始め、問題なく稼働することが確認できたため、現在では学園内にある十数台の自動販売機をすべて、DyDoの顔認証自動販売機に置き換えた。NECの顔認証技術を用い、顔認証に加えて利用者が事前に設定したパスコードを入力することによって決済が完了する仕組み。決済情報はリアルタイムで保護者にも通知される。
2022年秋には、学園内の売店にも、NECの顔認証技術を活用した決済サービスを導入した。NECは2022年7月より顔認証決済のサービス型での提供を開始しており、本件が導入第一号となった。
あらかじめ顔写真、および、決済情報をシステムに登録しておけば、売店レジのタブレットで顔認証とパスコードの入力を行うことで決済が完了(学園ではKyashのチャージ式プリペイドカードを採用)。プリペイドカード残高の範囲内での利用に限られるため、使いすぎを防止でき、自動販売機同様、決済情報はリアルタイムで保護者にも通知されるので、保護者にとっても安心の決済システムとなっている。
プリペイドカードへのチャージ方法は、銀行口座から直接、クレジットカードから、セブン銀行のATMからなど、複数の中から選べる。チャージ額の上限は、Kyashが定める範囲内で、それぞれの保護者が自由に設定することができる。毎月決まった日にいくら、もしくは、残高が一定金額を下回ったタイミングでいくらチャージするといった自動チャージの設定も可能である。
キャッシュレス決済環境を進化させつつ
コストを大幅に削減
Kyashのプリペイドカード導入以前、海陽学園では、トヨタファイナンスの「TS CUBIC CARD」をベースに、独自にスクラッチで開発したFeliCaカードを学園内での購買に利用していた。システムおよびカードの管理・運用を学園が一手に担っていたためコスト負担が大きく、また、生徒がFeliCaカードを紛失・破損するケースが絶えないという課題もあった。
顔認証決済サービスでは、旧来のシステムは使用しない。自動販売機ではDyDoが顔認証から決済までのすべてを履行。売店では学園がNECの顔認証決済サービスの加盟店となる形となり、決済金額に応じた手数料が発生するが、トータルで見て、決済にかかわるコストは、従来の約10分の1に圧縮できたという。
また、生徒や教職員は、カードを携帯せずに手ぶらで買い物ができるので、カードの紛失・破損というリスクもなくなる。
これまでの運用の成果として、顔認証技術の精度は非常に高く、マスクを着用していても、また、双子であっても誤認証されたケースはないという。海陽学園 マネージャー 川村裕和氏も、「これまで大きなトラブルはありません」と技術の信頼性に太鼓判を押す。現在は顔認証とパスコードの二要素認証を採用しているが、近い将来には「顔と虹彩など生体認証の組み合わせで、より快適な決済環境を提供できるようになると考えています」(川村氏)と期待を寄せている。