2025年9月26日8:00
和田 文明
プロフィール キャッシュレス、電子マネー関連のジャーナリスト/ライター、主に欧米、アジアのセキュリティを含むキャッシュレス情報、カスタマーロイヤルティプログラム情報を取材 |
欧米の電子財布(デジタルウォレット/モバイルウォレット)の最終回(第5回目)は、電子財布市場における「オープンバンキング(Open Banking)と電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)」について紹介してみたい。オープンバンキング(Open Banking)は、顧客の同意に基づき、銀行が保有する金融データ(口座情報、取引履歴など)をAPI(Application Programming Interface)を通じて安全にTPP(Third-Party Provider、第三者サービスプロバイダー)と共有することを可能にする金融サービスモデルで、欧州ではPSD2(Payment Services Directive 2、第三者サービスプロバイダー)などのレギュレーションによって推進されており、アメリカでも同様の動きが見られる。こうしたオープンバンキングの進展は、電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)の機能と提供形態に大きな影響を与えている。欧米における電子財布布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)とオープンバンキングの関係は、金融サービス業界のデジタル変革を象徴する重要なテーマであり、相互に深い影響を与えながらオープンバンキング(Open Banking)と電子財布は(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)共に進化している。
<Index>
(1)デバイスベンダー系電子財布
(2)ペイメントサービスプロバイダー系電子財布
(3)銀行系電子財布
(4)電子財布とエンベディドファイナンス
(5)オープンバンキングと電子財布
オープンバンキング(Open Banking)とは、顧客の同意に基づき、銀行が保有する顧客の金融データをAPI(Application Programming Interface)を通じてTPP(Third-Party Provider、第三者サービスプロバイダー)と安全に共有することを可能にする枠組を指し、金融サービスの透明性、競争、イノベーションを促進することを目的としている。こうしたオープンバンキング(Open Banking)には、標準化されたAPI(Application Programming Interface)を提供し、TPP(Third-Party Provider、第三者サービスプロバイダー)が顧客の口座情報にアクセスしたり、支払いを開始したりできるようにするAPI(Application Programming Interface)連携、データ共有や支払い指示は、常に顧客の明確な同意に基づいて行われる。こうしたオープンバンキング(Open Banking)は、顧客の同意、データ共有や支払い指示は、常に顧客の明確な同意に基づいて行われ、強固な認証(SCA: Strong Customer Authentication)などのセキュリティ要件が課され、規制当局がオープンバンキングのTPP(Third-Party Provider、第三者サービスプロバイダー)の登録・監督を行っている。 |
オープンバンキングが電子財布に与える影響
欧米のオープンバンキング(Open Banking)は、銀行やPSP(ペイメントサービスプロバイダー)、デバイスベンダーのいずれであっても電子財布プロバイダーが、顧客の同意を得て、複数の銀行口座からの金融データにアクセスすることを可能にする。これにより、電子財布アプリは、単一のインターフェースでユーザーのすべての金融資産(異なる銀行の口座残高や取引履歴)を一元的に表示できるようになり、PFM (Personal Finance Management、パーソナルファイナンスマネージメント)機能や予算管理ツールとしての価値を高めることができる。
例えば、電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)のユーザーは、異なる銀行のデビットカードやクレジットカードを登録するだけでなく、オープンバンキング(Open Banking)のAPI(Application Programming Interface)を通じて銀行口座そのものを直接紐付け、口座残高をリアルタイムで確認したり、口座から直接支払いを行ったりすることが可能になる。
オープンバンキング(Open Banking)は、クレジットカードネットワークを介さずに、銀行口座間で直接資金を移動させるA2A(Account to Account、口座間)決済の基盤を提供することができる。電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)は、このA2A(Account to Account、口座間)決済をユーザーにとって使いやすい形で提供するフロントエンドとしての役割を担っている。これにより、マーチャント(加盟店)はより低い手数料で決済を受け入れることができるようになり、消費者もより安価な手数料または無料でのペイメントオプションを利用できるようになる。特に高額な取引や定期的な支払いにおいて、オープンバンキングのA2A決済(A2A Payments:、Account-to-Account Payments)はコスト効率の高い選択肢となる。
オープンバンキング(Open Banking)によって金融データがオープンになることで、電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)は単なる決済ツールを超えた、より革新的な金融サービスを提供できるようになる。例えば、電子財布の利用履歴や銀行口座のデータに基づいて、エンベデッドファイナンスの一環としてパーソナライズされた融資提案、保険商品の提案、あるいはより効率的な貯蓄計画の立案などが可能になる。
PSP(Payment Service Provider)やデバイスベンダーが提供する電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)も、銀行のAPI (Application Programming Interface)を通じてより深くバンキングサービスと連携できるようになり、例えば、リアルタイムの信用スコア評価に基づく即時融資や、特定のニーズに合わせた金融商品のレコメンデーションなどが実現されるようになる。
オープンバンキング(Open Banking)は、API(Application Programming Interface)を介した安全なデータ共有を前提としており、強力な顧客認証(SCA: Strong Customer Authentication)や同意管理の仕組みが義務付けられている。電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)は、こうしたセキュリティ要件に準拠し、顧客が安心して金融データを共有・利用できる環境を提供することができる。なお、顧客は、自身のデータがどのように利用されるかを明確に理解し、同意を与えることで、透明性の高い形で金融サービスを利用することができる。 |
こうしたオープンバンキング(Open Banking)は、既存の銀行によるデータ独占を緩和し、FinTech企業や他の電子財布プロバイダーが新たな金融サービスを開発・提供しやすい環境を整え、市場における競争が促進され、結果としてより多様で質の高い電子財布サービスが顧客へ提供され、顧客体験(CX)が向上する。消費者は、自分のデータにアクセスし、どのサービスプロバイダーにデータ共有を許可するかを自ら選択できるようになるため、金融サービスの選択肢が広がり、より自分に合ったサービスを消費者が自ら見つけやすくなる。
オープンバンキング(Open Banking)は、電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)を決済機能だけでなく、より包括的な金融管理ツールへと進化させるための重要な触媒とみなされている。銀行、PSP(ペイメントサービスプロバイダー)、デバイスベンダーの電子財布は、オープンバンキングによって提供されるデータと機能にアクセスすることで、それぞれの強みを活かしながら、顧客にとってよりシームレスでパーソナライズされた金融体験を提供できるよう、進化を続けている。
電子財布とオープンバンキングの関係性
オープンバンキング(Open Banking)は、電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)の機能性、ユーザーエクスペリエンス(UX)、そしてビジネスモデルに革命的な変化をもたらしている。ここでは、こうしたオープンバンキング(Open Banking)の「機能の拡張と利便性の向上」「新たなビジネスモデルの創出」「セキュリティと信頼」について触れておきたい。
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