2024年4月9日8:00
北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)の本拠地、エスコンフィールドHOKKAIDO(以下、エスコンフィールド)がある北海道北広島市では、同球団と連携しながらふるさと納税の取り組みを強化している。2023年3月、試合観戦などを目的に同市を訪れる人がエスコンフィールド内の店舗などで使える電子クーポンを返礼品とする「旅先納税 きたきた」を開始。同年11月にはファイターズの試合観戦チケットに使える電子クーポンや、応援グッズなど、ファイターズ関連の返礼品のみをラインナップした特設サイト「ファイターズふるさと納税」を開設した。同球団のファンを中心に好反応を得ており、2023年度の同市へのふるさと納税の寄附額は、はじめて3億円を超える見通しだ。今後「旅先納税」の認知度が高まれば、さらなる寄附額の増大につながると期待されている。
寄附者に市内で使えるクーポンを提供
返礼品が北広島市を訪れるきっかけに
北海道北広島市では、2017年からふるさと納税の本格的な取り組みを開始。市内に製造工場がある北海道銘菓「白い恋人」や、ジンギスカン、地元で収穫される野菜の詰め合わせの定期便をはじめ数多くの返礼品を揃え、さとふる、楽天市場、ふるさとチョイス、ふるなびなど10以上のプラットフォームを活用して寄附を募っている。多くのプラットフォームと連携しているのは、チャネルが多いほど、日常的にECサイトでショッピングをしている人にアプローチできる機会が増え、幅広いPRにつながると考えているためだ。
同市には2023年3月、ファイターズの本拠地、エスコンフィールドが開業。これを機に同市に注目が集まり、多くの人が訪れるようになることを見込んで、同市ではその約1年前から、ファイターズスポーツ&エンターテイメント、JTBとともに、ギフティが提供する「旅先納税」の仕組みを使った「きたきた」導入の準備を進め、エスコンフィールドの開業とほぼ同時にサービスを開始した。
「きたきた」ではふるさと納税の返礼品として、同市内の加盟店で使える電子クーポンを提供。例えば6,000円を寄附した人は1,500円分、3万円で9,000円分、10万円で3万円分のクーポンを受け取れる。
スマホを使い専用サイトからクレジットカードで納税を済ませると、1年間有効の電子クーポンが即時に発行。利用時には加盟店店頭に掲示されたQRコードをスマホで読み取り、金額を入力して決済を行う。現在加盟店は、北海道ボールパークFビレッジ内の店舗・施設をはじめ、ゴルフ場、飲食店、宿泊・温浴施設など約50カ所だ。
ただ、「きたきた」はまだ認知度が低く、納税額は1,000万円にも届いていないのが現状だ。エスコンフィールドの累計来場者数は300万人を超えている。北広島市 企画財政部 企画課 課長 下野直章氏は、「特に交流戦のときなどは、全国各地から大勢の方がお見えになります。そういった方々に『きたきた』を知っていただき、ぜひお得に使っていただきたいと思っています」と話す。
「ファイターズふるさと納税」が好発進
1カ月間で1,000万円超の寄付を集める
2023年11月21日、同市では、ファイターズの試合観戦チケットに使える電子クーポンや応援グッズなどファイターズ関連の返礼品のみをラインナップした特設サイト「ファイターズふるさと納税」を立ち上げた。同球団のファンを中心に開設直後から大きな反響があり、12月末までのわずか1カ月強で、1,000万円超の寄附金が集まった。
ランキング上位の返礼品の1つが、試合観戦チケット購入時に使える電子クーポン。例えば3万円の寄附でもらえる、1,500円分のクーポン5セットなどに人気がある。「これは北広島市の関係人口、交流人口の増加につながる、従来とは異なるタイプの返礼品です」(同課 主事 志村龍之介氏)。というのも、寄附者の多くが、試合を観戦しに同市を訪れることになるからだ。また、推しの選手の応援タオルやレプリカユニフォーム狙いの寄附者も多いという。
「ファイターズふるさと納税」の好調を2年目以降もキープしていくために、同市ではシーズン開始後、試合会場内にブースを設けて、ファイターズファンに直接対面でサイトへのアクセスや寄附を呼び掛ける計画だ。「きたきた」についても会場内のハイビジョンディスプレイで案内の動画を流すなどして、サービスの認知度向上に努める意向。
同市へのふるさと納税の1人当たりの寄附額の平均は2万~3万円。寄附総額は2023年度にはじめて3億円を超える見込みで、同市にとって大切な収益源となっている。
近年、国はいくつかの観点からふるさと納税の見直しを進めているため、同市では施策を推進しつつも、国の動きを注視している。